非弁行為の私法上の効力が問題となった事案

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1 事案の概要

 AはBとの間で、債権の取り立て及び債権取り立てのための訴訟について弁護人を選任する等解決の一切を委任され、取り立てに成功した場合には訴訟費用を除いた金額の半額を受け取るという契約を締結した。
この委任契約は有効なものであるかどうか、弁護士法72条違反が私法契約に与える影響が問題となりました。
(最判昭和38年6月13日の事案)

2 判旨

 弁護士の資格のないAが右趣旨のような契約をなすことは弁護士法七二条本文前段同七七条に抵触するが故に民法九〇条に照しその効力を生ずるに由なきものといわなければならないとし、このような場合右契約をなすこと自体が前示弁護士法の各法条に抵触するものであつて、右は上告人が右のような契約をなすことを業とする場合に拘らないものであるとした原判決の判断は、当裁判所もこれを正当として是認する。

3 解説

 この判決は特に理由は述べていませんので、最高裁が是認した原審(福岡高判昭和37年10月17日)の判断を見てみます。
 「思うに弁護士法第七二条は、弁護士でない者は一般に法律家としての識見、能力に欠くるところがあるので、かような者が報酬を得る目的を以て法律事務の取扱をしたり、あるいはその周旋を業とすることを放任すれば、法律生活における国民の正当な利益を害する虞があり、また司法の健全な運用、訴訟の能率向上、及び人権の擁護等の要請上弁護士を公認した同法の趣旨に反するとの見地から右のような非弁護士の行為を禁止した公益的規定と解せられ、その違反行為に対しては同法第七七条により刑罰の制裁を以て臨んでいるのであるからこれに違反する事項を目的とする契約は、公の秩序に反する事項を内容とし民法第九〇条に照してその効力を生ずるに由なきものといわなければならない。」
 このように、弁護士法72条の趣旨から考え、国民の正当な利益を確保するため、本条違反の行為は民法90条により無効となるとされました。

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