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綱紀委員会①

2023-06-01

1 綱紀委員会

 請求者から懲戒の請求があった場合、または会請求があった場合、最初に事案の審査が行われるのは綱紀委員会です。
 綱紀委員会の設置根拠は、弁護士法第70条にあり、懲戒委員会はそれより前の第65条にありますが、先に事案が係属するのは綱紀委員会です。また、綱紀、懲戒委員会は、その設置根拠が弁護士法上に存在することから、単位会によっては「弁護士法上委員会」などとして、他の委員会(刑事弁護委員会等)とは別の区分に分類されているところもあるかと思われます。
 綱紀委員会が設置されている理由は、濫用的な懲戒請求に対応し、明らかな懲戒不相当事案を選別するためと考えられています。すべての事件が懲戒委員会に係属してしまうと、重要な事件の審理を十分行うことができなくなります。このような事態を防ぐため、綱紀委員会が事件の選別を行っています。

2 綱紀保持に関する事項

 弁護士法第70条2項は、綱紀委員会の職務として、懲戒事件の士調査の他に「弁護士会所属の弁護士及び弁護士法人の綱紀保持に関する事項をつかさどる」としています。
 これは、具体的な懲戒請求事件の処理ではなく、一般的な弁護士倫理規範の定立、研修などが想定さえれています。
 あくまでも「一般論」ということを前提とする権限ですので、綱紀委員会が、懲戒不相当事案について対象弁護士に注意をするというようなことは想定されていません。

3 綱紀委員会の構成委員

 綱紀委員会は4名以上(弁護士法70条の2)で、弁護士、裁判官、検察官、学識経験者(大学教員が多いです)により構成されます(弁護士法70条の3第1項)。
 また、綱紀委員会の委員は、綱紀委員会んお職務については、「法令により公務に従事する職員とみなす」(同第4項)というみなし公務員規定が存在します。
 そのため、綱紀委員会の委員の職務執行に対して暴行、脅迫を以て妨害した場合には公務執行妨害となりますし、賄賂を供与した場合には贈賄罪が適用されることになります。
 この点までは、全ての単位会に共通するところです。
 ただ、規模の大きな単位会の場合、出される懲戒請求の数も膨大であり、請求があるごとに全綱紀委員で審査をするということは現実的ではありません。
 そこで弁護士法においては、綱紀委員会の中に部会を設置することができることになっています(弁護士法第70条の6第1項)。より少人数の部会委員によって、事件を効率的に調査できるようになっています。また、部会で出した結論を、そのまま委員会の議決にすることも可能です(同第5項)。ただし、それでは綱紀委員会の公正性に疑問がでるかのうせいがありますので、部会には弁護士、裁判官、検察官、学識経験者を1名以上入れるようになっており、弁護士委員だけで結論が出せないようになっています。
 さらに、ここからは単位会毎に取り扱いが異なると思われますが、実際には部会の中から2名ほどの委員が「主査・副査」という形で聞き取り等の調査を行い、その内容を部会で議論するというような形式が取られている単位会も多いのではないかと思われます。

業務停止中の行為が問題となった事例

2023-05-25

1 事案の概要

 元々の事案は、信用組合が個人に対し、約束手形に基づいて金銭の請求をした事件でした。
 第1審は原告(信用組合)の勝訴、控訴審は第1審被告(個人)の勝訴でした。
 この控訴審までは、弁護士の資格について特に争われた形跡はありません(手形の振り出しなどが問題となっていました)。
 この控訴審判決について、第1審原告(信用組合)が上告しました。
 ところで、この事件の第1審判決期日は昭和38年11月7日、控訴審判決期日は昭和40年2月16日で、その間に控訴審の訴訟手続きが行われています。
 第1審被告の控訴審での代理人弁護士は、昭和39年3月18日に弁護士会で業務停止3月の懲戒処分を受けているところでしたが、昭和39年4月15日、控訴審における口頭弁論期日が開かれていました。
 この口頭弁論期日での訴訟行為につき、上告人(信用組合)代理人弁護士が、無効な弁論であると主張して絶対的上告理由がある旨を主張しました。
(最判昭和42年9月27日の事例)

2 判旨

「裁判所が右の事実〔注:業務停止の事実〕を知らず、訴訟代理人としての資格に欠けるところがないと誤認したために、右弁護士を訴訟手続から排除することなく、その違法な訴訟行為を看過した場合において、当該訴訟行為の効力が右の瑕疵によつてどのような影響を受けるかは自ら別個の問題であつて、当裁判所は、右の瑕疵は、当該訴訟行為を直ちに無効ならしめるものではないと解する。いうまでもなく、業務停止の懲戒を受けた弁護士が、その処分を無視し、訴訟代理人として、あえて法廷活動をするがごときは、弁護士倫理にもとり、弁護士会の秩序をみだるものではあるが、これについては、所属弁護士会または日弁連による自主・自律的な適切な処置がとられるべきであり、これを理由として、その訴訟行為の効力を否定し、これを無効とすべきではない。けだし、弁護士に対する業務停止という懲戒処分は、弁護士としての身分または資格そのものまで剥奪するものではなく、したがつて、その訴訟行為を、直ちに非弁護士の訴訟行為たらしめるわけではないのみならず、このような場合には、訴訟関係者の利害についてはもちろん、さらに進んで、広く訴訟経済・裁判の安定という公共的な見地からの配慮を欠くことができないからである。」「本件を検討するに、一件記録によれば、弁護士Aが原審において被上告人の訴訟代理人として引き続き訴訟行為をしたこと、しかも裁判所が同人の訴訟関与を禁止した事実のないことがうかがわれるのであつて、同人に対し、所論のような懲戒がされ、しかもその処分が前示のようにすでにその効力を生じていたとしても、以上述べた理由により、同人が原審でした訴訟行為が無効となるものではない」

3 解説

 本判決は、訴訟経済等の理由から、業務停止中の弁護士の訴訟行為を有効と取り扱いました。
 なお、本判決中でも指摘されていますが、訴訟行為が有効であるからといって、その行為に何らの問題もないというわけではなく、この行為自体も再び懲戒の事由となります。
 ですので、業務停止を受けた弁護士としては、速やかに辞任等の措置をとる必要があります。

利益相反②

2023-05-18

1 利益相反

 弁護士法第25条は、弁護士が職務を行い得ない事件を定めています。
 同様に、弁護士職務基本規程第27条、28条も職務を行い得ない事件を定めています。
前回に引き続き、この職務を行い得ない事件を解説していきます。

2 弁護士法第25条第2号

 弁護士法第25条第2号は、職務を行い得ない事件として「相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの」を定めています。

⑴協議を受けた事件

 「協議を受けた事件」の意味は、1号と同じ文言ですが、協議を受けるというのは、法律相談などが典型例です。場所等は問われませんが、単なる雑談などは含まれないと考えられます。

⑵1号との違い

 1号は「依頼を受けた」事件、「賛助した」事件を対象としています。
 1号と本号の違いは、依頼を受けた後の問題を規律するのが1号、依頼を受ける前の信頼関係の状態を問題とするのが本号という形となります。

⑶「協議の方法及び程度が信頼関係に基づく」

 上記の通り、本号は依頼に至る前の信頼関係を問題としていることになりますが、1号と同じく職務を行い得ない事件であると定められている以上、依頼を受けている1号と同じ程度の強い信頼関係は必要であると思われます。
 そこで「協議の方法」と「協議の程度」が問題とされます。
 「協議の方法」とは、回数や場所、直接の面談か電話・メール等でのやり取りかなどの協議のやり方を問題とするものです。
 これに対し「協議の程度」は、協議の内容等のどの程度込み入った事情まで協議をしたのか(反対に一般的抽象的なアドバイスに留まるのか等)が問題となります。

業務停止①

2023-05-11

1 業務停止とは

 弁護士の懲戒処分の2つ目は、「業務の停止」(通常、業務停止と呼ばれます)です。
 これより重い処分である退会命令、除名が弁護士としての身分に直結するような処分であるのに対し、業務停止の処分は弁護士という身分自体には影響しません。そのため、業務停止期間中であっても、弁護士会の会費は徴収されます。

2 業務停止の期間

 弁護士法第57条1項2号の定めでは、「2年以内」の業務停止と定められていますが、具体的な期間等は定めがありません。
 しかし、実際に懲戒をする際には、具体的な期間(たとえば3か月、1年6か月など)を設定して処分をすることになっています。
 処分の始期は、具体的な処分の告知があった時点と考えられています。

3 業務停止期間中の登録取消し

 業務停止期間中に弁護士の登録を取り消すことは可能とされており、その場合には業務停止の処分が当然に失効するとされています。

4 業務停止期間中にできないこと

 それでは、具体的にどのような「業務」が停止されるのでしょうか。

⑴依頼者との委任契約

 弁護士が業務停止となったとしても、依頼者との委任契約自体が当然に解除、失効するものではありません(委任契約書に記載があれば別論)。
 そのため、業務停止の処分を受けても委任契約自体は存続していることになります。

⑵具体的な活動

 ただし、仮に委任契約が存続していたとしても、弁護士としての業務(訴訟事件等の一般法律事務。定義は弁護士法3条1項)は停止されている状態にありますから、具体的な弁護活動はできません。
 委任契約が存続しているので、義務はある一方、業務停止処分を受けていますから、債務不履行状態に陥っています。
 なお、仮に業務停止期間中に弁護活動を行った場合には、そのこと自体が新たな懲戒事由となりますので、代理人・弁護人を辞任する等の措置をとる方が依頼者の方のためと言えます。

⑶官公署による委嘱

 弁護士の職務として、「官公署の委嘱」によって行う法律事務が含まれます。たとえば国選弁護人や破産管財人、司法試験委員、人権擁護委員などが挙げられます。
 このうち、国選弁護人や破産管財人など、法律事務を行うことが委嘱の内容となっているものについては、当然その職務を行うことができなくなりますので、委嘱した官公署は直ちに委嘱を取り消すべきです。ただ、この点についても、上記の委任契約と同様、業務停止処分を受けたからといって、特段の行為無しに委嘱が取り消されるものではありませんから、官公署による取消しが必要であると思われます。
 次に、弁護士であることが委嘱の要件となっているものの、法律事務を内容としないようなものの場合(たとえば司法試験委員など)については、業務停止処分によって弁護士たる身分は喪失しないことから、委嘱を継続することも可能であると思われますが、業務停止を受けていること自体から弁護士としての見識の問題が生じていると言え、できる限り弁護士自身が辞任するか、委嘱の取消しをすべきであると言えます。
 最後に、弁護士であることが委嘱の要件となっておらず、法律事務も含まれていない場合ですが、こちらも2番目の事例と同じように考えられるところですので、辞任等をする方がよいと思われます。

弁護士会による懲戒請求

2023-05-04

1 会請求

 弁護士法第58条2項は、「弁護士会は、所属の弁護士又は弁護士法人について、懲戒の事由があると思料するとき(中略)は、懲戒の手続きに付し、綱紀委員会に事案の調査をさせなければならない」としています。(中略)の部分に「前項の請求」という記載があり、こちらが一般的に依頼者、相手方等からなされる懲戒請求です。
 これに対して、冒頭で引用した、弁護士会自身が綱紀委員会に事案の調査をさせる手続きのことを、会請求と呼んでいます。

2 会請求の決定機関

 会請求をするかどうか判断するのは「弁護士会」となっていますが、弁護士会の機関のうちいずれが
意思決定をするのか定められていません。
 そのため、各単位会が会則等においていずれの機関に会請求の権限を付与しているかによって異なる
と思われますが、おそらく多くの会が会長や常議員会によって判断されていると思われます。

3 会請求の要件

 会請求をするためにも「懲戒の事由があると思料する」必要があるのですが、問題は弁護士会がどの程度の資料をもって認定するかが問題となります。
 弁護士会では、会請求がなされた後、綱紀委員会や懲戒委員会といった内部の委員会で手続きが行われます。
 そのため、最初の会請求をする段階で、綱紀委員会や懲戒委員会が議決をするのに必要となるほどの資料が必要であるとは考えられませんし、嫌疑の程度も求められないと考えられます。
 また、この「懲戒の事由がある」かどうかを判断するため、常議員会等の機関が調査を行うことができるかどうかが問題となります。
 かつての見解では、綱紀委員会の手続きを侵害するおそれがあるため、原則的に調査は相当でないとされていました。
 しかし、いずれにしても他から懲戒請求が出されれば綱紀委員会に事案が付されることや、懲戒請求時に弁護士が登録換えを禁止されるという重大な効果が付与されることを考えると、適切な会請求のためにはある程度の事案の調査は不可欠であると考えられ、現在はそのような運用がなされていると思われます。

利益相反が問題となった事例①

2023-04-27

1 事案の概要

 西暦P年、A社はY弁護士と委任契約を締結し、民事再生手続きの申立て等の委任をした。
 同年、Y弁護士はA社に対する再生手続開始の申立てを行い、その際にはB社をスポンサーとして再生手続きを進めることとしていた。
 その後、A社に対する再生手続は開始されたが、B社がスポンサーを降りてしまったため、同手続きは廃止されてしまった。
 そしてA社について破産手続開始決定がなされ、その破産管財人にX弁護士が選任された。
 P+1年、管財人であるX弁護士は、B社を被告として否認権行使訴訟等を提起したところB社はY弁護士を訴訟代人として選任した。
 この選任行為に対し、X弁護士が弁護士法第25条1号を理由としてY弁護士を訴訟行為から排除するよう裁判所に申し立てを行った。
(最高裁平成29年10月5日決定の事案)

2 裁判所の判断

(1)原審の判断
 原々審はX弁護士の主張を容れて、Y弁護士を排除したが、これに対してY弁護士が抗告した。
 原審は、破産管財人が提起した訴えの相手方の訴訟代理人である弁護士が過去に破産者から上記訴えに係る請求に関連する法律事務等の委任を受けていたとしても、破産管財人が独立した権限に基づいて財産の管理処分権を行使することなどに照らすと、上記弁護士の訴訟行為は弁護士法25条1号にいう「相手方の・・・依頼を承諾した事件」に当たらないとして、原々決定を取消した。
(2)最高裁判所の判断
 最高裁判所は以下の通り判断し、Y弁護士の行為を訴訟から排除した。
「A社は,破産手続開始の決定を受ける前に,相手方Yとの間で,本件委任契約を締結していたのであるから,相手方Yは,A社の依頼を承諾して,A社の業務及び財産の状況を把握して事業の維持と再生に向けて手続を主導し,債権の管理や財産の不当な流出の防止等についてA社を指導すべき立場にあったものである。そして,本件訴訟における主たる請求の内容は,相手方YがA社から委任を受けていた間に発生したとされるA社のB社に対する各債権を行使して金員の支払を求めるもの(中略)である。したがって,本件訴訟がA社の債権の管理や財産の不当な流出の防止等に関するものであることは明らかである。
 また,本件訴訟においてB社と対立する当事者はA社の各破産管財人であるXであるのに対し,本件各委任契約の依頼者はA社であるが,破産手続開始の決定により,破産者の財産に対する管理処分権が破産管財人に帰属することになることからすると,本件において弁護士法25条1号違反の有無を検討するに当たっては,破産者であるA社とその破産管財人とは同視されるべきである。
 そうすると,本件訴訟は,相手方Yにとって,同号により職務を行ってはならないとされる「相手方の・・・依頼を承諾した事件」に当たるというべきである。」
(3)解説
 原審と最高裁の判断を分けた点は、破産管財人と破産者の関係でした。
 原審はこの関係について「破産管財人による否認権の行使は(中略)破産法によって否認の権限が付与されている趣旨に従い、破産者の意思等とは無関係に行われるものであることや、破産管財人が破産者に属していた財産の管理処分権を行使するのも、破産者の代理人等としてではなく、独立した権限に基づいて総債権者の利益のためにするものであることに照らすと、破産管財人による請求の相手方(B社)の訴訟代理人である弁護士Yが、過去に破産者から上記請求に関連する法律事務等の委任を受けていたとしても、同弁護士らによる上記請求に係る訴訟行為をもって、弁護士法25条1号にいう「相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件」に係る職務行為と同視することはできないとしていました。
 これに対して最高裁は両方を同視されるべきとしています。
 Y弁護士が事案を受任した経緯には理解できるところがあるないわけではないですが、少なくともA社とB社は実質的に利害対立する立場にあったので、最高裁の決定の趣旨を踏まえれば、受任を差し控えるべき事案であったということができます。

利益相反①

2023-04-20

1 利益相反

 弁護士法第25条は、弁護士が職務を行い得ない事件を定めています。
 同様に、弁護士職務基本規程第27条、28条も職務を行い得ない事件を定めています。
今回から、複数回にわたり、この職務を行い得ない事件を解説していきます。

2 「相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件」(法1号)

(1)相手方
 法1号が定めているのは、典型的には民事裁判の原告と被告双方から依頼を受けるような場合(これは双方代理の問題もあります)を指しています。
 ただ、ここでの「相手方」は、典型的な原告・被告関係ではなく、実質的に利害関係が対立する状況の当事者を指すと考えられています。
 反対に言うと、形式的に立場が異なった場合であっても、実質的に利害を共通するような場合には、「相手方」には当たらないということになります。
(2)協議を受けて
 協議を受けるというのは、法律相談などが典型例です。場所等は問われませんが、単なる雑談などは含まれないと考えられます。
(3)賛助
 賛助とは、相談者が希望する一定の結論を擁護する具体的な見解を示したり、法的な助言をすることを指します。
 そのため、相談者が希望する見解と反対の結論を述べたような場合には、賛助したとは評価されません。
 この点について、最高裁の裁判例でも「法律事件の協議に対し、事情を聴取した結果具体的な法律的手段を教示する段階に達すれば、一般的にいって右法条にいわゆる『賛助し』に該当する」としています。
 「具体的な法律的手段を教示」する状態がどのような状態であるかは個別具体的な判断となりますが、法律相談において(たとえ無料でも)希望する結論を擁護するような意見を述べれば「賛助」に当たると考えられるものの、単に意見を述べた程度(希望する結論などとは関係なく、一般的意見を伝えたにすぎない程度)であれば、「賛助」に当たらない可能性があります。
(4)依頼を承諾し
 本号後段は、相手方の依頼を承諾した事件の受任を禁じています。これは双方代理のような場合が典型的なのですが、前段と異なり協議は必要ありません。
 ですので、協議なく依頼を受けた場合には(その妥当性は別として)、それだけで相手方の事件の受任が禁じられているということになります。
(5)事件
 後段で問題となる事件とは、訴訟物の同一性等を問題とするのではなく、実質的に同一の紛争であるかどうかが問題とされます。
 ですので、刑事事件の場合、共犯者相互だけではなく、贈賄側と収賄側のような共犯関係にない場合も、本号により受任が禁じられると考えられます。

戒告

2023-04-13

1 戒告

(1)戒告とは
 戒告は、弁護士法第57条1項1号に定めがある処分で、懲戒処分の中では最も軽い
処分となっています。
(2)戒告による影響
 業務停止以上と異なり、戒告を受けた場合であっても弁護士資格には一切影響を及ぼしません。
そのため、戒告後も通常通り弁護士活動を行うことができます。
 ただ、戒告になった場合にはその処分が公告され、『自由と正義』に事案が掲載されるほか、官報に公告をされることになっています(弁護士法第64条の4)。ただし、弁護士としての資格には影響を与えない処分ですので、裁判所・検察庁への通知は行われません。
それ以外にも、日弁連の会長選挙の被選挙権を3年間失うことになっています。

2 戒告処分に対する不服申立て

 戒告も懲戒の処分の1つですから、単位会が戒告の処分としたときには日弁連懲戒委員会への審査請求、日弁連が懲戒にしたときまたは審査請求が棄却されたときには東京高等裁判所へ取消訴訟を提起することができます。
 戒告は弁護士の身分に影響を与えないものではありますが、訴えの利益がないということにはなりません。ただし、戒告は処分をした段階で執行が終了することになりますので、執行停止の申立てはできないと考えられています。

懲戒請求の方式

2023-04-06

1 懲戒請求の方式

 弁護士法第58条1項では「何人も、弁護士又は弁護士法人について懲戒の事由があると思料するときは、その事由の説明を添えて、その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会にこれを懲戒することを求めることができる。」と定めているだけで、どのような方式で懲戒請求をしなければならないかの記載はありません。
 そのため、法律上は書面で請求することも口頭で請求することも可能と言えます。
 懲戒請求の方法については、各単位会の会則などで定められていると思われますので、確認が必要となります。

2 懲戒請求の要件

(1)対象弁護士(弁護士法人)が当該会に所属していること
 懲戒は、基本的には各単位会がなすものということになりますので、最終的に懲戒の処分を受ける対象弁護士または弁護士法人が、当該単位会に所属している必要があります。
 そのため、申立てを受けた単位会において、対象弁護士が存在しないという場合には、受付することができない(ただし、どのように処理するかは単位会によって異なると思われます)ということになります。
(2)懲戒を求めるものであること
 弁護士(または弁護士法人)に対しては、単なる苦情の申出もあり得ますし、紛議調停の申立てを行うこともあります。これらの者と懲戒請求は区別されなければなりませんので、申立の中で懲戒を求めるものであることが明らかにされる必要があります。
(3)懲戒事由
 弁護士法第58条1項で、「その事由の説明を添えて」と定められている以上、懲戒事由が記載されている必要があります。
 これは、弁護士法第56条で定める懲戒事由(法律上の抽象的なもの)ではなく、個々の具体的な事実を指すものと考えられます。
 ただし、記載されている事実が懲戒事由に該当するかどうかという点は、綱紀委員会が判断すべき事項ということになりますので、受付段階では問われないということになります。
(4)懲戒請求者
 懲戒請求である以上、誰がどの弁護士に対して請求するのか特定される必要があると考えられています。
 そのため、懲戒請求者が不特定であったり、匿名での懲戒請求は不適法なものになると考えられています。
 ただし、匿名での懲戒請求であっても、そこに記載された事実を元に会立件することは妨げられないと考えられています。

3 懲戒請求の受付

 懲戒請求を受け付けるのは弁護士会ですので、各単位会に窓口が存在すると思われます。
受付の方法にも特に法律上の制限がありませんので、持参して提出しても郵送しても請求を行うことができます。
 懲戒についての実質的な判断は綱紀委員会が行いますので、受付段階での審査は形式的なものに留まります。
 ただし、上記に記載したような要件を満たさないような請求については、場合によっては受付限りで却下することも許されると考えられています。

品位を失うべき非行の事例

2023-03-30

1 事例

 A弁護士は、ゴルフのプレー後、飲酒をした上で車で帰宅した。
その帰宅途中、警察の検問があり、酒気帯び運転の基準値を上回るアルコールが検出されたため、
酒気帯び運転の罪で現行犯逮捕された後、罰金を支払った。
(複数の事例を混ぜたもの)

2 解説

 今回問題となっている行為は、ゴルフのプレー後の出来事であるため、私生活上の行為であると言えます。
 しかし、弁護士法に定める懲戒事由は「その職務の内外を問わず」品位を失う行為とされていますので、弁護士としての職務上の行為に留まらず、私生活上の行為であっても懲戒の対象とされています。
 今回のような飲酒運転は、道路交通法に違反する犯罪行為ですから、弁護士として犯罪を行うことは、通常の人以上にその責任が大きいといえると思われます。特に、飲酒運転については昨今の社会情勢上絶対に許されないものとなっており、その様な面でも重い処分が下されやすい事例となっています。
 そのため、飲酒運転のような略式罰金で終了するような事件であっても、戒告に留まらず業務停止の処分を受けることが通常であろうと思われます。
 単なる飲酒運転だけであれば短期間の業務停止で留まりますが、これに加えて事故が発生しているような場合や、救護義務違反を犯しているような場合には、さらに業務停止期間が長くなります。

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