Author Archive

弁護士法人の懲戒①

2023-12-07

1 弁護士法人の懲戒

 弁護士法人は、弁護士同様弁護士会に所属をしており、弁護士会による監督を受ける存在です。
 そのため、所属弁護士とは別に弁護士法人自体についても懲戒を行うことが可能となっています(弁護士法30条の2以下)。
 もちろん、弁護士法人に所属する弁護士自体に懲戒処分を出すことも可能ですが、仮に弁護士法人自体に懲戒ができないとすれば、所属弁護士を入れ替えるだけで業務を継続できることになってしまい、組織的に行われた非違行為等に対応できなくなる可能性があります。ですので、弁護士法は弁護士だけではなく弁護士法人にも懲戒処分を行うことができるようにしています。

2 懲戒事由

 弁護士法人に対する懲戒事由は、弁護士に対するものと同じです。
⑴戒告
 これについては全く自然人たる弁護士と同じです。
⑵業務停止
 弁護士法人は、主たる法律事務所と従たる法律事務所を有している場合があります。
 この場合、従たる法律事務所を監督する弁護士会は、その従たる法律事務所のみを業務停止にすることが可能です。
 これに対し、主たる法律事務所を監督する弁護士会は、その弁護士法人自体に対する監督権限を有していますから、主たる法律事務所だけではなく、他の管轄区域にある従たる法律事務所の業務の停止も命ずることが可能です。
 弁護士法人が業務停止の処分を受けた場合でも、そこの所属する社員弁護士や使用人弁護士自体は、弁護士としての業務停止を受けたものではありませんから、個人として弁護士業務を行うことは可能です。
 この点については「被懲戒弁護士法人の業務停止期間中における業務規制等について弁護士会及び日本弁護士連合会の採るべき措置に関する基準」(平成13年12月20日理事会議決)があります。弁護士法人自体が業務停止となった場合、基準第2第1項16号ロによると「被懲戒弁護士法人の社員等は、被懲戒弁護士法人が第一号又は第二号の規定により解除すべき、又は解除した法律事件等を、自己の業務として引き継いで受任することができない。」とされていますので、個人として受けていた業務は継続できるものの、事務所として受任した事件については、これを個人に引き継いで受任することはできないとされています。

【弁護士が解説】被疑者・被告人から頻繁に接見要請があった場合、このすべてに応じなかったことは品位を失う非行として懲戒事由となるか

2023-12-05

【はじめに】

 弁護士の懲戒事例は、もちろん刑事事件でも起こる可能性があります。国選弁護の事件では、私選弁護の事件と違って被疑者被告人との人的なつながりももともと薄く、事前に法律相談をした上で依頼を受けているわけでもありませんし、被疑者被告人との信頼を築きにくい場合もあります。
 さらに、国選弁護人の解任事由は刑事訴訟法第38条の3による事由に限られているほか、それさえも簡単には認められません。
 一方、私選弁護にしても、国選弁護よりも高いお金を自分たちで支払っているということで、弁護活動への不満は募りやすくなってくる面があるでしょう
 今回は、国選弁護の接見について不満が出て懲戒請求に至った事例を想定して解説します。

【事例】

 A弁護士は、登録2年程度の弁護士であり、法律事務所に勤務しています。勤務している法律事務所は、個人の交通事故などの民事事件のほか、破産の申立なども扱っており、主に過去の依頼者などからの紹介とインターネット広告などを集客手段としています。代表者は、登録20年程度の弁護士Bです。
 あるとき、A弁護士は被疑者Cの被疑者国選弁護を受任しました。事件自体は認め事件であり、事実関係に関する争いは特にありませんでした。
 被疑者段階で、Cは頻繁に接見要請を出してきましたが、全ての要請に答えられたわけではなく、結局3日くらいに一度の頻度で接見に行っていました。A弁護士としては、全ての接見要請に応えられるわけではないことを説明しており、弁護活動中にCから不満を言われることはありませんでした。
 被告人国選では、被告人質問と証拠意見確認のために2回ほど接見に行き、打合せ自体は問題なくできました。
 判決も執行猶予付きの懲役判決となり、被告人は無事釈放されたのですが、接見が満足に行われなかったとして、A弁護士はCから懲戒請求をされました。
 接見に際してメモは取っていましたが、録音を取っていたわけではありませんでした。
(事例は、フィクションであり、実在の弁護士、依頼者、その他個人、会社、団体とは一切関係ありません。)

【対応方法】

 弁護士が被疑者被告人に十分な接見をしなかったということでの懲戒処分事例は存在しています。目立つのは被疑者国選段階から判決まで全く接見をしなかったような事例ですが、懲戒処分がされるかどうかは程度の問題と考えられるので、全く接見に行っていないわけではなくとも懲戒処分がなされる可能性はあります。
 関係すると思われる規定は以下です。

弁護士職務基本規程
(刑事弁護の心構え)
第四十六条 弁護士は、被疑者及び被告人の防御権が保障されていることにかんがみ、その権利及び利益を擁護するため、最善の弁護活動に努める。
(接見の確保と身体拘束からの解放)
第四十七条 弁護士は、身体の拘束を受けている被疑者及び被告人について、必要な接見の機会の確保及び身体拘束からの解放に努める。

弁護士法 
(懲戒事由及び懲戒権者)
第五十六条 第1項 弁護士及び弁護士法人は、この法律(弁護士・外国法事務弁護士共同法人の社員又は使用人である弁護士及び外国法事務弁護士法人の使用人である弁護士にあつては、この法律又は外国弁護士による法律事務の取扱い等に関する法律)又は所属弁護士会若しくは日本弁護士連合会の会則に違反し、所属弁護士会の秩序又は信用を害し、その他職務の内外を問わずその品位を失うべき非行があつたときは、懲戒を受ける。

 最善の弁護に努めていない、必要な接見の機会の確保が出来ていない、と判断されれば何らかの懲戒処分を受けることになります。
 事例のようなケースでは、実際の接見の頻度、接見要請についての説明内容、実際に弁護していた事案の内容、予想された裁判の進行についての説明内容を示していき、規程違反、弁護士法違反の認定がなされない様に対応していく必要があるでしょう。
 その他にも、接見中の細かい言動などについてC側から主張が出る可能性もあるので、出来る限り事前に対処していくと良いでしょう。

【最後に】

 弁護士が懲戒請求を申し立てられた場合、弁護士は代理人ではなく紛争の当事者となります。代理人として紛争にあたるのと、当事者として紛争にあたるのとでは気持ちもパフォーマンスも大きく変わってくると考えられます。代理人を入れることで、事実をしっかりと整理し、懲戒処分の回避や軽減につながる可能性が上がります。
 加えて、勤務弁護士の国選弁護についての懲戒処分であったとしても、事務所全体の評判に関わる可能性もあり、当該勤務弁護士について解雇・業務委託契約解除をしたとしても悪影響が払拭できない可能性があります。
 勤務弁護士が懲戒請求を受けている場合も含めて、懲戒請求手続について詳しく、懲戒請求に対する弁護活動経験が豊富な弁護士への相談を検討している先生方は、是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にお問い合わせください。

係争権利の譲り受けが問題となった事案

2023-11-30

1 事案の概要

 BはCとの間で、Cが実施する事業について、Bにとって必要な経費をCが負担し、Cがその経費をBに送金して支払う旨の契約を締結した。
 A弁護士は、Bから上記契約に基づく債権の回収を依頼され、Cに対して訴訟の提起を行うこととしたが、その前にBからその権利を譲り受けた、A弁護士がこのようなことをした理由は、Bが日本国内に登記した支店や営業所を持たない外国法人であったため、民事訴訟法上の訴訟手続の困難を回避するためであった。
 譲り受け後、A弁護士は自ら原告となりCに対して本案訴訟を行い、債権を保全するため仮差押えを行った。
(最決平成21年8月12日の事案)

2 判旨

 債権の管理又は回収の委託を受けた弁護士が,その手段として本案訴訟の提起や保全命令の申立てをするために当該債権を譲り受ける行為は,他人間の法的紛争に介入し,司法機関を利用して不当な利益を追求することを目的として行われたなど,公序良俗に反するような事情があれば格別,仮にこれが弁護士法28条に違反するものであったとしても,直ちにその私法上の効力が否定されるものではない(最高裁昭和46年(オ)第819号同49年11月7日第一小法廷判決・裁判集民事113号137頁参照)。そして,前記事実関係によれば,弁護士である抗告人は,本件債権の管理又は回収を行うための手段として本案訴訟の提起や本件申立てをするために本件債権を譲り受けたものであるが,原審の確定した事実のみをもって,本件債権の譲受けが公序良俗に反するということもできない。

3 解説

 原審は、「抗告人が本件債権を譲り受けた当時,本件負担金の支払を求める訴訟等は係属していなかったから,本件債権の譲受けが,弁護士法28条に違反する行為であるとはいえない。しかし,弁護士の品位の保持や職務の公正な執行を担保するために弁護士が係争権利を譲り受けることを禁止した同条の趣旨に照らせば,本件負担金の支払を求める訴訟等が係属していなかったとしても,本案訴訟の提起や保全命令の申立てをすることを目的としてされた弁護士による本件債権の譲受けは,特段の事情がない限り,その私法上の効力が否定されるものというべきであり,本件債権の譲受けは無効であって,抗告人が本件債権を有しているとはいえない。」という理由で効力を否定していましたが、最高裁はこれを覆し、弁護士法28条違反(ないしこれに類する事態)だけでは直ちに民法90条に反するものではない旨を判示し、高裁に事件を差し戻しました。
 なお、この最高裁決定には宮川裁判官の補足意見があり、その中ではこのような事態が民法90条に違反しないとしても、懲戒事由たる「品位を失うべき非行」には該当しうることが述べられています。

【弁護士が解説】外部へ郵便物を郵送する際、守秘義務違反とならないようにするためにはどのような点に注意すればよいか

2023-11-28

【共通設定】

 A弁護士は、窃盗罪で逮捕されたXの国選弁護人として選任され、留置先であるB警察署へ
接見に赴きました。
 面会したXから、自身の両親に連絡を取って欲しい旨を告げられましたが、Xは両親の連絡先を知らず、元々Xが暮らしていた住所しかわからない状況でした。
 そこで、A弁護士は、郵便を用いて両親へ連絡を取ることとしました。
 このとき

事例1

 A弁護士は、普通の官製はがきの通信面に「私は息子さんの国選弁護人となりました。息子さんの件でお話ししたいので、事務所までご連絡ください」と記載した。

事例2

 A弁護士は、茶封筒の中に、事例1と同じ内容を記載した手紙を同封した。そして、Xが指示する郵送先へ郵送したが、Xの実家は既に転居しており、実家には別の第三者が居住していた。そのため、郵便物は第三者によって開封された。

事例3

 A弁護士は、茶封筒の中に、事例1と同じ内容を記載した手紙を同封した。そして、Xが支持する郵送先に郵送し、そこは確かにXの実家であった。しかし、手紙はXの兄弟が受領し、郵便物は兄弟が開封した。


 これらの事例で、A弁護士の行動には問題がないか、検討していきたいと思います。

(事例は架空のものです)

【守秘義務】

 弁護士法第23条及び弁護士職務基本規程第23条では、秘密の保持が義務付けられています。
これは、信頼関係を基礎に置く弁護士の職務上、最も基本的な義務と考えられており、守秘義務違反は最も注意をしなければいけない点となります。
 ただ、弁護士の守秘義務には例外もあり、一番大きな例外が「本人の同意がある場合」と考えられます。なお、ここでの「本人」は、秘密の対象となる本人と考えられます。たとえば、依頼者の相手方の秘密については、依頼者及び相手方双方の同意があった場合のみ守秘義務が解除されると考えられます。
 今回の事例で、A弁護士はXから「両親に連絡を取って欲しい」と言われています。このようなやり取りがある以上はXが勾留されていることなどについては、両親に対しては守秘義務が解除されていると考えてよいように思われます。もっとも、事件内容をどこまで詳細に話してよいかなどについては、本人とよく相談の上考える必要があります。
 ただ、あくまでも両親に対して守秘義務が解除されているにすぎませんので、両親以外については守秘義務は解除されていないことになります。

【事例の検討】

⑴事例1

 事例1の問題点は官製はがきを用いた点です。はがきは封書よりも郵便料金が安くなる半面、はがきの通信面は誰からでも容易に閲覧が可能となってしまいます。実際に郵便配達を行う郵便職員から見えることはもちろんのこと、ポストなどに投函された後も場合によっては第三者から閲読可能な状況になる可能性が否定できません。
 郵便職員については、郵便法8条2項により秘密保持義務がありますのでここからさらに外部へ広がるという可能性は高いものではありませんが、それでも郵便職員に対して内容を知られること自体が問題であると言えます。
 今回、A弁護士は自身が「国選弁護人」に選任されたことを記載しています。この内容と、はがきに記載されている内容から考えれば、宛名の人物の子どもが何らかの刑事事件を起こしたことは容易に明らかになります。刑事事件を起こしたことは一般に知られたくないことでしょうから、守秘義務の対象となる秘密であるというべきです。
 そのため、このようは秘密に該当する事項をはがきに記載することは、守秘義務違反として何らかの処分を受ける可能性がある事項ということになります。

⑵事例2

 事例2の問題は、A弁護士が実家の住所の所在を確認せず郵送したところにあります。
 Xが両親の連絡先を知らないということは、実家と疎遠になっていることは予想できたようにも思われます。ただ、本人から言われた住所を逐一確認しなければ郵送できない(たとえば戸籍の附票や住民票を職務上請求しなければ郵送できないと考えること)とするのは、現実的ではないようにも思われます。
 ただ、A弁護士からすれば、正確性の担保がない住所である以上、郵送する際には慎重に行う方が望ましかったと考えられます。これに対し、Xから指示された住所が勾留状記載の住所であれば、捜査機関が特定した住所であるということになりますから、それに従って郵送することに合理性があると考えられます。
 A弁護士とすれば、たとえば簡易書留などの方法で送り、対面での受け取りが必要となる手段を講じるとか、最初の手紙の中身を「お伝えしたいことがありますのでご連絡ください」程度とし、事案の推測がなどができないようにしておくなどの対策が考えられたと思われます。

⑶事例3

 事例3の問題は、思った通りに郵送がなされたものの、郵送先で第三者が開封してしまったという点にあります。
 とはいえ、Xの兄弟が実家にいること自体は全く不自然ではないため、両親以外の親族が開封してしまう可能性は否定しきれません。また、上述のように簡易書留で郵送した場合であっても、兄弟であれば受けることができてしまいます。
 そのため、このような事態を回避するためには、郵便そのものを本人限定受取郵便という形で郵送することが考えられます。ただ、この方法で郵送した場合には、受け取りに手間がかかる場合があることもありますので、保管期限内容に郵便が受け取られない可能性があること、郵送費が高額となることが問題となります。
 ですので、1つの方法としては内容を具体的に書かず「ご連絡ください」とだけ記載して郵送することも考えられます。ただ、昨今弁護士の名をかたった特殊詐欺も横行していますので、このような手紙に不自然さを覚える方がおられる可能性も否定できません。

 このような事情もありますので、本人と十分協議を重ねたうえで、同居の親族への守秘義務解除について予め検討しておくことが必要であると思われます。そして、メリットデメリットを伝えたうえで、最終的には本人にどのような連絡先を取るか決定してもらうことが重要であろうと思われます。

懲戒委員会の独立性が問題となった事案

2023-11-23

1 事案の概要

 A弁護士は、B弁護士会に所属する弁護士であるが、B弁護士会ではA弁護士に対して1年間の業務停止とする処分が決定した。
 これに対してA弁護士が日弁連に審査請求したところ、日弁連は不服を入れ、処分を戒告に変更した。
 ただ、この戒告処分に対してA弁護士が東京高裁に対して取消訴訟を提起した。
 取消訴訟の中でA弁護士が主張したのは、B弁護士会懲戒委員会が開かれた際、そこに本件懲戒請求の請求者でもあるB弁護士会会長が出席し、意見を述べるなどしたことが、委員会の公正を疑わせるのではないかという点である。

(東京高判昭和42年8月7日の事案)

2 裁判所の判断

 懲戒は弁護士にとつて刑罰にも比すべき重大なことがらであつて、その審理、判断に特に公正が要求されることはいうまでもないところであり、法は、弁護士会が所属弁護士を懲戒するには必ず懲戒委員会の議決に基づくことを要求し(弁護士法五六条二項)、弁護士会長その他の理事者に裁量の余地を与えず、かつ、右懲戒委員会は、その委員に弁護士のほか裁判官、検察官および学識経験者を加えてこれを組織すべきものとし、その弁護士委員も弁護士会の総会の決議に基づくべきものとして(同法六九条、五二条三項)、つとめて理事者の影響から独立した機関としている。こうした法の趣旨にかんがみると、懲戒委員会における具体的事件の審査に、理事者が故なく出席して意見を述べることは、当該審査の公正を疑わしめるものとして、許されないものと解するのが相当であり、その点において、B弁護士会の懲戒委員会が本件事案についてした審査手続にはかしがあるものといわねばならない。
 しかし、その点については、原告の異議申立に基づき、被告の懲戒委員会においてさらに事案の実体につき適法公正な審査を遂げ、その議決に基づき、被告はB弁護士会のした業務停止一年の懲戒処分を重きに失するものとして取消し、懲戒として最も軽い戒告処分に変更しているのであるから、ほかに特段の事由がない限り、B弁護士会の懲戒委員会における右審査手続のかしは、これをもつて被告のした本件懲戒処分を取消すべき事由とするに足りないものと解する。

3 解説

 懲戒委員会は、弁護士の身分を剥奪する可能性のある重要な委員会であるため、この委員会は弁護士会と独立している必要があると考えられました。
 そのため、弁護士会の会長が懲戒委員会に出席して発言した場合、委員の意見が会長の意見に引っ張られる可能性も否定できず、このようなことを行うことは、懲戒委員会の独立性を害することと考えられました。
 実際、法律上は明文の規定はありませんが、弁護士会の役員、常議員が、懲戒委員会の委員を兼任することは不適切である旨の日弁連の通知等が存在し、これに基づいて委員は選任されるようになっています。

事件放置を行った場合にどのような懲戒処分を受ける可能性があるのかについて弁護士が解説

2023-11-17

【はじめに】

 弁護士職務基本規程第35条では、「弁護士は、事件を受任した時は、速やかに着手し、遅滞なく処理しなければならない。」とされ、依頼された事件については速やかに着手し遅滞なく処理することを義務としています。この義務の違反が一般には事件放置などと言われており、品位を害したとも評価されることで懲戒処分の対象となることがあります。
 それでは、依頼者から事件放置によって懲戒請求をされたとき、懲戒請求をほのめかされたときはどう対応すれば良いのでしょうか?
 架空の事例を基に解説していきます。

【事例】

 Aさんは、登録10年程度の弁護士であり、個人の交通事故などの民事事件のほか、破産の申立なども扱っており、主に過去の依頼者などからの紹介とインターネット広告などを集客手段としていた。
 あるとき、インターネットのポータルサイト経由で個人の依頼者Bから自己破産の案件を受任し、着手金等を含む弁護士費用のための預り金計50万円を受領したが、受任から1年6か月にわたって破産手続きの申立てをしなかった。
 依頼者Bは、事件放置であるとして、A弁護士の所属する単位会に懲戒請求を行った。
(事例は、フィクションであり、実在の弁護士、依頼者、その他個人、会社、団体とは一切関係ありません。)

【対応方法】

 まず、事件に「速やかに着手」しなかったとして事件放置といえるかどうかについては、事件を放置した期間、及び事件着手するための必要な準備がどのようなものであったかによると考えられます。
「解説 弁護士職務規程 第3版」によれば、「弁護士の着手に先行して、依頼者によって必要な調査等の事前準備が整わない場合は、事件の着手にあたる行為が遅延したとしても、直ちに本条に違反するとはいえない。」とあります。一律に何年着手しなかったからと言って懲戒処分の対象になるものではありません。
 ただし、同書では、「この場合は、依頼者に対し、その依頼者がなすべき調査について、できるだけ速やかに事前準備できるように適切な助言・指示をしておくべきである。そして、弁護士の側では、条件さえ整えば速やかに着手できる準備を整えておくべきである。」としています。
 本件についていえば、事件を受任したことを失念していたために速やかな着手が出来なかった場合などは懲戒処分を受ける可能性が非常に高いと言わざるを得ません。また、精神疾患の発症などによって着手できないような場合でも、精神疾患はあくまで弁護士側の事情であり、依頼者には関係ないことであるため、その理由だけでは懲戒処分を免れない可能性は高いと言えます。
 しかしながら、事件の事案からどのような事前準備が必要であり、実際にその事前準備がどのように進行していたのか、事前準備が素早く行えるようにするためにどういったアドバイスをしていたのか、弁護士の側では速やかに着手出来るようにどのような準備を行っていたのか説明が出来るようにすれば、懲戒処分の回避や軽減につながる可能性があります。
 なお、事件に着手できない理由について依頼者に虚偽の説明を行っていたような場合は、別途事件についての報告義務違反であるとして懲戒処分が重くなる方向になると考えられます。事件に着手できなかった理由について依頼者にどのような説明を行ったか、別途検討しておく必要もあります。

【最後に】

 弁護士が懲戒請求を申し立てられた場合、弁護士は代理人ではなく紛争の当事者となります。代理人として紛争にあたるのと、当事者として紛争にあたるのとでは気持ちもパフォーマンスも大きく変わってくると考えられます。代理人を入れることで、事実をしっかりと整理し、懲戒処分の回避や軽減につながる可能性が上がります。
 懲戒請求手続について詳しく、懲戒請求に対する弁護活動経験が豊富な弁護士への相談を検討している先生方は、是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にお問い合わせください。

非弁提携②

2023-11-16

1 弁護士法上の非弁提携の禁止

 弁護士法27条は、「弁護士は、第七十二条乃至第七十四条の規定に違反する者から事件の周旋を受け、又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。」とし非弁提携の禁止を定めています。
 弁護士職務基本規程11条の規定とは若干異なりますので、今回は弁護士法の規定を見ていきます。

2 事件の周旋

 ここでの事件の周旋の意味については、「弁護士法第七十二条にいわゆる訴訟事件の代理の周旋とは申込を受けて訴訟事件の当事者と訴訟代理人との間に介在し、両者間における委任関係成立のための便宜をはかり、其の成立を容易ならしめる行為を指称し、必ずしも委任関係成立の現場にあつて直接之に関与介入するの要はない」(名古屋高金沢支判昭和34年2月19日)とされています。
そのため、弁護士から仲介を依頼した場合も、反対に仲介業者(非弁)から依頼者をあっせんされた場合のいずれも含まれることになります。

3 自己名義の利用

 自己の名義を利用させるとは、「弁護士○○」という肩書付きの名称を利用させた場合だけではなく、「○○」という個人名のみの利用でも含まれるほか、「◇◇法律事務所」という事務所名を利用させた場合も含まれる。ただ、これは弁護士が自らの意思で利用させた場合に限られるので、勝手に弁護士名を利用されていたような場合には本条違反とはなりません。
 名義の利用については有償無償を問わず、利用をさせたこと自体が問題となります。

4 本条違反の行為

 弁護士が行った非弁提携行為については、当該弁護士を罰せば足りることから、他に問題が無ければその行為自体は有効であると考えられます。

5 示談代行

 交通事故を起こした場合に、保険会社が示談を代行しているように見えることがあります。
 ただ、保険会社は、保険契約により自ら被害者に対して賠償をする義務がありますので、他人の事務ではなく自己の事務として被害者との間で示談交渉を行っています。そのため、弁護士法72条の問題は生じません。
 これに対し、物損事故調査員(いわゆるアジャスター)が示談の代行を行う場合、物損事故調査員が保険会社の社員でなければ、弁護士法72条の問題が生じかねない事態となります。
 この点については日本損害保険協会と日弁連の間で折衝が行われ、あくまでも物損事故調査員は
(保険会社側の)弁護士の補助者ととして業務を行っているという立場が確認され、その細則が定められるに至りました。

懲戒委員会②

2023-11-09

1 懲戒委員会の委員

 懲戒委員会の委員の定数は4名以上であることは定められていますが、それ以上に何人選任するかについては会則で委ねることとされています(弁護士法66条)。
 また、懲戒委員会の委員は弁護士、裁判官、検察官及び学識経験者の中から弁護士会の会長が委嘱するとされています。このうち裁判官・検察官については出身母体である裁判所・検察庁の長の推薦に基づき、弁護士委員については弁護士会の総会で決定することが定められています(弁護士法66条の2第1、2項)。学識経験者については特に定めがありませんが、多くの場合は近隣の大学の法学部の教授などが選ばれているようです。
 委員の任期は2年とされており、懲戒委員会の職務を行うにあたっては、委員は法令により公務を従事する職員とみなされています(3、4項)。

2 予備委員

 懲戒委員会の委員は、その選任方法が法定されており、弁護委員については総会を開く必要があるなど大掛かりであることから、委員が欠けた場合にすぐに補充することができません。
 そのため、委員については予め予備委員を選任することとされています(弁護士法66条の4)。そして、たとえば裁判官出身の委員が除斥、忌避等で欠けることになった場合には、同じく裁判官出身の予備委員が代理してその職務を行うということなっています。

3 懲戒委員会の運営

 懲戒委員会の委員長は、委員の互選により決定することとされていますので(弁護士法第66条の3)、どの出身母体の委員が委員長になると決まっているわけではありません。
 先述の通り、委員の職務は公務とみなされることになっていますので、懲戒委員会の委員が作成する文書については公文書となりますし、超過委員会の委員の職務を妨害した場合には公務執行妨害罪が成立します。
 懲戒委員会の定足数について法律上の定めはありませんが、半数以上の出席が必要であると会則で定められている例があります。ただし、この半数の中に、法律上定められている裁判官・検察官・弁護士・学識経験者の4種類の委員が必ず存在しなければならないかについては見解が定まっていません。検察官委員が欠席であったとしても、裁判官委員や学識経験者委員が出席していれば、懲戒委員会の外部性は担保されているとも言えますし、外部委員が1名しかいない場合に、その1名が出席しなければ議事が滞るというのでは問題が多いですから、必ずしも4種類の委員すべてがいなければならないとまでは考えられていないようです。

懲戒処分を受けた者がした行為の効力

2023-11-02

1 業務停止以上の処分を受けた場合

 業務停止、退会命令、除名の処分を受けた場合、業務停止中はその期間弁護士の業務を行うことができなくなりますし、退会命令、除名の処分を受けた場合には効力発生後からは弁護士登録がなされていない状態となりますから、当然弁護士としての業務を行うことはできなくなります。
 そのため、このような弁護士としての業務が行えない状態になっている期間に弁護士としての業務を行った場合、これが弁護士法上違法なものであることは明らかだと思われますが、それ以外(たとえば民事訴訟や刑事訴訟など)の場面ではどのように扱うべきかが問題となります。

2 民事訴訟における行為の効力

 民事訴訟の代理人として、弁護士たる業務を行えない者がなした行為は、訴訟法上どのように解釈されるべきでしょうか。
 民事訴訟法上は、一定の例外は存在するものの、弁護士代理の原則が存在します(民事訴訟法54条1項)。これを厳格に解釈すると、弁護士ではない者が代理して行った訴訟行為は、一切無効なものであると考えることになります。
 しかし、これを厳密に考えすぎると、それまでに訴訟が進行し、相手方や裁判所が対応してきた訴訟行為も含めて一切無効という解釈になり、手続の安定性を害することになってしまいます。
 そのため、弁護士たる業務を行えない者を訴訟から排除しなければならないことには異論はないものの、これまでに行ってきた訴訟行為を有効と判断するかについては解釈が分かれています。
 この点について、最判昭和42年9月27日では、その代理人が弁護したる資格を喪失している状態(業務停止中)を看過してなされた訴訟行為について、直ちに無効になるものでない旨判示されました。この事例は、業務停止中の訴訟行為であったため、期間が経過すれば再び弁護士に戻る者ということになりますので、除名や退会命令の場合に同様の判断を行うことができるかどうかは判然としません。ただ、最高裁は、手続の安定性確保のため、上記のような結論を採用しました。

3 刑事訴訟

 憲法37条により、被告人には弁護人を依頼する権利が与えられています。このような弁護人の地位は相当公益性が高く、弁護士資格が当然の前提となるように思われます。
 そのため、たとえ業務停止中であっても、弁護士業務が行えない状態でなされた訴訟行為等については無効であると考えるべきですし、被告人の追認も同様であると思われます。
 なお、被疑者については弁護人選任権が憲法上付与されているわけではありませんが、憲法31条に基づき刑事訴訟法が制定されていると考えられますので、同様に理解してよいのではないかと思われます。

4 訴訟外の行為

 除名、退会命令を受けた元弁護士が弁護士同様有償で法律上の業務を行うことは、弁護士法72条に違反することになります。そして、この弁護士法72条は、公益性の高い規定であると考えられますので、弁護士法72条に違反してなされた行為については民法90条により無効となる可能性があります。
 反対に、業務停止中の弁護士が代理して行った訴訟外の行為については、あくまでも業務停止中には弁護士たる資格を喪失するわけではないので、そのような代理行為は懲戒事由とはなるものの、弁護士法72条に違反するものではありません。しかし、国民を非弁護士から保護するという弁護士法72条の規定の趣旨からすると、懲戒の処分により業務を停止された弁護士に代理行為を行わせるのは適当ではないと思われますので、このような場合にも無効となる可能性はあるように思われます。

非弁行為の私法上の効力が問題となった事案

2023-10-26

1 事案の概要

 AはBとの間で、債権の取り立て及び債権取り立てのための訴訟について弁護人を選任する等解決の一切を委任され、取り立てに成功した場合には訴訟費用を除いた金額の半額を受け取るという契約を締結した。
この委任契約は有効なものであるかどうか、弁護士法72条違反が私法契約に与える影響が問題となりました。
(最判昭和38年6月13日の事案)

2 判旨

 弁護士の資格のないAが右趣旨のような契約をなすことは弁護士法七二条本文前段同七七条に抵触するが故に民法九〇条に照しその効力を生ずるに由なきものといわなければならないとし、このような場合右契約をなすこと自体が前示弁護士法の各法条に抵触するものであつて、右は上告人が右のような契約をなすことを業とする場合に拘らないものであるとした原判決の判断は、当裁判所もこれを正当として是認する。

3 解説

 この判決は特に理由は述べていませんので、最高裁が是認した原審(福岡高判昭和37年10月17日)の判断を見てみます。
 「思うに弁護士法第七二条は、弁護士でない者は一般に法律家としての識見、能力に欠くるところがあるので、かような者が報酬を得る目的を以て法律事務の取扱をしたり、あるいはその周旋を業とすることを放任すれば、法律生活における国民の正当な利益を害する虞があり、また司法の健全な運用、訴訟の能率向上、及び人権の擁護等の要請上弁護士を公認した同法の趣旨に反するとの見地から右のような非弁護士の行為を禁止した公益的規定と解せられ、その違反行為に対しては同法第七七条により刑罰の制裁を以て臨んでいるのであるからこれに違反する事項を目的とする契約は、公の秩序に反する事項を内容とし民法第九〇条に照してその効力を生ずるに由なきものといわなければならない。」
 このように、弁護士法72条の趣旨から考え、国民の正当な利益を確保するため、本条違反の行為は民法90条により無効となるとされました。

« Older Entries Newer Entries »

keyboard_arrow_up

0120631881 問い合わせバナー 秘密厳守の無料相談