懲戒手続の効果

1 懲戒手続きの効果

弁護士法第62条1項によると、懲戒の手続きに付された弁護士は、その手続きが結了するまで、登録換・登録取消の請求をすることができないとされています。

また、同条2項により、弁護士法人についても、法律事務所の移転・廃止などの方法で所属弁護士会内に法律事務所が無くなっても、退会とならないことになっています。

これらの規定は、懲戒手続きの前提として、弁護士(弁護士法人)が弁護士会に所属していることが必要であるためです。

仮にこのような規定がなければ、登録換えを行うことで手続きを免れることになってしまうので、その防止のため、上記のような規定が置かれています。

2「懲戒の手続きに付された」の意味

弁護士法第62条による上記のような効果が発生するのは、「懲戒の手続きに付された」ときです。

それでは、懲戒の手続きのうち、どの手続きが行われた段階からこのような効果が生じるのかが問題となります。

具体的には①懲戒委員会の審査手続に付されたとき以降を指すという考え方と②綱紀委員会の調査手続に付されたときからという考え方の2つの考え方があります。

①の考え方によると、綱紀委員会の調査手続に付されている段階であれば登録換の請求を行うことができることになります。

懲戒請求が誰にでも請求できる手続きであることから、全く事実無根のような請求であっても、登録換禁止のような思い効果を弁護士に付与するのは妥当ではないという考えから、かつては日弁連でもこの考え方が採用されていました。

しかし、①の考え方をとってしまうと、綱紀委員会の調査段階で登録換の請求をすることにより、懲戒手続から逃れることができてしまうことになり、立法趣旨にも反することになってしまいます。そのため、現在では②の考え方が採用されています。

ですので、綱紀委員会の調査手続に付された段階で、登録換・登録取消の請求はできなくなります。

3 手続の結了時期

手続が結了する時期は、懲戒をする場合であれば対象弁護士にその処分の告知があったとき、懲戒をしない場合であれば対象弁護士に対してその旨の通知があったときを指すと考えられます。

ただし、懲戒をしない場合、懲戒請求人が異議申出を行った場合には、事案が日弁連の綱紀委員会または懲戒委員会に付されることになるので、再び弁護士法第62条の効果により、登録換・登録取消の請求ができなくなります。

4 登録換・登録取消の意味

「登録換・登録取消の請求」が禁止されるのが弁護士法第62条の効果です。

登録換(こちらに代表させます)の手続きは、

  1. 現所属弁護士会に登録換えの届け出を出し、届出の証明をもらう
  2. 登録換えを希望する弁護士会に登録換えの請求書等を提出する
  3. 登録換えの請求を受けた弁護士会(新しく所属する弁護士会)は、問題ないと判断した場合には、日弁連に登録換えの進達を行う
  4. 日弁連で登録換えを認める

という手続きです。

①の届出がなされる前に、懲戒の手続きに付されている場合には、届出を行ったとしても、不適法となるのは明らかです。

問題になるのは

A ①→綱紀委員会の調査手続に付される→②→③→④

B ①→②→綱紀委員会の調査手続に付される→③→④

C ①→②→③→綱紀委員会の調査手続に付される→④

等のケースです。

このような問題に対し、日弁連の会長通知によれば、「登録換えの場合は、登録換え請求書が新たに入会しようとする弁護士会に提出された日、登録取消氏の場合には、登録取消し請求書が所属弁護士会に提出された日」を基準として、弁護士法第62条の効果が生じるということになっています。

上の例でいうと、Aのケースは登録換え請求ができず、BCのケースであれば請求は有効であるということになります。

なお、仮に登録換え請求と調査手続に付された日が同じであれば、その時間の先後で決めることになり、どちらが先か不明であれば、登録換え請求の方が先であったと考える(登録換え請求の禁止という不利益処分を課すので、先後関係が分からなければ、対象弁護士に有利に考えることになります)ことになります。

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