【弁護士が解説】医師の懲戒処分とは?医業停止・免許取消しの要件と手続の流れを解説

医療ミス

懲戒処分ができるのはどんな場合?

そもそも、どのような場合に懲戒処分ができるか
医師法7条1項は、次のように規定しています。

    医師法7条1項
    「医師が第四条各号のいずれかに該当し、又は医師としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生労働大臣は、次に掲げる処分をすることができる。
    一 戒告
    二 三年以内の医業の停止
    三 免許の取消し」

    つまり、医師に対する法定の行政処分は、大きく、

    戒告
    医業停止(3年以内)
    医師免許取消し

    の3種類です。

    ここで重要なのは、処分権者は厚生労働大臣だということです。したがって、例えば医療機関の院長や都道府県知事が医師免許そのものを懲戒するわけではありません。

    また、処分の根拠として特に重要なのが「医師としての品位を損するような行為」という文言です。これはかなり広い概念であり、診療上の問題だけでなく、医師としての職業倫理・社会的信用を害する行為なども対象になり得ます。

    処分の必要性を調査する段階

    いきなり医道審議会や厚生労働大臣による処分に進むわけではありません。

      医師法7条の3は、厚生労働大臣による調査権限を定めています。

      医師法7条の3第1項
      「厚生労働大臣は、医師について第七条第一項の規定による処分をすべきか否かを調査する必要があると認めるときは、当該事案に関係する者若しくは参考人から意見若しくは報告を徴し、診療録その他の物件の所有者に対し、当該物件の提出を命じ、又は当該職員をして当該事案に関係のある病院その他の場所に立ち入り、診療録その他の物件を検査させることができる。」

      したがって、厚生労働大臣は、例えば、

      関係者・参考人から事情や意見を聴く
      報告を求める
      診療録等の提出を命じる
      病院等への立入検査をする
      診療録その他の物件を検査する

      といった方法によって事実関係を調査できます。

      なお、同条3項は、

      「前項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」

      と規定しています。

      したがって、この立入検査は刑事事件の捜査そのものではなく、医師法上の行政処分を行うかどうかを判断するための行政調査という位置付けです。

      もっとも、これらの手続の大半は都道府県の担当部局によって行われ、厚生労働省が自ら調査を行うことはまれであると考えられます。

      医道審議会の意見を聴く

      調査の結果、処分が必要と判断される場合でも、厚生労働大臣が単独で直ちに処分を決定する仕組みにはなっていません。

        医師法7条3項は、

        医師法7条3項
        「厚生労働大臣は、前二項に規定する処分をするに当たつては、あらかじめ、医道審議会の意見を聴かなければならない。」

        と規定しています。

        ここでいう「前二項」とは、7条1項の懲戒処分と、7条2項の再免許を指します。

        したがって、基本的な流れは、

        事案の発生 → 厚生労働省・都道府県による調査 → 医道審議会の意見 → 厚生労働大臣による処分

        という構造になります。

        免許取消しの場合には「意見の聴取」が

        ただし、免許取消しの場合は「意見の聴取」がある
        ここが手続上かなり重要なポイントです。

          医師法7条4項は、免許取消しをしようとする場合について、本人に対する意見聴取の制度を設けています。

          医師法7条4項
          「厚生労働大臣は、第一項の規定による免許の取消処分をしようとするときは、都道府県知事に対し、当該処分に係る者に対する意見の聴取を行うことを求め、当該意見の聴取をもつて、厚生労働大臣による聴聞に代えることができる。」

          つまり、免許取消しの場合には、

          厚生労働大臣 → 都道府県知事に意見聴取を求める → 当該医師から意見を聴く

          という手続を採ることができます。

          そして7条5項は、この意見聴取について行政手続法の聴聞に関する規定を準用しています。

          したがって、免許取消しという最も重大な処分については、処分対象となる医師に事前に弁明・反論の機会を保障する仕組みが置かれている、と理解すると分かりやすいです。

          「医業停止」の場合も本人の弁明手続が問題になる

          注意が必要なのは、戒告・医業停止の場合と、免許取消しの場合では、医師法7条4項の手続が同じ形では適用されないことです。

            医師法7条は、免許取消しについて4項以下で詳細な意見聴取手続を規定しています。一方、医業停止については、医道審議会における弁明の聴取等の仕組みが10項の中に設けられています。

            処分決定後には「再教育研修」があり得る

            戒告または医業停止を受けた医師、再免許を受けようとする医師については、さらに医師法7条の2が問題になります。

              医師法7条の2第1項
              「厚生労働大臣は、前条第一項第一号若しくは第二号に掲げる処分を受けた医師又は同条第二項の規定により再免許を受けようとする者に対し、医師としての倫理の保持又は医師として具有すべき知識及び技能に関する研修として厚生労働省令で定めるもの(以下『再教育研修』という。)を受けるよう命ずることができる。」

              つまり、処分は単に「戒告して終わり」「一定期間医業停止して終わり」という場合だけではなく、再教育研修を受けるよう命じられる場合があるわけです。

              医師法施行規則7条では、再教育研修を、倫理研修・技術研修としています。

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