Archive for the ‘懲戒処分’ Category

弁護士による証人への不当な働きかけと懲戒処分

2026-10-08
弁護士②

事例

窃盗事件で起訴されたAは犯行を否認していた。
裁判で開示された証拠によると、ある証人の供述調書がAにとって大きく不利であり、反対にその証拠さえ顕出されなければ無罪もあり得るというような事案であった。
このような状況であると判断したX弁護士は「この証人には来ないよう頼めば有利になる」とAに助言し、この助言に従ってAが証人に出廷を思いとどまるよう働きかけた結果、証人は実際に法廷に来なかった。

このようなX弁護士の助言に何か問題はないか。

解説

この事例では、弁護士が証人への不当な働きかけを依頼者に助言したことが問題となります。
刑事弁護において弁護士は依頼者の利益のために最善を尽くす義務を負いますが、その活動は法令と職業倫理の範囲内で行われなければなりません。
証人に対して出廷を断念させたり、証言内容に影響を及ぼすよう働きかけたりすることを助言する行為は、司法の公正を害するおそれがあり、その方法によっては証人威迫の罪などの適用も考えられる行為ですから、違法行為の唆しとなる可能性さえあり得ます。
そのため、このような証人の出頭を断念させるよう働きかけることを助言することは、たとえそれが証人威迫にならないような方法での対応を助言するものであったとしても、裁判の公正をゆがめるような行為に該当し、弁護士として品位を失う非行であると判断され、懲戒処分の対象となる可能性があります。

さらに、弁護士職務基本規程との関係では、**第5条(真実の尊重)**は、弁護士に対し真実を尊重して誠実に職務を遂行することを求めています。また、**第70条(証拠への不当な関与の禁止)**は、証拠を偽造・変造したり、虚偽の証拠を提出したり、証拠に不当に関与することを禁止する趣旨を明らかにしています。
証人に証言を差し控えさせるよう依頼者に助言する行為は、このような規律にも抵触する可能性があります。

したがって、本件のような助言は、依頼者の利益のためであっても許される弁護活動の範囲を逸脱しており、弁護士法及び弁護士職務基本規程上、重大な問題となる行為と評価されます。

違法行為を助言し、弁護士が懲戒を受けるケースには、いわゆる自力救済を弁護士が助言するような事例が多くなっています。
自力救済の内容や程度にもよるのですが、戒告処分を受けているようなケースも散見され、違法行為の助言に対しては厳しい処分が予想されます。
刑事裁判の証人の出廷に関するものとなると、単なる自力救済よりは重く見られることが予想されますから、業務停止の可能性も検討しながら対応していく必要があります。

税理士の懲戒処分とは?税理士法上の違反事例を解説

2026-09-24
税理士

税理士が懲戒処分を受ける場合として法定されているものについて、架空の事例に基づいて解説します。

故意に「嘘の申告書」を作った場合

税理士Aは、顧客である会社Xから、
「本当は1,000万円の売上があるのですが、500万円しかなかったことにして税金を減らしたい」
と頼まれました。
Aは事実を把握していたにもかかわらず、売上500万円として法人税の申告書を作成しました。

これは典型的な懲戒事由です。

税理士法45条1項は、税理士が故意に、真正の事実に反して税務書類を作成した場合などについて、税理士業務の停止または禁止の対象としています。ここでの「故意」とは、事実に反すること、または反するおそれがあることを認識して行うこととされています。

つまり、顧客に言われたからやったということは、処分を免除する理由とはなりません。

むしろ、税理士は税務の専門家ですから、不正を認識しながら申告書を作れば、重い責任を負うことになります。実際、税理士に対する懲戒処分には、他に「戒告」も用意されていますが、故意に事実と異なる書類を作成した場合には、戒告は選択できないようになっています。

「脱税の相談」に乗った場合

顧客Bから、
「税務調査が来そうです。どうすれば売上を隠して税金を少なくできますか?」
と相談された税理士A。
Aは、
「現金売上の一部を帳簿に入れなければ見つかりにくいですよ」
などと具体的な方法を教えました。

実際にA自身が申告書を偽造していなくても、問題になります。

税理士法36条は、税理士が不正に国税・地方税の賦課または徴収を免れることについて相談に応じる、いわゆる脱税相談を禁止しています。
脱税相談は、税理士法36条に違反する行為となりますから、同46条の「この法律…の規定に違反したとき」に該当しますので、懲戒の対象となります。

したがって、
「自分が申告書を偽造していないから大丈夫」
とは限りません。

故意ではなくても「相当の注意」を怠った場合

ここは税理士にとって非常に重要なポイントです。

    税理士Aの事務所では、従業員Cが顧客の架空経費を長期間にわたって計上していました。
    Aは最終的な申告書には目を通していましたが、領収書や請求書などの証憑をほとんど確認していませんでした。
    実際には、少し確認すれば不正に気付ける状況でした。

    A自身は、
    「そんな不正が行われているとは知らなかった」
    としても、適切なチェックをしていなかったことについて責任を問われる可能性があります。

    税理士法45条2項は、税理士が相当の注意を怠って、事実と異なる税務書類を作成した場合を懲戒事由としています。

    このような場合、知らなかったからといって処分を免れると言う事にはなりません。

    顧客の税務調査を妨害した場合

      顧客Dに税務調査が入ったところ、税務署から帳簿の提出を求められました。
      税理士Aは、顧客Dに対して、
      「この帳簿は見せないほうがいいです。別の場所に隠しておきましょう」
      と指示しました。

      これは、税務調査を妨害する行為として問題になります。

      国税庁は、税務代理をする際に税務職員による調査を妨げる行為を「調査妨害」とし、税理士法37条の信用失墜行為に該当すると説明しています。

      税理士は顧客の利益を守る立場ではありますが、だからといって、
      「税務署に見つからないようにすること」
      まで仕事にしてよいわけではありません。

      以上のような場合が、典型的な違反例となります。
      さすがにここまでの事案はないと思われますが、顧客の求めに応じ、税法上問題となるような行為をした場合には、懲戒の可能性が常に付きまといます。
      税理士会からの呼び出し、国税局・税務署からの調査を受けられた場合には、一度弁護士にご相談ください。

      行政書士による職務上請求の不正利用 処分や逮捕のリスクを解説

      2026-09-10
      PC 男性 頭抱える

      【事例】

      行政書士であるA氏は、いわゆる情報屋であるBからの依頼を受け、特に事件処理に利用するわけではないにもかかわらず、Cの戸籍謄本を職務上請求書を用いて取得した。
      この取得に問題はないか。
      (事例はフィクションです。)

      【解説】

      原則、戸籍謄本や住民票は本人や配偶者、直系の親族のみが取得できます。
      これに対して、一部の士業では、職務上の必要性を理由に戸籍謄本や住民票を取得することができます。
      このような取得方法のことを「職務上請求」と呼びます。

      このような職務上請求には法律上の根拠があり、例えば戸籍謄本の場合には戸籍法10条の2第3項で
      「第一項の規定にかかわらず、弁護士(弁護士法人及び弁護士・外国法事務弁護士共同法人を含む。次項において同じ。)、司法書士(司法書士法人を含む。次項において同じ。)、土地家屋調査士(土地家屋調査士法人を含む。次項において同じ。)、税理士(税理士法人を含む。次項において同じ。)、社会保険労務士(社会保険労務士法人を含む。次項において同じ。)、弁理士(弁理士法人を含む。次項において同じ。)、海事代理士又は行政書士(行政書士法人を含む。)は、受任している事件又は事務に関する業務を遂行するために必要がある場合には、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。この場合において、当該請求をする者は、その有する資格、当該業務の種類、当該事件又は事務の依頼者の氏名又は名称及び当該依頼者についての第一項各号に定める事項を明らかにしてこれをしなければならない。」
      という定めが置かれています。

      この職務上請求を行う場合には、法律に記載の通り、資格名や士業の氏名・住所の記載が求められますが、それ以外にも定めがあります。
      それは、「職務上請求用紙」を使用することです。
      書面を交付する役所の側からすると、請求が真正な者かどうかの判定は極めて困難です。極端な場合、目の前の人物が本当に弁護士なのかどうかさえはっきりしません。

      このような難点を解消するため、士業団体では「職務上請求用紙」という、職務上請求をするために必要な特別の用紙を作成し、その用紙で行われた職務上請求のみが真正な請求であると取り扱われています。
      役所の側からすると、職務上請求用紙を用いて請求されていれば、本物の士業であると信頼しやすいことになります。

      この職務上請求用紙は、購入時も厳格に取り扱われており、すべての書類に通し番号が振られています(弁護士会のもの)。
      つまり、ある職務上請求用紙が使われた場合、その用紙を誰が購入したのかを追跡できる仕組みとなっています。

      このように、職務上請求は、一定の要件に基づいて、必要性の認められる場合にのみ使用することができるものですから、事例のように理由なく職務上請求をすることは許されません。
      職務上請求用紙の不正使用は、各士業団体で重い処分となることが予定されているほか、不正使用に基づいて逮捕されたような事例もあります。

      不正使用は極めて重い行為ですので、十分に注意しましょう。

      弁護士が事件を放置すると懲戒処分?処分の種類と判断基準を解説

      2026-08-27
      弁護士

      弁護士が事件処理を停滞させた場合の懲戒処分については、過去に弁護士会が公表している処分例を踏まえると、その評価は「停滞の程度」「期間」「依頼者への影響」によって大きく異なると理解されています。

      まず前提として、日本における弁護士の懲戒処分は、戒告、業務停止、退会命令、除名の4段階に分かれており、下位から順に軽い処分から重い処分へと段階的に構成されています。 
      このうち、事件処理の停滞や放置といった職務上の怠慢は、弁護士の基本的義務である誠実な職務遂行に直接反する行為であるため、比較的重い処分につながりやすい類型とされています。

      実際に公表されている処分例によれば、弁護士が依頼者から事件を受任しながら、書面を提出しない、裁判期日に出頭しない、あるいは依頼者との連絡を絶つといった行為は、「事件放置」として懲戒理由の中でも頻出する重要な類型であり、処分の対象となりやすいとされています。 
      さらに、第一審の審理期間を通じて実質的な活動をほとんど行わなかった事例では、実際に業務停止処分が科された例が存在します。

      このような実務傾向を踏まえて架空の事例で考えると、例えば弁護士が一時的に事件処理を遅らせたにすぎず、最終的には適切に処理を完了し、依頼者に重大な不利益が生じていない場合には、戒告にとどまる可能性が高いと考えられますが、戒告自体も懲戒処分となりますので影響は小さくありません。

      しかし、停滞が継続的に生じ、書面提出の遅延や期日欠席が繰り返されるなど、実質的に事件処理が進まない状態が長期間続いた場合には、評価は大きく変わります。
      このような状況では「事件放置」として扱われ、依頼者に実害が発生していれば、業務停止処分が相当とされる可能性が高いです。
      業務停止は一定期間弁護士業務を全面的に禁止する重い処分であり、その期間は事案の悪質性に応じて数ヶ月から1年程度に及ぶことがあります。

      さらに、事件処理が長期間完全に放置され、その結果として例えば時効の完成や訴訟上の重大な不利益など、依頼者に回復困難な損害が生じた場合には、より重い処分が検討されます。
      この段階では、長期の業務停止(1年を超えるようなもの)が視野に入ると考えられます。さらに悪質なケースとして、事件放置に加えて金銭に関する問題(例えば着手金を受け取ったまま業務を行わない、回収金を依頼者に交付しないなど)が伴う場合には、懲戒の性質は一層重くなります。

      以上をまとめると、弁護士が事件処理を停滞させた場合の懲戒処分は、単なる一時的な遅延であれば戒告にとどまることもありますが、停滞が継続して「放置」と評価される段階に至ると、業務停止が基本的な処分水準となり、さらに依頼者に重大な損害が生じた場合や他の不正行為が併存する場合には、退会命令や除名といった極めて重い処分へと段階的に移行していくという構造になっています。

      社会福祉士が傷害事件を起こしたら?刑事・民事責任と資格への影響を解説

      2026-08-13
      握りこぶし

      社会福祉士が刑事事件を起こした場合、その影響は単なる刑罰にとどまらず、民事上の責任や行政処分(資格への影響)など、多角的な局面に及びます。

      架空の事例を設定し、それぞれの局面でどのような処分が発生するかを解説します。

      1 事例

      【事例:福祉施設内における利用者への傷害事件】
      特別養護老人ホームに勤務する社会福祉士のAさん(35歳)は、施設内において、日頃から介護方針を巡りトラブルになっていた高齢の利用者B氏に対し、感情を暴発させて突き飛ばし、全治2週間の打撲を負わせた。その場にいた他の職員の通報により、A氏は駆けつけた警察官に傷害の容疑で現行犯逮捕された。

      2 刑事上の処分(刑事責任)

      刑事事件は、国家が、罪を犯した者に対して科す刑罰です。国家(警察、検察)対 A氏の構図となります。

      • 罪名と罰条:
        A氏の行為は刑法第204条の傷害罪に該当します。法定刑は「15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」です。
      • 手続きの流れと処分見込み:
        逮捕後、検察庁に送致され、勾留(身柄拘束)を経て、検察官が起訴か不起訴かを判断します。
      • 初犯で、被害が全治2週間と比較的軽微であり、B氏側との示談が成立した場合:
        不起訴処分(起訴猶予)や、裁判を開かない簡易な手続きである略式命令(罰金刑)となる可能性が高いです。
      • 示談が成立せず、過去にも同様のトラブルがある場合:
        公判請求(正式な裁判)となり、拘禁刑の判決を受けることになりますが、実刑となるかどうかは、過去に同じような事件を起こして執行猶予中ではないか、被害者のけがの程度がどれほど重篤かなどで決まります。

      3. 民事上の処分(民事責任)

      民事責任は、被害者が被った不利益(損害)を金銭的に賠償・補填する責任です。B氏(およびその家族)対 A氏(および施設)の構図となります。

      • 不法行為責任(刑法上の犯罪とは別):
        A氏は、故意にB氏の身体を傷つけたため、民法第709条に基づき不法行為による損害賠償責任を負います。
      • 賠償すべき損害の内訳:
        積極損害: B氏の治療費、通院費など。
        消極損害: 万が一、この怪我によりB氏の身体機能が低下し、追加の介護費用が必要になった場合の費用など。
        慰謝料: 身体的・精神的苦痛に対する対価(傷害慰謝料)。
      • 施設側の連帯責任(使用者責任):
        A氏は業務中に事件を起こしているため、被害者B氏はA氏個人だけでなく、雇用主である福祉施設に対しても民法第715条の使用者責任(損害賠償)を追及できます。
        施設がB氏に賠償金を支払った場合、施設からA氏に対して返金を求める(求償権の行使)ことになります。
        なお、これ以外に債務不履行に基づく損害賠償請求も考えられます。施設入居の契約上、施設側は入居者の安全に配慮する義務があり、この義務に違反していると言えるからです。

      4. 行政上の処分(行政責任・資格への影響)

      行政処分は、社会福祉士の「資格」そのものに対する処分です。厚生労働大臣によって判断されます。

      社会福祉士及び介護福祉士法に基づき、刑事罰の重さによって処分が連動します。

      • 欠格事由への該当(同法第3条):
        社会福祉士及び介護福祉士法3条の欠格事由に該当する場合には、社会福祉士の登録が取り消されます(同32条)。
        また、欠格事由に当たる場合には、厚生労働大臣は「その登録を取り消さなければならない」となっており、大臣に裁量はありません。
        つまり、欠格事由に該当すると必ず取り消されるということになります。

      特別な法律違反の場合を除き、一般的な法律に関しては、拘禁刑以上の刑に該当した場合に欠格事由となることが定められています。
      本件でも、裁判を受けるような事態になると、登録取り消しになる可能性が極めて高いと言えます。

      5. その他の処分(懲戒処分など)

      上記3つに加えて、勤務先である福祉施設から労働法上の処分を受けます。

      就業規則の懲戒規定に基づき、基本的には「職場内における利用者への暴力」かつ「逮捕・報道」を伴うものであるため、最も重い「懲戒解雇(即時解雇)」となるケースが一般的です。

      薬剤師が盗撮で逮捕されたら?刑事処分・懲戒処分・免許への影響を解説

      2026-07-30
      薬剤師

      事例(フィクションです)

      Aさん(35歳・薬剤師)は、勤務先のドラッグストアで来店客のスカート内をスマートフォンで盗撮しようとして発覚しました。
      警察に性的姿態等撮影罪で逮捕されてしまいました。

      この場合、薬剤師としては大きく分けて次の3つのレベルの処分が考えられます。

      1.刑事処分

      まず、一般市民と同様に刑事責任を問われます。

      盗撮行為については、現在は 性的姿態等撮影罪が適用されます。

      たとえば盗撮画像を売る目的であるとか、前科前歴があるといった事情がなければ、初犯であれば罰金刑となることが多いと言えます。
      また、被害者の方と示談をすることができれば不起訴となる可能性もあります。

      2.勤務先からの処分

      薬剤師資格とは別に、勤務先から懲戒処分を受ける可能性があります。

      例えば、

      戒告
      減給
      出勤停止
      諭旨退職
      懲戒解雇

      などです。

      勤務中の犯行や、患者・顧客を対象とした犯行であれば、より重い処分になりやすいでしょう。
      なお、ドラッグストアではなく国公立の病院などであれば、公務員としての懲戒処分を受けることになります。

      3.薬剤師免許に関する行政処分

      薬剤師には国家資格があるため、有罪判決などが確定すると、厚生労働省による行政処分の対象になる可能性があります。

      薬剤師法では、一定の場合に

      戒告
      業務停止(一定期間)
      免許取消し

      などの処分が行われることがあります。

      実際には、刑事事件の内容や判決内容、反省状況、再犯のおそれなどが審査されます。
      薬剤師の行政処分についても、医道審議会で審理され、その状況が公開されています。
      2022年7月の医道審議会でも、迷惑防止条例違反と器物損壊をした薬剤師に対して業務停止4月の処分が下されています。

      まとめ

      このの事例では、薬剤師が盗撮事件を起こした場合、

      刑事処分(罰金・執行猶予・実刑など)
      勤務先の懲戒処分
      薬剤師免許に対する行政処分(戒告・業務停止・免許取消し)

      の3つが並行して問題となります。

      特に有罪判決が確定した場合は、薬剤師としての資格維持にも影響する可能性があります。なお、実際の処分基準は事件の内容や時期、法改正、行政判断によって変わるため、個別のケースでは専門家による検討が必要です。

      弁護士広告のNG表現とは?日弁連の規程で禁止される広告と注意点を解説

      2026-04-23
      弁護士事務所

      弁護士事務所については、自由に広告は出せるものの、その内容については日弁連の規程により
      制限を受けます。
      仮にこの規程に違反するような広告を掲載した場合、会規・会則違反として懲戒処分の対象となる可能性がありますので、具体的にどのような広告が問題となるのかを、「弁護士等の業務広告に関する規程」と、その解釈を示した「業務広告に関する指針」に基づいて説明します。

      なお、今回説明するものは、禁止されている広告のうち典型的なものに限りますので、ほかにも多数ルールがありますから、詳しくは規程及び指針をご確認ください。

      ①勝訴率100%と広告に記載すること

      そもそも、勝訴率100%は現実的には実現しえません。受任する事件を選んでいけばそのようなことも可能かもしれませんが、極めて特殊な事例・ケースに限定されます。
      同じような事件でも、同じ事件はありませんから、前に勝訴できたとしても、次も勝訴できるという保証はありません。そのため、勝訴率を表示することは、誤導・誤認のおそれのある広告に該当するとして、規程4条1号によって禁止されています。なお、真実の勝訴率を表示したとしても、そもそも勝訴率を掲載すること自体が禁止されていますので、違反となることに注意が必要です。

      ②〇〇事務所よりも素早く対応します

      規程3条5号により、ほかの事務所と比較するような広告を掲載することは禁止されています。この理由について指針では明記されていませんが、品位を損なうような広告であることが理由であると思われます。
      そのため、何を比較するかを問わず、比較すること自体が問題とされていますので注意が必要です。

      ③過去に〇〇事件を担当しました

      過去に取り扱った事件については、規程4条4号で掲載が禁止されています。
      ただし、①「依頼者の書面による同意がある場合」②-1「広く一般に知られている事件」で「依頼者の利益を損なうおそれがない」②-2「依頼者が特定されない場合」で「依頼者の利益を損なうおそれがない」場合には、許容されています。

      書面による同意がある場合には問題は生じませんが、それ以外の場合に注意が必要です。指針に挙げられている例は、弁護団事件などで依頼者が多数であり同意を得ることが困難でかつ原告が増えた方が依頼者自身の利益にもなるというようなケースです。そのため、また、依頼者が特定されないかどうかは、依頼者名が表示されているかどうかではなく、実質的に特定できないかどうかで判断するとされており、極めて慎重な対応が必要となります。

      ④〇〇を専門としています

      医師に存在する「専門医」制度と異なり、弁護士にはそのような制度はありません。そのため「どうなれば専門と言えるのか」がはっきりしていないといえます。

      そのため、客観的なものが担保されず、「専門」と名乗ることには、国民を誤導する可能性があるとして表示を控えるのが妥当であると指針では記載されています。
      これに対して「積極的に取り組んでいる分野」「関心のある分野」という表現は問題ないとされており、そちらの方が望ましいと言えます。

      弁護士が広告を掲載する際には、必ず広告規程及び指針を確認するようにしてください。

      【弁護士が解説】処方箋偽造でどうなる?刑事責任・看護師免許・懲戒処分のリスクを解説

      2026-04-09
      薬

      事例

      東京都内の総合病院に勤務する看護師Aさんが、自身の不眠症状を改善する目的で、医師の許可なく睡眠薬の処方箋を偽造し、薬局で薬を受け取りました。
      後日、薬局からの照会により発覚し、警察に通報されました。
      (事例はフィクションです。)

      ① 刑事上の責任(刑罰)

      この場合、主に次の犯罪が成立する可能性があります。

      有印私文書偽造等罪(刑法第159条)

        Aさんは、医師に成りすまし、医師名義の処方箋を作成していますから、有印私文書偽造罪が成立します。
        なお、「有印」とは、「他人の印章等を使用して」行うことを指すとされていますが、処方箋の医師名の横には医師の印が押されていると思われますので、この罪が成立します。

        有印私文書行使罪(刑法第161条)

          この偽造文書を行使した場合には、有印私文書行使罪が成立します。薬局に提出する行為は、まさに行使と言えます。

          詐欺罪(刑法第246条)

            このような偽の処方箋を用いて医薬品を薬局から購入した場合、「もし本当のことを(偽造されていること)を薬局が知っていたら、薬を提供しなかった」
            と言えることから、薬を詐取したとして詐欺罪に問われる可能性があります。
            なお、Aさんはもちろん対価として薬の代金を支払っているはずで、これ自体は正当な金額だと思われます。たとえ正当な対価を支払っていたとしても、
            本当のことを知っていれば売らなかったというような場合には、詐欺罪が成立しうると言えます。

            仮にこれらのすべてについてAさんが罪に問われたとしても、初犯であれば実刑判決となる可能性はそれほど高くありません。
            しかし、Aさんが過去にも同じようなことをしている場合や、初犯であっても詐取した薬剤の量が多い場合、自己使用目的ではなく転売目的である場合等には実刑の可能性が否定できなくなってきます。

            ② 看護師資格への影響

            看護師の資格は、保健師助産師看護師法に基づいて管理されています。
            看護師については、罰金以上の刑となった場合や、看護師として品位を損するような行為があったときに処分を受ける可能性があります
            (保健師助産師看護師法14条)

            ■ 行政処分の流れ(罰金以上の刑を受けた場合)

            まず刑事事件が確定する必要があります。現に裁判中の場合には、罰金以上の刑を理由に処分を受けることはありませんし、第一審が終了しても控訴した場合には刑が確定していない状態になるので処分を受けません。ただし、看護師として品位を損する行為かどうかは、刑の確定とは関係ない事情となりますので、こちらを理由として処分を受ける可能性があります。

            法律上、厚生労働省による調査が行われることになっています。しかし、実際には都道府県知事(もっと言うと、都道府県の担当部局の職員)による聴聞が行われることがほとんどです(同15条3項)。

            都道府県において聞き取りが行われ、その意見が厚生労働省に提出されることで、実際に医道審議会での審議が行われることになります。
            最終的な処分については、医道審議会の意見を聞いたうえで、厚生労働大臣が決定する(准看護師の場合には、准看護師試験委員の意見を聞いて都道府県知事が決定する)ことになっています。

            ■ 想定される行政処分

            処分の重さは事案の悪質性によります。ただ、「保健師助産師看護師に対する行政処分の考え方」が公表されており、ここで一応の目安が記載されています。
            処方箋の偽造については直接的には定められていませんが、職務上の立場を利用して犯罪を行ったような場合には重い処分とすることが明記されていますので、
            今回のAさんの事例でも免許取消しや業務停止といった重い処分が考えられます。

            ■ 免許取消の場合

            一度免許を取り消されると、基本的には5年程度免許が取得できなくなります(取り消しとなった事由にもよります)。

            ③ 勤務先での処分

            病院からは以下の懲戒処分が想定されます。

            懲戒解雇
            諭旨解雇
            停職

            医療機関では信用失墜行為は重大視されるため、懲戒解雇の可能性が高いです。

            ④ まとめ(本事例の場合)

            この架空事例では:

            刑事責任:有罪(執行猶予付き懲役の可能性)

            職場:懲戒解雇の可能性大

            看護師免許:業務停止〜取消の可能性

            【弁護士が解説】報酬説明なしで280万円請求…弁護士が懲戒請求された遺産分割事件の問題点とは

            2026-03-12

            【弁護士が解説】報酬説明なしで280万円請求…弁護士が懲戒請求された遺産分割事件の問題点とは

            弁護士 困った

            1.事案の概要

            弁護士M(登録8年目・都市部の法律事務所勤務)は、個人依頼者Nから、次の事件を受任した。

            相続人間の遺産分割協議
            遺産総額:約2,000万円
            紛争性は比較的低く、調停前の協議段階

            Mは、初回相談時に「うちの事務所の一般的な基準でやります」と述べたのみで、具体的な報酬額・算定方法を明示しなかった。
            また、その際書面による委任契約書は作成されなかった。
            (事案はフィクションです。)

            2.事件処理の経過

            Mは、相続人との電話連絡、協議書案の作成などを行い、約2か月で事件は円満に解決した。
            裁判所での手続は利用されず、依頼者Nは結果に概ね満足していた。

            3.問題行為の発覚

            事件終了後、MはNに対し、以下の請求書を送付した。

            着手金:50万円
            成功報酬:遺産総額の10%(200万円)
            事務手数料等:30万円
            合計:280万円

            Nは、事前説明を受けていない、成功報酬の意味が分からない、紛争がほぼなかったとして強く抗議した。

            これに対しMは、「成果が出たのだから当然の報酬だ」「払えないなら法的措置も検討する」と述べ、請求を撤回しなかった。

            4.懲戒請求の申立て

            Nは、報酬説明義務違反、高額な報酬請求、契約書不作成を理由に、所属弁護士会へ懲戒請求を行った。

            5.弁護士Mの弁明

            Mは調査に対し、次のように主張した。

            事務所の内部基準に基づく請求である
            相続額に比例する成功報酬は合理的
            依頼者も弁護士費用が発生することは理解していた

            6.判断

            以下の点を問題視した。

            ① 報酬説明義務違反

            金額・算定方法・成功報酬の定義について事前に具体的説明がなかった、書面化もされていない

            → 依頼者の合理的理解を欠くほか、契約書作成義務という弁護士の基本的な義務に違反している

            ② 不当な高額性

            紛争性が低く、処理期間も短期間、裁判手続なし

            にもかかわらず、
            遺産総額の10%を成功報酬とするのは、契約書が作成されていない本件では不相当に高額の可能性がある。

            ③ 事後的・一方的請求

            結果確定後に初めて高額な報酬を提示

            → 依頼者の自己決定権を侵害

            ④ 威圧的言動

            法的措置を示唆し、支払を迫った点も不相当との評価を受けざるを得ない。

            まとめ

            契約書なく受任をすることは、書面作成のみといった簡単な事件ではない限り禁止されています。
            また、事務所に報酬の一覧を備えつける必要があるため、依頼者からしても全く金額の予想がつかないわけではありませんが、別の合意をすることなども可能なので、事件ごとに都度金額の説明を行う必要性があります。
            報酬の回収ということ自体は問題にならないものの、安易に法的措置を持ち出すなどした場合には、それ自体品位を失う行為として懲戒になる可能性があるので注意が必要です。

            【弁護士が解説】証拠開示資料をブログ掲載・記者提供した弁護士の法的責任とは――秘密漏示罪・目的外使用・懲戒のリスクを解説

            2026-02-26

            証拠開示資料をブログ掲載・記者提供した弁護士の法的責任とは

            PC 男性 頭抱える

            弁護士Aは、強盗致傷事件の被告人Bの弁護人として、検察官から証拠開示を受けました。
            記録には、被害者の供述調書が含まれ、その中には被害者の住所や連絡先がマスキングなしで記載されていたほか、防犯カメラ映像データなども含まれていました。

            弁護士Aは、社会的に注目を集めた事件であることから、
            記録の一部を自己のブログで「社会的関心が高い事件」として紹介しました。
            そのなかでは、被害者の供述内容を匿名化が不十分な状態で掲載しています。

            さらに、知人の記者に参考資料としてPDFデータを送付しました。

            Aにはどのような責任があるでしょうか。

            ① 想定される刑事責任

            弁護士が刑事事件記録を不適正に利用した場合、行為態様によっては以下の犯罪が成立し得ます。

            1.秘密漏示罪(刑法134条)

            弁護士は「業務上知り得た秘密」を守る義務を負います。

            被害者の供述内容や住所
            事件関係者の個人情報
            捜査上の非公開情報

            これらを正当な理由なく漏らした場合、6月以下の拘禁刑または20万円以下の罰金に処せられます。

            本事例では、被害者の氏名や住所が記載された供述調書をブログにアップしたり、記者に教えたりしていますので、秘密漏示の罪になる可能性があります。

            2. 証拠目的外使用(刑事訴訟法上の問題)

            証拠開示資料は「防御目的」に限定して使用することが前提です。
            目的外使用は、刑事訴訟法281条の5に定める罰則の対象となり、弁護人であっても処罰の可能性があります。
            被告人が目的外使用をした場合(目的とは、281条の4第1項に定める目的です)には、それだけで処罰の対象となりますが、
            弁護人は「対価として財産上の利益その他の利益を得る目的」に使用した場合に処罰の対象となります。
            自己の名声を上げるための場合などは、利益を得る目的と認定される可能性が高いので注意が必要です。

            ② 懲戒処分(弁護士法上)

            弁護士は 弁護士法 に基づき、所属弁護士会および 日本弁護士連合会 の監督を受けます。

            懲戒の種類(弁護士法57条)
            戒告
            2年以内の業務停止
            退会命令
            除名(弁護士資格喪失)

            本事例で想定される処分

            本件のように、被害者が特定された場合、二次被害発生したり、記者へデータ送付という積極的漏洩をしたことが弁護活動と無関係な利用であるならば、重い処分となる可能性があり、業務停止となる可能性も否定できません。

            ③ 民事責任

            被害者から、
            不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求
            慰謝料請求

            を受ける可能性もあります。

            刑事弁護における証拠開示資料は、
            ✔ 防御目的限定
            ✔ 厳格な保管義務
            ✔ 関係者以外への提供禁止

            が原則です。

            特にデジタルデータは漏洩リスクが高いため、注意が必要です。

            « Older Entries

            keyboard_arrow_up

            0120631881 問い合わせバナー 秘密厳守の無料相談