利益相反が問題となった事例⑤

1 事案の概要

 X弁護士は、A社と顧問契約を締結していた。
 A社の親会社であるB社が、C社及びその役員を相手方として損害賠償請求訴訟を
締結した。
 X弁護士はこのC社らの代理人として選任された。

 これに気が付いたA社が、Xに対して説明を要求したものの、Xが問題ないと回答したため、結局顧問契約は解除され、A社が懲戒請求を行った。
 懲戒請求自体は①単位会の綱紀委員会は審査不相当②日弁連綱紀委員会も棄却③日弁連綱紀審査会も懲戒審査相当の議決を行わなかったため、X弁護士は懲戒されなかった。

2 日弁連綱紀審査会の議決

(単位会、日弁連綱紀委員会の結論を是認したうえで)
 なお、Aの顧問弁護士であるXがB社を相手方とする事件を受任したことについては、B社によるA社の株式保有がほぼ100%であること、何よりもA社の社名にB社の略称が冠されていることからすると、両者は経済的社会的に一体とみなされる存在であり、問題があると言わざるを得ない。
 しかし、現行の基本規程28条2号が「相手方」とのみ規定され、「経済的社会的に一体の存在」をも含むものとされていない以上は、Xに懲戒処分を行うことは相当と認められない。日弁連綱紀委員会第2部会の議決書で指摘されている通り、今後同規定の改正が強く望まれるものである。

3 解説

 本件は、冒頭に記載した通り弁護士には懲戒話されませんでした。
 しかし、親会社のほとんど100%子会社である会社の顧問をしながら、親会社の相手方の訴訟を担当するということは、弁護士の公正性に疑念を生じさせるものと思われます。
 現時点で基本規程の改正等はなされていませんが、本来はこのような受任は回避するべきものと思われます。

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