【弁護士が解説】医師が交通事故を起こしたらどうなる?~刑事処分・民事責任・医師免許への影響~

医療ミス

事例

Xは、A県内の病院に勤務する35歳の内科医です。
夜勤明けに自家用車を運転中、前方不注意で横断歩道手前の自転車に接触しました。被害者は打撲で全治10日程度で、それほど重くありません。X医師はその場で救護・通報し、誠実に対応しました。
今後、Xに対してどのような処分がなされるでしょうか。
※事例はフィクションです

1 総論

交通事故を起こすと、3つの問題が発生します。

1つ目は刑事事件です。
人身事故の場合、過失運転致傷に該当する可能性があります。
これは犯罪の1種ですので、刑事事件として取り扱われます。

2つ目は民事事件です。
けがをした治療費や、慰謝料などの支払いです。
また、民間企業に勤務している場合、懲戒処分を受ける可能性もありますが、これは労働事件と呼ばれ、民事事件の一種です。

3つ目は行政事件です。
運転免許の点数が引かれることや、医師の方の場合には医師免許の行政処分が考えられます。
また、公務員の方などの場合には職場からの処分は行政処分です。

それぞれどのようになるのかを見ていきます。

2 刑事事件

過失運転致傷事件で、飲酒や速度超過といった別の要素がつかないような事件の場合には、基本的には過失の内容とけがの重さの程度で処分が決められます。

単なる前方不注視などであれば一般的な処分となりますが、スマートフォンを見ていたり、何かをしながらの運転の場合には処分が重くなる可能性があります。

次に、けがの重さの程度ですが、全治10日であれば、不起訴処分となる可能性も十分あり、重くても略式罰金となる可能性が高い事案であると言えます。

3 民事事件

現在、ほとんどの方が自動車の任意保険に加入されており、対人対物無制限の保険に入られていると思われます。
そのため、民事の賠償問題については保険会社が対応しますので、特に自分で何かをする必要はありません。
ただ、事故を起こしてけがをさせている以上、謝罪などは保険会社任せにせず、自分で対応したほうが良いと思われます。

4 行政事件

運転免許の違反点数は、表に従って機械的に処理されます。過失の程度や割合に寄りますが、全治15日未満の軽症であれば3点か2点です。

これに対し、医師免許に対する行政処分は、大がかりです。
まず、都道府県の担当部局から、違反をした医師に対する事情聴取が行われます。
そして、都道府県の担当部局が厚生労働省医道審議会に書類を上げ、医道審議会の意見に従い、厚生労働大臣が処分を行うという流れです。

どのような事件に対してどのような処分を行うかについては、あらかじめ「医師・歯科医師に対する行政処分の考え方」という指針で決められています。

交通事故に関しては、過失犯であることを踏まえ、基本的には戒告等と記載されていますが、けがが重くない場合などには処分がなされないこともあります。
ただ、ひき逃げをした場合については、重い処分にすることが予告されていますので、医師が事故を起こした場合には速やかに通報する必要があります。

以上のように、医師の方が交通事故を起こすと、様々な処分や手続きが待っています。
どのように対応していいかわからない場合や、将来に不安がある場合には、一度弁護士にご相談ください。

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