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利益相反が問題となった事例⑤

2023-08-24

1 事案の概要

 X弁護士は、A社と顧問契約を締結していた。
 A社の親会社であるB社が、C社及びその役員を相手方として損害賠償請求訴訟を
締結した。
 X弁護士はこのC社らの代理人として選任された。

 これに気が付いたA社が、Xに対して説明を要求したものの、Xが問題ないと回答したため、結局顧問契約は解除され、A社が懲戒請求を行った。
 懲戒請求自体は①単位会の綱紀委員会は審査不相当②日弁連綱紀委員会も棄却③日弁連綱紀審査会も懲戒審査相当の議決を行わなかったため、X弁護士は懲戒されなかった。

2 日弁連綱紀審査会の議決

(単位会、日弁連綱紀委員会の結論を是認したうえで)
 なお、Aの顧問弁護士であるXがB社を相手方とする事件を受任したことについては、B社によるA社の株式保有がほぼ100%であること、何よりもA社の社名にB社の略称が冠されていることからすると、両者は経済的社会的に一体とみなされる存在であり、問題があると言わざるを得ない。
 しかし、現行の基本規程28条2号が「相手方」とのみ規定され、「経済的社会的に一体の存在」をも含むものとされていない以上は、Xに懲戒処分を行うことは相当と認められない。日弁連綱紀委員会第2部会の議決書で指摘されている通り、今後同規定の改正が強く望まれるものである。

3 解説

 本件は、冒頭に記載した通り弁護士には懲戒話されませんでした。
 しかし、親会社のほとんど100%子会社である会社の顧問をしながら、親会社の相手方の訴訟を担当するということは、弁護士の公正性に疑念を生じさせるものと思われます。
 現時点で基本規程の改正等はなされていませんが、本来はこのような受任は回避するべきものと思われます。

利益相反が問題となった事例④

2023-07-27

1 事案の概要

 X弁護士は、生前Aと共に遺言の作成を行った。その遺言の内容は、Xが遺言執行者になることの他、Aの財産を全てBに相続させる旨が記載されていた。
 なお、BはXの息子の妻であり、息子はXより先に死亡していたため、AはBを養子としていた。
 また、Aにはほかの相続人のとして、Aの娘Cらの他、AとBの間の子ども(代襲相続人)が存在した。
 Aが死亡した後、その財産全てをBが相続することとなったが、これに対してCが遺留分減殺の請求を行った。
 Cが家庭裁判所に対し、Bを相手方として遺留分減殺請求調停を申し立てると、Bの代理人としてXが就任した。
 このXが訴訟行為を行うことについて、①遺言執行者という立場と②特定の相続人の代理人という立場が、利益相反とならないかが問題となった。
(東京高判平成15年4月24日の事例)

2 判旨

 遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の権利義務を有し(民法一〇一二条)、遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない(同一〇一三条)。すなわち、遺言執行者がある場合には、相続財産の管理処分権は遺言執行者にゆだねられ、遺言執行者は善良なる管理者の注意をもって、その事務を処理しなければならない。したがって、遺言執行者の上記のような地位・権限からすれば、遺言執行者は、特定の相続人ないし受遺者の立場に偏することなく、中立的立場でその任務を遂行することが期待されているのであり、遺言執行者が弁護士である場合に、当該相続財産を巡る相続人間の紛争について、特定の相続人の代理人となって訴訟活動をするようなことは、その任務の遂行の中立公正を疑わせるものであるから、厳に慎まなければならない。弁護士倫理二六条二号は、弁護士が職務を行い得ない事件として、「受任している事件と利害相反する事件」を掲げているが、弁護士である遺言執行者が、当該相続財産を巡る相続人間の紛争につき特定の相続人の代理人となることは、中立的立場であるべき遺言執行者の任務と相反するものであるから、受任している事件(遺言執行事務)と利害相反する事件を受任したものとして、上記規定に違反するといわなければならない。

3 解説

 遺言執行者をめぐる利益相反の問題については、多数の懲戒事例、裁判例があり、その判断については事例ごとの判断となります。
 上記のような判旨と異なり、遺言の内容によっては「遺言執行者と遺留分減殺請求調停事件の申立人である相続人との間に職務基本規程57条にいう利益相反の関係が存するかについては、具体的事案に即して実質的に判断すべきところ、本件公正証書遺言では、その内容からして遺言執行者に裁量の余地はなく、遺言執行者の職務に同規定57条が適用または類推適用されるとしても、本件では弁護士である遺言執行者と懲戒瀬給者を含む各相続人との間に実質的に見て利益相反の関係は認められない」とした例(日弁連懲戒委員会平成22年5月10日議決)もあり、遺言の実質的な内容についても判断が変わる旨が示唆されています。
 上記の東京高裁の事例では、平成22年議決のような視点なく、利益相反に該当する旨が認定されて今うので、このような危険性が存在することは常に意識をしておかなければなりません。

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