弁護士による証人への不当な働きかけと懲戒処分

弁護士②

事例

窃盗事件で起訴されたAは犯行を否認していた。
裁判で開示された証拠によると、ある証人の供述調書がAにとって大きく不利であり、反対にその証拠さえ顕出されなければ無罪もあり得るというような事案であった。
このような状況であると判断したX弁護士は「この証人には来ないよう頼めば有利になる」とAに助言し、この助言に従ってAが証人に出廷を思いとどまるよう働きかけた結果、証人は実際に法廷に来なかった。

このようなX弁護士の助言に何か問題はないか。

解説

この事例では、弁護士が証人への不当な働きかけを依頼者に助言したことが問題となります。
刑事弁護において弁護士は依頼者の利益のために最善を尽くす義務を負いますが、その活動は法令と職業倫理の範囲内で行われなければなりません。
証人に対して出廷を断念させたり、証言内容に影響を及ぼすよう働きかけたりすることを助言する行為は、司法の公正を害するおそれがあり、その方法によっては証人威迫の罪などの適用も考えられる行為ですから、違法行為の唆しとなる可能性さえあり得ます。
そのため、このような証人の出頭を断念させるよう働きかけることを助言することは、たとえそれが証人威迫にならないような方法での対応を助言するものであったとしても、裁判の公正をゆがめるような行為に該当し、弁護士として品位を失う非行であると判断され、懲戒処分の対象となる可能性があります。

さらに、弁護士職務基本規程との関係では、**第5条(真実の尊重)**は、弁護士に対し真実を尊重して誠実に職務を遂行することを求めています。また、**第70条(証拠への不当な関与の禁止)**は、証拠を偽造・変造したり、虚偽の証拠を提出したり、証拠に不当に関与することを禁止する趣旨を明らかにしています。
証人に証言を差し控えさせるよう依頼者に助言する行為は、このような規律にも抵触する可能性があります。

したがって、本件のような助言は、依頼者の利益のためであっても許される弁護活動の範囲を逸脱しており、弁護士法及び弁護士職務基本規程上、重大な問題となる行為と評価されます。

違法行為を助言し、弁護士が懲戒を受けるケースには、いわゆる自力救済を弁護士が助言するような事例が多くなっています。
自力救済の内容や程度にもよるのですが、戒告処分を受けているようなケースも散見され、違法行為の助言に対しては厳しい処分が予想されます。
刑事裁判の証人の出廷に関するものとなると、単なる自力救済よりは重く見られることが予想されますから、業務停止の可能性も検討しながら対応していく必要があります。

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