日弁連綱紀委員会

1 日弁連綱紀委員会の役割

綱紀委員会は、単位会だけではなく日弁連にも設置されています。

日弁連綱紀委員会の役割は、以下のようなものです。

  1. 日弁連が懲戒手続に付した懲戒事案の調査(弁護士法第60条第2項)
  2. 綱紀審査会から嘱託を受けた事項の調査(弁護士法第71条の6第2項)
  3. 単位会の綱紀委員会の議決に基づく懲戒しない旨の決定・単位会綱紀委員会が相当期間内に調査を終えないことに対する異議の審査

このうち、②の綱紀審査会からの嘱託については、綱紀審査会が必要と認めた場合に、単位会又は日弁連の綱紀委員会に調査の嘱託をすることとされており、具体的にどのような場合に嘱託を行うかについて綱紀審査会に裁量が認められています。

また、③については、「異議申出」のページをご覧下さい。

2 日弁連が懲戒手続に付した懲戒事案の調査

⑴位置づけ

弁護士法第60条により、弁護士(法人)の所属弁護士会だけではなく、日弁連も懲戒することができる旨が定められています。

本来、弁護士に対する指導監督権を発揮すべきは、弁護士との距離の近い所属弁護士会であり、だからこそ懲戒の請求先は所属弁護士会とされています(弁護士法第58条)。
そのため、日弁連による懲戒手続きは、単位会が行うものの補完的な位置づけとされています。

⑵要件

日弁連が懲戒手続を開始するのは、「自らその弁護士又は弁護士法人を懲戒することを適当と認めるとき」です。

具体的な懲戒事由や判断方法については、単位会が行う懲戒手続と変わりありませんので、問題は日弁連が「自ら」懲戒することを適当と認めるときがどのような場合かということになります。

たとえば、単位会綱紀委員会が懲戒委員会の審査に付さないことを議決していて、懲戒請求人による異議申出がない状況で、日弁連が「自ら懲戒することを適当」かどうか判断するようなことは、日弁連による懲戒手続が補完的な位置づけであることから考えて、許されないと考えられています。

そのため、この「自ら懲戒することを適当と認めるとき」は、単位会による懲戒の手続きが機能しない場合などを想定されていることになります。

⑶手続き

日弁連綱紀委員会による懲戒手続の流れは、基本的には単位会綱紀委員会と同じです。ただし、若干異なる点があります。

  1. まず、調査の開始は「日弁連」(具体的には常務理事会)が懲戒することを適当と認めたときに、綱紀委員会の調査が開始します。日弁連に対して直接懲戒請求を行うことは許されません。そのため、仮に日弁連の窓口で懲戒請求を行ったとしても、まずは単位会に懲戒請求を行うように促されます。しかし、それでも日弁連への懲戒請求を継続した場合には「日弁連の職権発動を促す申し出」として受け付けられ、担当理事によって予備的な調査が行われます。
  2. 日弁連綱紀委員会のよる調査が開始されると、調査期日が定めることとなっています。ただし、調査期日外で調査を行うことも許されています。

また、綱紀委員会は、調査等に必要がある場合には、対象弁護士、関係人などから説明や資料の提出を求めることができます。そのため、仮に調査期日であったとしても、対象弁護士からの事情聴取が予定されていない場合には、呼出しなどがあるとは限りません。反対に、対象弁護士は、防御権行使のため、証拠等を提出する権利が与えられているほか、申立てにより対象弁護士や関係人等の審尋を請求することができます。

⑷議決

議決の種類も、単位会綱紀委員会と同様です。

  1. 日弁連懲戒委員会に事案の審査を求めることを相当とする
  2. 日弁連懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする
  3. 対象弁護士の死亡等により終了

のいずれかの議決がなされます。

①の議決の場合には、事件は日弁連懲戒委員会に付されます。また、①の議決に対して、対象弁護士は不服申し立てを行うことはできません。

②の議決については、この議決に基づき日弁連自身が懲戒しない旨の議決をすることになりますので、不服申立てということはありません(日弁連の懲戒手続では、懲戒請求人は存在しません)。

また、懲戒請求人が存在しませんので、綱紀審査の申出もできません。

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