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【弁護士が解説】医師の懲戒処分とは?医業停止・免許取消しの要件と手続の流れを解説

2026-10-22
医療ミス

懲戒処分ができるのはどんな場合?

そもそも、どのような場合に懲戒処分ができるか
医師法7条1項は、次のように規定しています。

    医師法7条1項
    「医師が第四条各号のいずれかに該当し、又は医師としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生労働大臣は、次に掲げる処分をすることができる。
    一 戒告
    二 三年以内の医業の停止
    三 免許の取消し」

    つまり、医師に対する法定の行政処分は、大きく、

    戒告
    医業停止(3年以内)
    医師免許取消し

    の3種類です。

    ここで重要なのは、処分権者は厚生労働大臣だということです。したがって、例えば医療機関の院長や都道府県知事が医師免許そのものを懲戒するわけではありません。

    また、処分の根拠として特に重要なのが「医師としての品位を損するような行為」という文言です。これはかなり広い概念であり、診療上の問題だけでなく、医師としての職業倫理・社会的信用を害する行為なども対象になり得ます。

    処分の必要性を調査する段階

    いきなり医道審議会や厚生労働大臣による処分に進むわけではありません。

      医師法7条の3は、厚生労働大臣による調査権限を定めています。

      医師法7条の3第1項
      「厚生労働大臣は、医師について第七条第一項の規定による処分をすべきか否かを調査する必要があると認めるときは、当該事案に関係する者若しくは参考人から意見若しくは報告を徴し、診療録その他の物件の所有者に対し、当該物件の提出を命じ、又は当該職員をして当該事案に関係のある病院その他の場所に立ち入り、診療録その他の物件を検査させることができる。」

      したがって、厚生労働大臣は、例えば、

      関係者・参考人から事情や意見を聴く
      報告を求める
      診療録等の提出を命じる
      病院等への立入検査をする
      診療録その他の物件を検査する

      といった方法によって事実関係を調査できます。

      なお、同条3項は、

      「前項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」

      と規定しています。

      したがって、この立入検査は刑事事件の捜査そのものではなく、医師法上の行政処分を行うかどうかを判断するための行政調査という位置付けです。

      もっとも、これらの手続の大半は都道府県の担当部局によって行われ、厚生労働省が自ら調査を行うことはまれであると考えられます。

      医道審議会の意見を聴く

      調査の結果、処分が必要と判断される場合でも、厚生労働大臣が単独で直ちに処分を決定する仕組みにはなっていません。

        医師法7条3項は、

        医師法7条3項
        「厚生労働大臣は、前二項に規定する処分をするに当たつては、あらかじめ、医道審議会の意見を聴かなければならない。」

        と規定しています。

        ここでいう「前二項」とは、7条1項の懲戒処分と、7条2項の再免許を指します。

        したがって、基本的な流れは、

        事案の発生 → 厚生労働省・都道府県による調査 → 医道審議会の意見 → 厚生労働大臣による処分

        という構造になります。

        免許取消しの場合には「意見の聴取」が

        ただし、免許取消しの場合は「意見の聴取」がある
        ここが手続上かなり重要なポイントです。

          医師法7条4項は、免許取消しをしようとする場合について、本人に対する意見聴取の制度を設けています。

          医師法7条4項
          「厚生労働大臣は、第一項の規定による免許の取消処分をしようとするときは、都道府県知事に対し、当該処分に係る者に対する意見の聴取を行うことを求め、当該意見の聴取をもつて、厚生労働大臣による聴聞に代えることができる。」

          つまり、免許取消しの場合には、

          厚生労働大臣 → 都道府県知事に意見聴取を求める → 当該医師から意見を聴く

          という手続を採ることができます。

          そして7条5項は、この意見聴取について行政手続法の聴聞に関する規定を準用しています。

          したがって、免許取消しという最も重大な処分については、処分対象となる医師に事前に弁明・反論の機会を保障する仕組みが置かれている、と理解すると分かりやすいです。

          「医業停止」の場合も本人の弁明手続が問題になる

          注意が必要なのは、戒告・医業停止の場合と、免許取消しの場合では、医師法7条4項の手続が同じ形では適用されないことです。

            医師法7条は、免許取消しについて4項以下で詳細な意見聴取手続を規定しています。一方、医業停止については、医道審議会における弁明の聴取等の仕組みが10項の中に設けられています。

            処分決定後には「再教育研修」があり得る

            戒告または医業停止を受けた医師、再免許を受けようとする医師については、さらに医師法7条の2が問題になります。

              医師法7条の2第1項
              「厚生労働大臣は、前条第一項第一号若しくは第二号に掲げる処分を受けた医師又は同条第二項の規定により再免許を受けようとする者に対し、医師としての倫理の保持又は医師として具有すべき知識及び技能に関する研修として厚生労働省令で定めるもの(以下『再教育研修』という。)を受けるよう命ずることができる。」

              つまり、処分は単に「戒告して終わり」「一定期間医業停止して終わり」という場合だけではなく、再教育研修を受けるよう命じられる場合があるわけです。

              医師法施行規則7条では、再教育研修を、倫理研修・技術研修としています。

              【弁護士が解説】医師が交通事故を起こした場合の処分は?刑事・民事・医師免許への影響を解説

              2026-06-18
              医療ミス

              事例(フィクションです)

              Xは、A県内の病院に勤務する35歳の内科医です。

              夜勤明けに自家用車を運転中、前方不注意で横断歩道手前の自転車に接触しました。
              被害者は打撲で全治10日程度で、それほど重くありません。

              X医師はその場で救護・通報し、誠実に対応しました。

              今後、Xに対してどのような処分がなされるでしょうか。

              1 総論

              交通事故を起こすと、3つの問題が発生します。

              1つ目は刑事事件です。人身事故の場合、過失運転致傷に該当する可能性があります。
              これは犯罪の1種ですので、刑事事件として取り扱われます。

              2つ目は民事事件です。けがをした治療費や、慰謝料などの支払いです。
              また、民間企業に勤務している場合、懲戒処分を受ける可能性もありますが、これは労働事件と呼ばれ、民事事件の一種です。

              3つ目は行政事件です。運転免許の点数が引かれることや、医師の方の場合には医師免許の行政処分が考えられます。
              また、公務員の方などの場合には職場からの処分は行政処分です。

              それぞれどのようになるのかを見ていきます。

              2 刑事事件

              過失運転致傷事件で、飲酒や速度超過といった別の要素がつかないような事件の場合には、基本的には過失の内容とけがの重さの程度で処分が決められます。

              単なる前方不注視などであれば一般的な処分となりますが、スマートフォンを見ていたり、何かをしながらの運転の場合には処分が重くなる可能性があります。
              次に、けがの重さの程度ですが、全治10日であれば、不起訴処分となる可能性も十分あり、重くても略式罰金となる可能性が高い事案であると言えます。

              3 民事事件

              現在、ほとんどの方が自動車の任意保険に加入されており、対人対物無制限の保険に入られていると思われます。
              そのため、民事の賠償問題については保険会社が対応しますので、特に自分で何かをする必要はありません。
              ただ、事故を起こしてけがをさせている以上、謝罪などは保険会社任せにせず、自分で対応したほうが良いと思われます。

              4 行政事件

              運転免許の違反点数は、表に従って機械的に処理されます。過失の程度や割合に寄りますが、全治15日未満の軽症であれば3点か2点です。

              これに対し、医師免許に対する行政処分は、大がかりです。
              まず、都道府県の担当部局から、違反をした医師に対する事情聴取が行われます。
              そして、都道府県の担当部局が厚生労働省医道審議会に書類を上げ、医道審議会の意見に従い、厚生労働大臣が処分を行うという流れです。

              どのような事件に対してどのような処分を行うかについては、あらかじめ「医師・歯科医師に対する行政処分の考え方」という指針で決められています。
              交通事故に関しては、過失犯であることを踏まえ、基本的には戒告等と記載されていますが、けがが重くない場合などには処分がなされないこともあります。
              ただ、ひき逃げをした場合については、重い処分にすることが予告されていますので、医師が事故を起こした場合には速やかに通報する必要があります。

              以上のように、医師の方が交通事故を起こすと、様々な処分や手続きが待っています。
              どのように対応していいかわからない場合や、将来に不安がある場合には、一度弁護士にご相談ください。

              【弁護士が解説】医師が交通事故を起こしたらどうなる?~刑事処分・民事責任・医師免許への影響~

              2026-06-04
              医療ミス

              事例

              Xは、A県内の病院に勤務する35歳の内科医です。
              夜勤明けに自家用車を運転中、前方不注意で横断歩道手前の自転車に接触しました。被害者は打撲で全治10日程度で、それほど重くありません。X医師はその場で救護・通報し、誠実に対応しました。
              今後、Xに対してどのような処分がなされるでしょうか。
              ※事例はフィクションです

              1 総論

              交通事故を起こすと、3つの問題が発生します。

              1つ目は刑事事件です。
              人身事故の場合、過失運転致傷に該当する可能性があります。
              これは犯罪の1種ですので、刑事事件として取り扱われます。

              2つ目は民事事件です。
              けがをした治療費や、慰謝料などの支払いです。
              また、民間企業に勤務している場合、懲戒処分を受ける可能性もありますが、これは労働事件と呼ばれ、民事事件の一種です。

              3つ目は行政事件です。
              運転免許の点数が引かれることや、医師の方の場合には医師免許の行政処分が考えられます。
              また、公務員の方などの場合には職場からの処分は行政処分です。

              それぞれどのようになるのかを見ていきます。

              2 刑事事件

              過失運転致傷事件で、飲酒や速度超過といった別の要素がつかないような事件の場合には、基本的には過失の内容とけがの重さの程度で処分が決められます。

              単なる前方不注視などであれば一般的な処分となりますが、スマートフォンを見ていたり、何かをしながらの運転の場合には処分が重くなる可能性があります。

              次に、けがの重さの程度ですが、全治10日であれば、不起訴処分となる可能性も十分あり、重くても略式罰金となる可能性が高い事案であると言えます。

              3 民事事件

              現在、ほとんどの方が自動車の任意保険に加入されており、対人対物無制限の保険に入られていると思われます。
              そのため、民事の賠償問題については保険会社が対応しますので、特に自分で何かをする必要はありません。
              ただ、事故を起こしてけがをさせている以上、謝罪などは保険会社任せにせず、自分で対応したほうが良いと思われます。

              4 行政事件

              運転免許の違反点数は、表に従って機械的に処理されます。過失の程度や割合に寄りますが、全治15日未満の軽症であれば3点か2点です。

              これに対し、医師免許に対する行政処分は、大がかりです。
              まず、都道府県の担当部局から、違反をした医師に対する事情聴取が行われます。
              そして、都道府県の担当部局が厚生労働省医道審議会に書類を上げ、医道審議会の意見に従い、厚生労働大臣が処分を行うという流れです。

              どのような事件に対してどのような処分を行うかについては、あらかじめ「医師・歯科医師に対する行政処分の考え方」という指針で決められています。

              交通事故に関しては、過失犯であることを踏まえ、基本的には戒告等と記載されていますが、けがが重くない場合などには処分がなされないこともあります。
              ただ、ひき逃げをした場合については、重い処分にすることが予告されていますので、医師が事故を起こした場合には速やかに通報する必要があります。

              以上のように、医師の方が交通事故を起こすと、様々な処分や手続きが待っています。
              どのように対応していいかわからない場合や、将来に不安がある場合には、一度弁護士にご相談ください。

              【弁護士が解説】診療報酬の不正請求が発覚したら? 刑事責任と医師免許への行政処分を解説

              2026-05-07
              医療従事者 お金

              事例

              内科医Aは、実際には行っていない検査や処置を電子カルテ上で記録し、健康保険に対して診療報酬を請求していました。
              これを2年間継続し、合計で約800万円を不正に受け取っていたところ、保険組合の調査でA医師の行為が発覚し、診療報酬の不正請求問題へと発展しました。
              この場合、A医師にはどのような処分が科されるのでしょうか。
              (事例はフィクションです。)

              医師が犯罪に該当するような行為をした場合、もちろん犯罪ですから刑法上の責任を問われることになります。
              しかし、医師免許には欠格事由があり、犯罪行為などの一定の行為をしてしまうと、医師免許に対する行政処分が科されることとなっています。
              それでは、それぞれどのような処分となるのかを解説していきます。

              ① 刑法上の責任

              この場合、主に問題となるのは以下のような罪名です。

              詐欺罪(刑法246条)

                保険者(健康保険組合など)を欺いて診療報酬を受け取る行為は、典型的に詐欺罪に該当します。
                なお、直接担当者をだますのではなく、オンライン上で申請するような場合には、電子計算機等使用詐欺罪が成立する可能性があります。

                いずれの罪名であっても、10年以下の拘禁刑となっており、罰金刑もないなど重い罪に該当します。

                本事例では、継続的かつ高額(800万円)です。一般的に被害額が100万円を超えてくると実刑の可能性が出てきますので、本件は実刑判決の可能性も十分ある重大事案です。

                有印私文書偽造罪等(場合による)

                  診療録やレセプトを意図的に改ざん・作成した場合:
                  有印私文書偽造・同行使罪(刑法159条・161条)に該当します。
                  電子カルテの場合でも、電磁的記録不正作出の罪に該当する可能性があるため、いずれにしても犯罪が成立します。

                  このように、A医師の行為は、刑事上も相当重たい処分が予想されます。

                  ② 医師法上の処分(行政処分)

                  刑事処分とは別に、厚生労働大臣による行政処分が行われます。根拠は 医師法 です。

                  主な処分の種類(医師法7条)

                  戒告
                  一定期間の医業停止
                  免許取消し

                  本事例で想定される処分

                  不正請求が
                  ・長期間(2年)
                  ・高額(800万円)
                  ・故意性が強い
                  という事情から、

                  医業停止または免許取消しが検討されます。

                  特に詐欺罪で有罪判決(実刑・執行猶予問わず)が確定した場合は、
                  医道審議会の答申を経て厳しい行政処分(長期停止〜取消し)が予想されます。

                  実際、医師及び歯科医師の行政処分の考え方によれば
                  「診療報酬制度は、医療の提供の対価として受ける報酬であり、我が国の医療保険制度において重要な位置を占めており、これを適正に受領することは、医師、歯科医師に求められる職業倫理においても遵守しなければならない基本的なものである。
                  診療報酬不正請求は、非営利原則に基づいて提供されるべき医療について、医師、歯科医師としての地位を利用し社会保険制度を欺いて私腹を肥やす行為であることから、診療報酬の不正請求等により保険医等の登録の取消処分を受けた医師、歯科医師については、当該健康保険法に基づく行政処分とは別に医師法又は歯科医師法による行政処分を行うこととする。
                  当該不正行為は、医師、歯科医師に求められる職業倫理の基本を軽視し、国民の信頼を裏切り、国民の財産を不当に取得しようというものであり、我が国の国民皆保険制度の根本に抵触する重大な不正行為である。
                  したがって、その行政処分の程度は、診療報酬の不正請求により保険医の取消を受けた事案については、当該不正請求を行ったという事実に着目し、不正の額の多寡に関わらず、一定の処分とする。
                  ただし、特に悪質性の高い事案の場合には、それを考慮した処分の程度とする。
                  また、健康保険法等の検査を拒否して保険医の取消を受けた事案については、検査拒否という行為が、社会保険制度の下に医療を行う医師、歯科医師に求められる職業倫理から到底許されるべきでないことから、より重い処分を行うこととする。」
                  とされており、厳しい処分となることが必至です。

                  ③ 両者の関係(重要)

                  刑事処分と行政処分は別個に行われます。

                  刑事:裁判所
                  行政:厚生労働大臣(免許に関する処分)

                  となっています。これらは別個の手続ですから、たとえ刑事事件が不起訴処分となったとしても、
                  医師法上の処分を受ける可能性は残るという点は重要です。

                  ④ まとめ

                  この事例では:
                  刑法上:詐欺罪 → 拘禁刑(実刑の可能性あり)
                  医師法上:医業停止または免許取消し

                  医療制度の信頼を損なうため、極めて重い法的責任が課される行為です。

                  【弁護士が解説】医療ミスによる法的責任は?刑事・民事責任、医師免許への影響を解説

                  2026-03-26
                  医療ミス

                  事案(フィクション)

                  東京都内の総合病院で勤務する外科医Aは、胆石手術を担当しました。本来は患者Bの画像データを確認すべきところ、別の患者のデータを参照してしまい、
                  位置を誤認しました。その結果、胆管を損傷させ、Bは重篤な合併症を発症し、長期入院を余儀なくされました。

                  病院内の調査により、

                  画像確認を怠ったこと
                  ダブルチェック体制が機能していなかったこと

                  が判明しました。

                  この場合の法的責任を、①刑事責任、②民事責任、③医師免許への影響の順に説明します。

                  ① 刑事上の責任

                  医師の医療ミスが刑事事件となる場合、問題となる代表的な罪名は 業務上過失致死傷罪(刑法211条)です。

                  ● 業務上過失致傷罪

                  医師は「業務として医療行為を行う者」にあたります。
                  本件では、画像の取違えをしてしまい、患者の同一性確認という基本的な義務に違反しています。
                  その結果、患者に無用な傷害が生じています。

                  注意義務違反と傷害との間に因果関係があると言えますので、業務上過失致傷罪が成立する可能性が高いと言えます。
                  法定刑は5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金ですが、初犯であり、被害者に後遺症が残っていないこと、保険による賠償が見込まれることなどの事情がある場合には、不起訴や罰金で終了することも十分考えられますが、患者が死亡した場合は公判請求になる可能性が高いと思われます。

                  ② 民事上の責任

                  民事では主に「損害賠償責任」が問題になります。

                  (1)不法行為責任(民法709条)

                  医師に過失があり、患者に損害が生じた場合、医師は不法行為責任を負います。

                  重篤な後遺障害が残れば、数千万円規模の賠償になることもあります。
                  ただし、多くの医師は保険に入っていると思われますので、その保険により賠償金は賄われます。

                  (2)病院の責任(使用者責任)

                  A医師が病院の雇用医師であれば、病院(医療法人等)も 使用者責任(民法715条) を負います。

                  そのため、実務上は医師個人と病院の両方を訴えることが多くなっています。
                  なお、国公立の病院などの場合には、国家賠償法1条に基づく責任追及も考えられます。

                  ③ 医師免許への影響

                  医師免許に関する処分は、医師法に基づき、厚生労働大臣が行います。

                  (1)行政処分の種類

                  刑事有罪判決を受けた場合や、医師として品位を損なう場合などには、以下の処分があり得ます。

                  戒告
                  3年以内の医業停止
                  免許取消

                  の3種類が処分としてありますが、医療過誤についても、明らかな過失に基づく場合や、繰り返し行われた過失など、通常求められる注意が欠けている事案でも、重めの処分とするとされています(医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方について)。

                  (2)刑事責任と行政処分の関係

                  重要なのは:

                  刑事責任と行政処分は別個に判断される
                  刑事で不起訴でも行政処分があり得る

                  という点です。

                  【弁護士が解説】医師が診察中に患者に対する不同意わいせつ事件を起こしたらどうなるか?

                  2026-01-15

                  【弁護士が解説】医師が診察中に不同意わいせつ事件を起こしたらどうなるか?

                  医者 診察

                  架空事例:診察中に起きた不同意わいせつ事件

                  地方都市のクリニックで勤務する内科医A医師(45歳)は、診察のために来院した20代女性患者Bさんに対し、医学的必要性がないにもかかわらず、身体を触る行為を行いました。
                  Bさんは恐怖で抵抗できず、後日、警察に被害届を提出。捜査の結果、A医師は不同意わいせつ罪で起訴されました。

                  1.刑事責任:不同意わいせつ罪の刑罰

                  不同意わいせつ罪とは

                  不同意わいせつ罪は、2023年の刑法改正により新設された犯罪類型で、相手の同意がない状態でわいせつな行為を行うことを処罰対象としています。従来の「強制わいせつ罪」を見直し、被害者の意思をより重視する形となりました。

                  法定刑

                  不同意わいせつ罪の法定刑は以下のとおりです。

                  6か月以上10年以下の拘禁刑
                  (※拘禁刑は、従来の懲役刑・禁錮刑を一本化した刑罰類型)

                  罰金刑は規定されておらず、有罪となれば必ず身体拘束を伴う刑が科される可能性があります。

                  医師という立場が量刑に与える影響

                  医師は患者との間に強い信頼関係・権力関係があります。
                  そのため、
                  ・被害者が抵抗しにくい立場にあった
                  ・医療行為を装って犯行に及んだ
                  ・職業倫理に著しく反する
                  といった点が重く評価され、一般人よりも厳しい量刑(実刑判決)が言い渡される可能性が高いと考えられます。

                  2.医師免許への影響:行政処分の可能性

                  医師法による処分の根拠

                  医師免許については、医師法第7条に基づき、次のような場合に行政処分が行われます。

                  罰金以上の刑に処せられたとき
                  医師としての品位を損なう行為があったとき

                  不同意わいせつ罪は重い性犯罪であり、これに該当することはほぼ確実です。

                  想定される処分内容

                  行政処分には主に以下があります。

                  医師免許取消
                  一定期間の医業停止
                  (数年程度)

                  不同意わいせつ事件、とりわけ診察中の犯行である場合は、

                  患者の信頼を根本から裏切る行為
                  医療の安全・倫理を著しく損なう

                  と評価され、免許取消処分となる可能性が極めて高いと考えられます。

                  ※仮に医業停止にとどまった場合でも、処分歴は公表され、事実上医師としての社会的信用は大きく失われます。

                  3.刑事処分と行政処分は別に行われる

                  重要な点として、
                  刑事裁判:裁判所が判断
                  医師免許の処分:厚生労働大臣(医道審議会)が判断
                  というように、両者は別個に進行します。

                  たとえ刑事裁判で執行猶予が付いたとしても、
                  免許取消という重い行政処分が下されることは十分あり得ます。

                  4.まとめ:医師による不同意わいせつの重大性

                  架空事例から分かるとおり、医師が不同意わいせつ事件を起こした場合、

                  刑事罰:6か月以上10年以下の拘禁刑(実刑の可能性大)

                  行政処分:医師免許取消または長期の医業停止

                  社会的影響:職業生命の喪失、社会的信用の崩壊

                  という極めて深刻な結果を招きます。

                  医師には高度な専門性だけでなく、患者の尊厳を守る倫理観が強く求められており、それを踏みにじる行為は、法的にも社会的にも厳しく責任を問われるのです。

                  ※本記事は架空の事例に基づく一般的な法解説であり、個別事案についての法的助言ではありません。

                  医師が罪を犯した場合に、どのような処分がなされるか

                  2025-09-30

                  全体の制度枠組み・処分の選択肢

                  まず、前提となる法制度と処分類型、処分対象事由について整理します。

                  法制度・処分の根拠

                  • 医師法第7条に、医師に対して行政処分をすることができる旨が定められています。
                  • 行政処分を行うにあたっては、あらかじめ医道審議会の意見を聴くことが義務づけられており、実務上、審議会(医道分科会)が答申を行った上で厚生労働大臣が処分を決定する形をとっています。
                  • 行政処分の種類は、(軽い順に)戒告 → 医業停止(3年以内) → 免許取消 の3段階が定められています。
                  • 処分対象行為(処分事由)は、医師法および医師法の関連条項から次の5類型が想定されます:
                      1. 心身の障害
                      2. 麻薬・大麻・あへんなど中毒者であること
                      3. 罰金以上の刑を受けた者
                      4. 医事に関し犯罪又は不正の行為をした者
                      5. 医師としての品位を損なうような行為をした者
                  • 実務上、最も多く問題となるのは「罰金以上の刑の確定」と「医事に関わる犯罪・不正行為」です。
                  • 免許取消の後でも、ある条件下で再免許(再交付)申請が可能とされています(ただし許可は裁量的)

                  罪名・犯罪類型ごとの処分の傾向と留意点

                  以下に、代表的な犯罪類型を挙げ、それぞれにおいて過去の処分例や傾向・判断要素を示します。

                  犯罪類型刑事処分の例行政処分の傾向 / 判断要素注意点・事例
                  業務上過失致死傷(医療事故型)過失致死・過失傷害で罰金・科料・執行猶予付き判決比較的軽視されやすく、医業停止が選ばれることが多い。ただし被害の重大さ、過失の程度、再発防止措置などが重視される。50~100万円程度の罰金刑になるケースでも、医業停止や戒告が科される可能性があるとされる。
                  詐欺・背任・横領など経済犯罪詐欺罪、有印私文書偽造・同行使、業務上横領など医業停止または免許取消の可能性が高い。特に診療報酬の不正請求は医事に関する不正行為と位置づけられ、重く扱われる。過去に診療報酬不正請求で免許取消となったものがある。
                  薬物犯罪(覚せい剤・麻薬など)覚せい剤取締法違反、麻薬法違反など非常に重く処理される傾向。免許取消または長期医業停止が選ばれる可能性が高い。過去事例でも、医業停止2〜3年、取消処分例の報道あり。
                  性犯罪・わいせつ行為強制わいせつ、準強制わいせつ、性交同意年齢違反等医師としての品位・信頼性に直結するため、免許取消になる可能性が高い。ただし事実関係、刑罰の重さ、示談・反省の度合いなどが判断に影響する。
                  交通事故・道路交通法違反過失運転致死傷、危険運転、無免許運転など比較的軽い処分が選ばれることも多く、戒告や医業停止(数月~1年程度) という選択肢が多く採られる。
                  名誉毀損・侮辱・軽犯罪名誉毀損罪、侮辱罪、公然わいせつ等軽微な処分(戒告、短期間の医業停止)が選ばれる可能性がある。
                  無罪・不起訴・起訴猶予の場合刑罰が確定しない処分が回避される可能性が高い。ただし、刑事処分確定に至らなくても、医道審議会が「医事に関する不正・品位を損する行為」ありと判断すれば、戒告など軽度処分を科す可能性がある。

                  判断要素・処分を左右する事情

                  上記の表だけでは処分を予測するには不十分であり、実際には以下のような要素が処分の重軽を決めるうえで重要になります。

                  1. 刑事処分(量刑・刑の種類・猶予・執行猶予)
                     罰金のみか拘禁刑か、実刑か猶予付きか、といった点は重視される。行政処分は、刑事判決を基本的な判断基準とする傾向が強いといえます。
                  2. 罪責・悪質性・故意性/過失性
                     故意・反復性があるもの、被害が広範または重大なものは重く処断されやすい。
                  3. 被害の実情・被害者の存在・被害回復の有無
                     被害者がいる場合、示談成立・賠償の有無・被害回復措置などが情状として考慮される。
                  4. 反省・更生可能性
                     事後対応、謝罪、信頼回復の取り組み、再発防止策なども考慮され得る。
                  5. 職務関連性
                     医師としての権限・信頼を悪用した犯罪(たとえば診療場面での性的暴行、無免許医療行為、薬物投与など)は特に重く判断される。
                  6. 前科・再犯性
                     過去に行政処分歴があるか、再犯の可能性が高いか、なども考慮される。
                  7. 社会的影響・報道状況
                     社会的な波紋や被害者・市民からの批判・信頼への影響なども、処分判断に間接的に影響を与える可能性がある。

                  免許取消後の再免許(再交付)制度

                  免許取消になれば医師としての活動は停止しますが、必ずしも「永久に資格を失う」というわけではなく、一定条件の下で再免許申請が可能とされています。

                  • 医師法第7条2項および歯科医師法に、取消の理由となった事項に該当しなくなったとき、かつその他の事情が整えば再免許を与えることができる旨の規定がある。
                  • 再免許を許すかどうかは、処分庁(厚生労働大臣側)に広い裁量があるとされています。

                  まとめ・留意点

                  • 医師が犯罪をした場合、その処分は刑事手続とは別個の行政手続で判断され、医道審議会の答申を経て厚生労働大臣が処分を下すのが標準的な流れです。
                  • 罪名ごとの「決まった処分」は存在せず、刑事処分・罪状・被害状況・医師としての職務関連性・反省等の情状を総合的に勘案して判断されます。
                  • 性犯罪や薬物犯罪、診療報酬詐欺など、医師の社会的地位や医療制度そのものへの影響が大きい犯罪は、重い処分(免許取消)になる可能性が高い傾向があります。
                  • 不起訴・無罪・起訴猶予などで刑事処分が確定しない場合も、行政処分を回避できる可能性は高くなりますが、必ず予防できるわけではありません(特に「品位を損なう行為」の判断余地があります)。
                  • 免許取消後でも再免許申請の道は開かれており、一定の要件と待機期間(5年など)を満たせば、再交付が認められる可能性があります。

                  【弁護士が解説】医師が刑事事件を起こすとどうなるのか

                  2025-08-20

                   医師が刑事事件を起こしてしまった場合、その内容によっては医師免許の停止や取消しといった行政処分を受けることがあります。ここでは、法律的な根拠、処分の種類、具体的な事例を交えて解説します。


                  1. 医師免許に関する法律的枠組み

                  ■ 医師法第4条(欠格事由)

                   医師免許の交付を受けられない人について定めています。すでに免許を持っている医師でも、以下に該当すれば免許の取り消しの対象になります。

                  特に重要なのが以下の項目です:

                  • 罰金以上の刑に処せられた者(執行猶予を含む)で、医師として不適切と判断される場合。

                  2. 行政処分の種類

                  犯罪を犯した医師には、厚生労働省が以下のような行政処分を行います。

                  種類内容
                  免許取消医師としての資格を完全に失う
                  業務停止一定期間、診療行為を行えない(3年以内)
                  戒告注意であり、免許や業務には影響なし

                  3. 医師が犯罪を犯した場合の処分基準(概要)

                  厚生労働省は、犯罪の種類や内容、反省の有無などを考慮して処分を決定します。たとえば:

                  • 医療に関連する事件や、重大犯罪(傷害致死、不正手術など) → 免許取消の可能性が高い
                  • 性犯罪、児童ポルノ等の重大な倫理違反 → 免許取消または長期の業務停止
                  • 交通事故(酒気帯び・ひき逃げ) → 内容により戒告もありうるが、ひき逃げであれば業務停止
                  • 軽微な窃盗や暴行(示談成立済み) → 戒告、あるいは処分なしのケースも

                  4. 実際の事例

                   直近に行われた医道審議会では以下のような事例がありました。

                  • 免許取消・・・・・・・・・1件(強制わいせつ致傷1件)
                  • 医業停止2年・・・・・・・1件(麻薬及び向精神薬取締法違反1件)
                  • 医業停止1年6月・・・・・1件(過失運転致傷、道路交通法違反1件)
                  • 医業停止6月・・・・・・・2件(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反(兵庫県)1件、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反1件)
                  • 医業停止3月・・・・・・・2件(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反(兵庫県)1件、青森県迷惑行為等防止条例違反1件)
                  • 医業停止2月・・・・・・・1件(医師法違反1件)
                  • 戒告・・・・・・・・・・・4件(1.過失運転致傷2.過失運転致傷1件、過失運転致傷、道路交通法違反1件、傷害1件、不正競争防止法違反1件)

                  医師が処分されるプロセスについて

                  2025-07-22

                  医師が処分を受ける場合、どのような流れで処分を受けるのでしょうか。

                  流れ

                  1. 不適切行為の発覚

                  • 医師が患者に対して重大な過失や犯罪行為(例:診療ミス、わいせつ行為、詐欺、薬物犯罪など)を行った場合、行政機関や警察、医療機関、患者などから情報が寄せられます。
                  • 重大な場合には、刑事事件として起訴され、有罪判決が確定することもあります。

                  2. 厚生労働省による調査

                  厚生労働省は、医師の行為が医師法第4条(欠格事由)や第7条(免許の取消し・停止)に該当するか調査します。

                  しかし、実際には厚生労働省が調査をするわけではありません。都道府県の医務を主管する課が聞き取り等の調査を行い、文書を作成して厚生労働省にあげるという形をとっています。

                  3. 医道審議会への付議

                  • 調査結果をもとに、厚生労働大臣が医道審議会に諮問します。
                  • 医道審議会は、処分の対象となる医師の行為が医道に反するかどうか、そして処分の種類・期間(医業停止の有無・期間など)を審議します。

                  医道審議会の役割

                  医道審議会とは?

                  • 厚生労働省に設置された審議会で、医師や歯科医師の処分に関する意見を述べる機関です。
                  • 法律(医師法第7条)に基づき設置されており、構成員には医師、看護師、学識経験者などが含まれます。

                  主な役割

                  • 医師や歯科医師が行った不適切行為に対する行政処分(免許取消し、業務停止、戒告)の内容を審議・答申します。
                  • 処分が適切であるかを、公正・中立的な立場から検討します。
                  • 必要に応じて本人から意見を聴取する「弁明の機会」も設けられます(ただし、実際には都道府県担当職員に対して弁明を行います)

                  厚生労働大臣の処分決定と通知

                  • 医道審議会の答申を受け、厚生労働大臣が最終的な処分を決定します。
                  • 医業停止の場合、一定期間(例:3か月、6か月、1年など)、医療行為を行うことが禁止されます。

                  様々な懲戒について

                  2025-03-18

                  このサイトでは様々な「懲戒」を扱っていますが、その意味合いは文脈によって様々です。

                  そこで、ここでは「懲戒」という言葉について分類しておこうと思います。

                  ①民間企業における「懲戒」

                   民間企業で仕事をしているうえで、「懲戒処分」と受けることがあります。

                   これは企業の労働者への監督権の一環として、懲戒権として認められているものになります。

                   停職、減給などの様々な処分がありますが、これは労働問題の一環としてなされるものであり、争う場合には労働審判、民事訴訟などで争うことになります。

                  ②公務員の懲戒

                   公務員も労働者ですが、「懲戒処分」を受けることがあります。

                   これは地方公務員法、国家公務員法といった公務員に関係する法律により定められているものであり、行政処分の一環として行われるものです。これを争う場合には、人事院、公平委員会等の行政機関に不服申し立てを行った後、行政訴訟を提起することになります。

                  ③医師・看護師の懲戒

                   医師や看護師に対しても懲戒処分がなされることがあります。

                   その前に、医師や看護師でも、民間病院や公立病院に勤務している場合があります。この場合、医師や看護師も労働者ですから、①②で見たいような懲戒処分が別途発生する可能性があります。

                   ここで問題にする医師や看護師に対する「懲戒」は、それらの資格に対する処分です。

                   罰金以上の刑を受けた場合などには、医師や看護師は何らかの懲戒処分を受けることがあります。これは、厚生労働大臣が個人に対して科すものであり、業務停止などの処分を行うことになっています。

                   これらの処分は、厚生労働省の医道審議会で検討されるのですが、一時的には都道府県の担当部局が聴き取り等を行います。そのため、都道府県⇒医道審議会と上がって、最終的に厚生労働大臣による処分が行われることになります。

                   そのため、これらの処分を争う場合にも行政訴訟を提起することになります。

                  ④弁護士に対する懲戒

                   弁護士に対する懲戒処分は、これらの懲戒処分とは異なります。

                   まず、申立が認められています。何人でも弁護士に対して懲戒をするよう申し出ることができます。医師に対する懲戒をするように厚生労働大臣に申立てることはできませんので、これは大きな違いです。

                   次に、処分の第一次的な判断は各弁護士会及び日本弁護士連合会によってなされるというところにあります。たとえば、医師による処分は厚生労働大臣によってなされますが、これに対して不服の訴えを提起する場合には、地方裁判所に訴訟提起することになりますしかし、弁護士会の処分に不服がある場合には日本弁護士連合会に不服申立てをし、その処分にも不服がある場合には東京高等裁判所に訴えを提起することになっています。日弁連が第一審的な役割を果たすことになっています。

                   弁護士に対する懲戒処分は、いずれにしても資格に対するものになっています。また、官報に公告されることになっているので、必ず氏名などが公になります。公務員に対する処分も公表されていますが、氏名などまで公表されている例は多くなく、この点でも異なります。

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