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懲戒委員会④
1 懲戒委員会の審査手続
懲戒委員会は、弁護士会からの求めに応じて審査を開始します。そのため、独自に事件を立件することはできません。
また、弁護士会が懲戒委員会に審査を求めるのは、綱紀委員会が「懲戒委員会に付する」決定をした場合に限られますので、弁護士会の会長なり常議員会が、何らの決定もなくいきなり懲戒委員会に事案の審査を求めるということも許されません。
事案が適法に懲戒委員会に付されることになると、対象弁護士、懲戒請求者、日弁連(付されたのが弁護士法人で、他の所属会があればその会にも)に対し、懲戒委員会の審査に付された旨と事案の内容を通知することとなっています。
2 審査期日
懲戒委員会は、事案の審査を求められたときは、速やかに、審査の期日を定め、対象弁護士等にその旨を通知しなければならないこととされています(弁護士法第67条1項)。
そして、その審査期日には、対象弁護士は出頭し、陳述をすることができます(同条2項)。
3 審査方法
懲戒委員会は、審査に関し必要があるときは、対象弁護士等、懲戒請求者、関係人及び官公署その他に対して陳述、説明又は資料の提出を求めることができます(同条3項)。
懲戒委員会の求めに対しては、対象弁護士については会則により協力が義務付けられているものの、その他の者についてはこれを強制する手段などはなく、協力を求めるものということになります。また、対象弁護士がこの手続きに協力しなかったことについては、協力しなかったことを理由に懲戒事由の存在を推認するというような証明妨害の規定はありませんので、これを不利益に考慮することはできないものの、会則に定められた協力義務に違反するものであることとを理由に別途懲戒事由を構成する可能性があります。ただし、この場合でもいきなり懲戒委員会が懲戒事由に協力しなかったことを挙げることは許されないと考えるべきであり、懲戒委員会の委員長から弁護士会会長に対して請求の対象外の事実があった旨を報告し、別途会長等の機関が会立件を行うという手続きを経る必要があると考えられます。
4 刑事訴訟との関係
懲戒委員会は、同一の事由について刑事訴訟が係属する間は、懲戒の手続を中止することができるとされています(弁護士法第68条)。
刑事手続はあくまでも国家の刑罰権行使であり、懲戒手続は弁護士たる身分への処分ということになりますので、別々の手続きということにはなりますが、刑事裁判を経ることでより事案の真相が解明される可能性があるということでこのような規定が設けられたと考えられています。
ただ、法文から明らかなとおり、必ず中止しなければならないものではありませんので、懲戒委員会で事案ごとに判断して手続きを中止するかどうかを検討するということになります。
【弁護士が解説】相手方代理人が就任している事案で、相手方本人と直接交渉することは許されるのか

【事案】
X弁護士は、Aから自身が所有する賃貸マンションからの住人の退去交渉を依頼された。
このマンションの204号室に住むBは、以前から周りの住人とトラブルを起こし、騒音問題などが生じていたことから、Aとしては退去して欲しいと考えていた。
Aが直接Bのところに行って退去を求めると、Bはこれを拒絶し、その翌週にはY弁護士がBの代理人となった旨の通知がAのところに送られてきた。
このようなわけでAはX弁護士のところに依頼しに来たのだが、AはX弁護士に対して「明日の午前中であればBさんはいつも家にいる時間だから、先生が直接Bさんのところに行って、話をつけてくださいよ」と依頼した。
X弁護士はこれに応じてよいのだろうか?
【解説】
現状、Bは代理人としてY弁護士を選任しているようです。通常の法律相談であればAがこれを持参してきており、余程の事情がない限り真実Yが選任されていると考えることになると思われます。
このように、事件の相手方に代理人いる場合には、弁護士は原則直接事件の相手方と交渉することは許されません。
弁護士職務基本規程52条は「弁護士は、相手方に法令上資格を有する代理人が選任されたときは、正当な理由なく、その代理人の承諾を得ないで直接相手方と交渉してはならない。」としています。
Yは弁護士ですので、まさに法令上資格を有する代理人です。このような状況でY弁護士の承諾なくXが交渉を行うようなことは、この規程に違反することになります。
ですので、XはAからの依頼についてはこの規程を理由に断らなければなりません。
今回のようなケースでは、当然依頼を断るべき事案となるのですが、事件によっては相手方に代理人が就任していることに気が付かなかったという場合もあり得ると思われます。通常の相手方であれば、自分で代理人を選任していることを告げると思われますが、仮に途中で発覚したような場合には、その時点で交渉を止め、相手方から聞いた代理人に対して連絡を行うべきであると思われます。
反対に、代理人が選任されており、代理人に何度も連絡をしたにもかかわらず、代理人が一向に返答をしないような場合もあり得ると思われます。このような場合、代理人が返答をしないことは、相手方本人にとっても不利益となりかねないものですし、そもそも相手方代理人の行動自体が事件放置として懲戒の対象になりかねない行動となっています。このような場合には「正当な理由」があると評価され、直接の連絡、交渉が許される場合が生じると考えられています。
弁護士が懲戒請求を申し立てられた場合、弁護士は代理人ではなく紛争の当事者となります。代理人として紛争にあたるのと、当事者として紛争にあたるのとでは気持ちもパフォーマンスも大きく変わってくると考えられます。代理人を入れることで、事実をしっかりと整理し、懲戒処分の回避や軽減につながる可能性が上がります。
懲戒請求手続について詳しく、懲戒請求に対する弁護活動経験が豊富な弁護士への相談を検討している先生方は、是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にお問い合わせください。
弁護士法人の懲戒②
1 弁護士法人への懲戒
⑴退会命令
弁護士法57条2項3号によると、退会命令ができるのは、当該弁護士会の地域内に従たる法律事務所のみを有する弁護士法人に対するものに限るとされています。そのため、従たる法律事務所だけは退会させることが可能です。
これに対し、主たる法律事務所については、退会命令を出すことができません。これは、弁護士法人については自然人である弁護士と異なり、入会審査の手続きが存在せず、弁護士法人が設立されると、その登記した所在地に対応する弁護士会に入会することになると考えられていることから、退会命令を仮に出したとしても、弁護士法人の所在地を移転さえさせてしまえば別の弁護士会に入会してしまうため、退会命令の実効性がないとされているからです。
⑵除名
反対に、弁護士法人を除名できるのは、当該地域内に主たる法律事務所を有する弁護士会のみです。
弁護士法人に対する除名は、弁護士法人を一方的に解散させる効果を有します。そのため、弁護士法人自体は清算手続に入ることになりますが、所属する弁護士の弁護士としての身分には影響しません。
2 法律事務所の移転禁止等
弁護士法人は、特定の弁護士会の地域内にあるすべての法律事務所について業務停止の懲戒処分を受けたときは、その期間中、その地域において法律事務所を設け、移転することはできません。このようなことを許せば、新しく隣に事務所を設置することができてしまい、業務停止の潜脱となるからです。
また、退会命令を受けた場合には、3年間その地域内に法律事務所を設置することができなくなります。
先述の通り、弁護士法人には入会審査がなく、登記をすれば直ちにその弁護士会に登録した状態になりますので、退会命令後すぐ法律事務所を設置できてしまいます。このようなことが起きないよう、3年間は事務所を設置できないこととしています。
弁護士報酬について、不当に高額と評価されるのはどのような場合であるのか

【事例】
X弁護士は、Aから貸付金の返還を求める訴訟の依頼を受け、委任契約書を作成した。
Aが返還を求めたい金額が100万円だったとして
①着手金10万円、成功報酬は回収金額の16%
②着手金20万円、成功報酬は回収金額の32%
③着手金30万円、成功報酬は回収金額の48%
④着手金10万円、成功報酬は回収金額の3%+69万円
という報酬での契約をした場合(実費、日当等は考慮しない)、何か問題が生じるでしょうか。
【弁護士報酬の規律】
2003年に弁護士法が改正されるまでは、弁護士法上、弁護士会の会則として弁護士報酬等を定めなければならないとされていました。このとき定められていた会則がいわゆる「旧報酬規程」と呼ばれているものです。
①のケースで記載している金額は、この旧報酬規程に従った金額となります。経済的利益が300万円以下の事件の場合には、着手金はその8%とされているのですが、最低金額は10万円ということになっていたので、このケースでは着手金は10万円となります。
そして、成功報酬は経済的利益の16%とされていましたので、この点もそのままです。
旧報酬規程自体は撤廃され、現在の弁護士報酬は自由化されています。しかし、現状でも旧報酬規程のままの金額を用いている弁護士は相当数おられるのではないかと思われます。
現在、弁護士報酬に関する規律を定めているのは、弁護士職務基本規程24条となります。そこでは、「弁護士は、経済的利益、事案の難易、時間及び労力その他の事情に照らし、適正かつ妥当な弁護士報酬を提示しなければならない」と定めているのみで、具体的な金額は記載していません。
しかし、だからと言っていくらでも問題にならないというわけではなく、不当に高額な弁護士報酬を請求したような場合には、懲戒の対象となる可能性があります。
ひとまず、①は旧報酬規程に従った金額となります。基本的にはこの金額で問題になることは多くないようです。
しかし、示談交渉事件などで、あまりにも短期間にかつ非常に高額な金額での示談交渉がまとまった場合、かけた時間に対して弁護士報酬が非常に高額となってしまいます。このような場合、仮に旧報酬規程に従った金額であったとしても、不当に高額であるとの評価を受ける可能性があります。
②の金額は旧報酬規程の2倍の金額、③の金額は旧報酬規程の3倍の金額、④の規定は旧報酬規程の中で経済的利益が旧報酬規程の中で経済的利益が3000万円を超え3億円以下のときを参考にしたものです。
仮にX弁護士が完全に勝訴し、かつ金銭も回収できたと考えた場合、②の件は着手金20万円、成功報酬32万円で合計52万円となります。つまりAは勝利したとしてもほぼ半分が消えていくということになります。
同じように計算すると、③のケースでは78万円、④のケースでは82万円が弁護士費用(実費日当は除く)となります。
③④のケースが不当に高額と評価されることについてはおそらく争いがないと思われます。
②のケースについては、必ず不当の評価を受けるとまでは言えない可能性があります。事案の難易度や、事件処理の程度によってはやむを得ない場合も存在すると思われます。
ただ、②③④のケースに共通する問題として、果たして依頼者であるAに対して、契約締結時に正しい説明がなされたのかどうかという点です。③④のような場合には、仮に勝訴したとしても自分の手元にはほとんど残りません。今回は考慮しませんでしたが、実費日当を考慮するとマイナスになる危険性すら生じてきます。このような契約を締結するとは通常考え難い面がありますから、このような契約があること自体、弁護士が契約締結時に十分な説明をしなかった可能性を推認させてしまいます。
ですので、契約締結時には、最終的に終了したときにどれくらい手元に残るのかということについても、十分に説明をした上で依頼者には検討してもらう必要があります。
非弁提携が問題となった事案
1 事案の概要
元々の事案は、原告である大手貸金業者が、被告(個人)に対してキャッシングに基づく貸金契約の返済を求めた事件でした。
しかし、これに対して被告が原告に対して反訴提起しました。この反訴提起は、被告が、原告に対して不当利得返還請求権を有する別の人物からその債権を譲り受け、譲り受けた不当利得返還請求権を元に起こしたものでした。
この債権譲渡について、弁護士法72条に違反するものではないかということが問題となりました。
(東京地判平成17年3月15日の事案)
2 判旨
まず、弁護士法七三条は、「何人も、他人の権利を譲り受けて、訴訟、調停、和解その他の手段によって、その権利の実行をすることを業とすることができない。」と規定しているところ、被告が、本件債権譲渡を「業」としてしたことを認めることはできないから、本件債権譲渡が同条に直接違反するものとはいえない。
また、弁護士法二八条は、「弁護士は,係争権利を譲り受けることができない。」と規定しているところ、本件債権譲渡の法律主体は被告であるから、やはり、本件債権譲渡が同条に直接違反するものとはいえない。
また、弁護士法二五条の趣旨を受ける弁護士倫理二六条二号は、弁護士が「受任している事件と利害相反する事件」については職務を行ってはならないと規定しているところ、本件債権譲渡を前提とした反訴の提起自体が、被告及びApの債務整理受任事件と直接利害相反するものと認めるのは困難である。
さらに、弁護士法七二条本文は、「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件(中略)その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。」と規定しているところ、被告が本件債権譲渡を受けて反訴を提起したこと自体が同条によって直接禁止される行為であるということも困難である。
そうすると、本件債権譲渡に関する被告又は被告訴訟代理人らの行為について、これらの各規定の直接適用はできないものというほかない。
もっとも、弁護士法七三条の趣旨は、非弁護士が権利の譲渡を受けて事実上他人に代わって訴訟活動を行うことによって生ずる弊害を防止し、国民の法律生活に関する利益を保護しようとする点に、また、弁護士法二八条の趣旨は、弁護士が事件に介入して利益を上げることにより、その職務の構成、品位が害せられることを未然に防止しようとする点に、それぞれ存するものと解される。
また、弁護士倫理二六条二号の趣旨は、弁護士が、法律上及び事実上の利益・利害が相反する事件について職務を行うことを防止し、もって当事者の利益を保護するとともに、弁護士の品位を保持し、さらには、弁護士の職務の公正さと弁護士に対する信用を確保しようとする点に存するものと解される。
さらに、弁護士法七二条本文前段の趣旨は、弁護士業務の誠実適正な遂行の担保を通して当事者その他の関係人の利益を確保し、もって、法律秩序全般を維持し、確立させようとする点に存するものと解される。
ところで、前記に認定した本件紛争の経緯に、被告が本人尋問に出頭しないことにつき民事訴訟法二〇八条の規定の趣旨を併せると、本件債権譲渡は、Bら法律事務所に所属する弁護士主導のもとに斡旋されたものであることが明らかである。
そして、これら一連の行為を実質的に見れば、法律事務所の弁護士らが主体となり、報酬を得る目的で、業として、自らが債務整理を受任した依頼者のうち原告に対して不当利得返還請求権を有している不特定多数の者から原告に対して貸金債務を負担している不特定多数のものに同不当利得返還請求権を譲渡させ、これらの権利の実現を訴訟等の手段を用いて実行しているものということができる。
かかる行為は、前記の弁護士法七三条及び二八条の趣旨に抵触するものというべきであり、かつ、斡旋の際の説明内容や、対価の額及び支払態様、これらと債務整理事件の報酬との関係によっては、原告に対して不当利得返還請求権を有している不特定多数の依頼者の利益を損ねるという、前記の弁護士倫理二六条二号の趣旨に具体的に反するおそれが高い、看過し難い行為であるというべきである。
そうすると、かかる債権譲渡行為の私法上の効力を認めてこれを放任することは、不特定多数の関係人の利益を損ね、広く弁護士業務の誠実適正な遂行やこれに対する信頼を脅かし、ひいては法律秩序を害するおそれがあると認められるのである。
よって、かかる態様による債権譲渡は、公序良俗に反し無効であると解するのが相当である。
3 説明
なぜ弁護士事務所がこのようなことをしたのかということについて明らかにはされていませんが、おそらく訴訟手数料の集約や、手続の負担を軽減する(同じ相手方に対して多数の訴訟が係属するより、一本の訴訟内でまとめて解決したほうが負担が少ない)という目的ではないかと思われます。
このとき、弁護士自身が譲り受けるわけにはいかない(係争権利の譲り受けとなる)ため、依頼者の内の一部の者に権利を集約してしまうという手法がとられたものと思われます。
しかし、このような手法は当然法の潜脱ということになりますから、上記判旨の通り無効されました。
【弁護士が解説】弁護士が依頼者の違法行為を助長、ついにしてしまった場合にどのような処分となるのか

【事案】
X弁護士は、Aから、盗まれた自動車の取戻しを依頼された。
Aから聞くところによれば、ある日Aがコンビニに寄ろうと車を停めた際、何者かによって車が盗まれてしまい、Aが戻ると車はなくなっていたとのことであった。
Aは、どうやら敵対関係にあるBが怪しいと考えており、実際Bの会社の駐車場に行くとAの車が発見された。
しかし、AがBに対して車の返還を要請すると、Bは「いや、この車は第三者から買ったものだから、代金も払われないのに返してもらうことはできない」と述べ、返還を拒絶した。
この翌日Aが再びBの会社に赴くと、車は既になくなっていた。
このような経緯でX弁護士はAから依頼を受けたが、ある日Aが「先生、車を発見しました。鍵は私が持っています。またBに車を隠されてしまっては大変ですので、この車は私のところに引き上げてきてよいですよね」と連絡してきた。
このAからの連絡に対し、X弁護士が・・・
①「問題ありません。そのまま引き揚げてください。」と述べた場合
②「私からは何も言えません。ご自身で判断してください。」と述べた場合
③「それはダメです。」と述べた場合
にどのような問題が生じるか、検討していきましょう。
【解説】
仮に本当にAに所有権があり、法律上はAの返還請求権が認められるような状況であったとしても、現在はBが平穏に占有をしていると考えられる以上、Aの行為は窃盗罪に該当する行為となります(いわゆる自力救済)。
そうすると、Aの行おうとしている行為は、法律上違法なものであるとの評価を受けることになります。
①の場合
弁護士職務基本規程第14条では、「弁護士は、詐欺的取引、暴力その他違法若しくは不正な行為を助長し、又はこれらの行為を利用してはならない。」と定められています。
このような規定が設けられている趣旨は、社会正義を実現するべき弁護士が、違法行為等の助長や利用といった正義に反する行為をするべきではないと考えられているからです。
今回のケースのような自力救済が違法であることは、弁護士として刑法を学習した者であれば当然理解しているというべきだと考えられます。
そのため、Aの行為が違法であることは明白であり、これを問題ないとして承認する行為は、まさに違法行為を助長したと評価されることになりますし、場合によっては窃盗の共犯であると評価されかねません。
このような助言はするべきでないと言えるでしょう。
ただ、このような分かりやすい違法行為ばかりとは限りません。過失により助言をしてしまう可能性もありますが、このような場合には弁護士法56条1項の品位を失うべき非行になる可能性が生じてしまいます。
②の場合
次に②の場合です。この場合は積極的に引き揚げを肯定していません。ただし、③と異なって否定もしていないことになります。
しかし、自動車の取返しを委任されたX弁護士にとって、車が手元にあるということは、その後の交渉や訴訟を進める上で非常に有利になると考えられます。仮にX弁護士が、今後の自身の交渉等を有利にする目的で、Aの違法行為を放置したような場合には、X弁護士は違法行為を利用したということになりますので、やはり職務基本規程14条に違反することになります。
③の場合
違法行為の追認を求められたような場合には、これをしっかりと拒絶することが必要です。
そして、このような違法行為を求めるような依頼者とは、十分協議の上、委任契約の解除、代理人の辞任等の措置を考える必要があります。
依頼者が執拗に違法行為を求めるような場合には、弁護士に対する業務妨害として、各単位会の委員会、役員等にご相談されるのもよいと思われます。
①②の様に、違法行為の助長を故意にしてしまったような場合には、戒告以上の処分が下る可能性が高いと言えます。
弁護士が懲戒請求を申し立てられた場合、弁護士は代理人ではなく紛争の当事者となります。代理人として紛争にあたるのと、当事者として紛争にあたるのとでは気持ちもパフォーマンスも大きく変わってくると考えられます。代理人を入れることで、事実をしっかりと整理し、懲戒処分の回避や軽減につながる可能性が上がります。
懲戒請求手続について詳しく、懲戒請求に対する弁護活動経験が豊富な弁護士への相談を検討している先生方は、是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にお問い合わせください。
非弁提携②
1 弁護士職務基本規程上の非弁提携
弁護士職務基本規程第11条は、「弁護士は、弁護士法第72条から第74条までの規定に違反する者又はこれらの規定に違反すると疑うに足りる相当な理由のある者から依頼者の紹介を受け、これらの者を利用し、又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない」としています。
弁護士法第27条の規定と規定ぶりが異なりますので、異なる点に絞ってみていきたいと思います。
2 「疑うに足りる相当な理由のある者」
弁護士法では、弁護士付72条から74条までの規定に違反する者との提携が禁止されていました。
しかし、弁護士職務基本規程では、仮に違反していると認定できないような場合であっても、そのようなことが十分疑われるような場合でも、そのような者とは提携すべきでないとして、提携禁止の対象が拡大されています。
3 依頼者の紹介
依頼者の紹介を受けるという文言は、弁護士法27条の「事件の周旋」と同様に解釈してよいと思われます。
4 これらの者を利用し
「利用し」とは、非弁活動を行うものを用いて事件を集めたり事件処理をさせることを指すと考えられます。
たとえば、一定の法律上の悩みを抱えた人を支援する団体に対して弁護士が委託料等を支払い、その見返りに団体から相談者のあっせんを受けるというような場合であっても、本条に違反することになります。
【弁護士が解説】委任契約書を作成せず事件処理を行った場合、弁護士職務基本規程に違反するのはどのようなケースか

【事案】
A弁護士は、法律相談できたXから、お金を貸した相手が返さないという相談を受けた。
A弁護士はその中で、内容証明郵便を送付してお金を取り立ててみる方法や、支払督促、民事訴訟などの方法で返済を求めることができるという説明をしました。
Xはその場でA弁護士に委任をしましたが、この際A弁護士は委任契約書を作成しませんでした。
このとき、Xが委任した事項が
①内容証明郵便の文面を作成するのみで、文章の発出元はX自身とされている場合
②内容証明郵便を作成し、A弁護士がXの代理人という形で文頭に記載されている場合
③民事訴訟の委任を受けた場合
のいずれかであった場合、委任契約書を作成しなかったことが問題とならないか検討していきます。
【規程】
委任契約書の作成については、弁護士職務基本規程30条に定めがあります。
1 弁護士は、事件を受任するに当たり、弁護士報酬に関する事項を含む委任契約書を作成しなければならない。だだし、委任契約書を作成することに困難な事由があるときは、その事由が止んだ後、これを作成する。
2 前項の規定にかかわらず、受任する事件が、法律相談、簡易な書面の作成又は顧問契約その他継続的な契約に基づくものであるときその他合理的な理由があるときは、委任契約書の作成を要しない。
弁護士職務基本規程は平成16年11月に定められましたが、それより前の平成16年2月に制定された「弁護士の報酬に関する規程」5条2項、3項にも同様の定めがありました。
この規程によれば、原則は委任契約書を作成する必要があります。委任契約書を作成しなくてよいのは2項に定めがある例外的な場合に限られます。また、2項に定めのあるような例外的な場合であっても、委任契約書の作成が禁止されるわけではありませんから、法律相談のような明確な場合はさておき、後から委任契約書作成義務違反の指摘を受けないため、念のため作成しておくということも有効であろうと思います。
【事案の検討】
それではA弁護士が委任契約書を作成しなかったことが問題とならないか検討していきます。
①のように、内容証明郵便の文面だけ作成するような行為については、「簡易な書面の作成」となる可能性が高いと思われます。ただ、簡易な書面の作成について委任契約書の作成が不要とされているのは、その場で仕事が完了し、弁護士報酬の支払いも済んでしまうような場合であるからとされています
(解説 弁護士職務基本規程第3版 109頁)。
そうすると、たとえ①のような場合であっても、何度もやり取りを行い、文面案を作成していくような場合には、委任契約書が必要ないとまでは断言できなくなってきます。
②の場合は、もはや形式上AがXの代理をしていると見えますので、委任契約が不要となるような簡易なものではないと言えます。
条文上は「合理的な理由があるとき」は契約書の作成を要しないとされていますが、親族など深い関係にあるからなどというようなものは理由にならないと考えられます。
③の場合は当然委任契約書の作成が必要となります。ただ、「委任契約書を作成することに困難な事由があるとき」は、直ちに作成せず、事由が止んだ後に作成することが許されています。この「困難な事由」がいかなる場合に該当するのかという問題については、明確な解釈などは公表されていません。
たとえば、最初に法律相談に来た際には法的な問題点が見えてこず、依頼者としては何らかの解決に向けて弁護士に依頼はしたいけれど・・・という事態は生じ得ます。この場合、1回目の法律相談時には事件の全体像が見えない関係で、報酬等が定められず、契約書は作成できないという場合も考えられます。
このような場合に委任契約書を作成せず事件処理をすることが「困難な事由」に該当するかどうかについて確定的な判断があるわけではないですが、少なくとも法律相談料として毎回支払いを受けるとか、仮に対外的なことをしなければならないような場合にはその点に限って委任契約書を作成するなど、回避する方法は十分あると思われます。そのため、徒に契約書を作成せず、相談を継続していくようなことは危険であると考えられます。
いずれにしても、委任契約書作成の義務があるケースで、これを作成しなかった場合には弁護士職務基本規程違反となります。そして基本規程違反は懲戒事由となりますので、何らかの懲戒処分を受けることになります。これまで委任契約書不作成で処分を受けているケースは、報酬や説明義務の点などほかの問題と一緒に併せて処分を受けていることがほとんどです。そのため、委任契約書不作成のみでどのような処分を受けるかは一概に評価できませんが、弁護士としての基本的な義務に属するものであると考えられますので、戒告の処分は十分あり得るところです。
懲戒委員会③
1 除斥・忌避・回避
訴訟法上、裁判官には除斥、忌避の制度があり、そうでなくとも裁判官自らが回避することもあります。
これに対して、弁護士法上は、懲戒委員会の委員について除斥、忌避、会費の制度は定められていません。
しかし、懲戒委員会は、裁判と同様、弁護士の身分を剥奪する重要な委員会ですから、中立性がないような委員が評議、議決に加わるべきではありません。そのため、多くの単位会では会則等に除斥、忌避、回避に関する規定が置かれています。
なお、本来除斥されるべき委員が、そのまま評議、議決に加わった状態でなされた懲戒をする旨の議決については、会則に違反する状態でなされた議決ということができますので、無効と判断される可能性があります。
2 部会制度
懲戒委員会では、事案の審査を行うため、部会を設置することができます(弁護士法66条の5)。
このような部会の設置を認めるのは、毎回委員会を開くために多数の委員を参集することとなれば、多数の事案を処理しなければならない単位会での議事が困難になると考えられたからです。
そのため、少人数の部会を設置し、部会で審査した事案については部会の議決をもって委員会の議決とすることができるようにされています(弁護士法第6条の5第5項)。
ただし、懲戒委員会は、身内びいきにならないよう、外部の委員を選任することとされている関係で、この部会にも裁判官・検察官・弁護士・学識経験者の各種類の委員が少なくとも1名はいるようにしなければなりません。
【弁護士が解説】相手方から弁護活動を依頼された場合にはどのような点に注意しなければいけないか

【事案】
A弁護士は、BからCを相手方とする不法行為に基づく損害賠償請求(交通事故)事件を受任しました。
A弁護士はCに連絡を取り、示談交渉を行いました。
その後、今度はCからAに連絡があり、C自身の離婚事件をA弁護士に受けてもらえないかと言われました。
このとき
①まだBC間の損害賠償事件が終結していなかった場合
②Bとの間の委任契約は別の形(別件刑事事件等)で存続していたが、BC間の示談交渉は既に終結し、示談が締結されていて、Cに対する事件が終結していた場合
③既にBとの委任契約は終了していた場合
で何か対応方法に違いがあるのでしょうか。検討していきたいと思います。
【利益相反】
弁護士として一般の方と示談交渉等をしており、特にその示談交渉が円満に解決したような場合には、相手方当事者から事件の依頼の勧誘を受けることはそ う珍しいことではありません。
しかし、自身の依頼者と相手方当事者では、利害対立があることが通常であり、利益相反をしていることになります。
ですので、このような依頼を無制限に受けてしまうと、誰の味方であるのかという根本的な点に不信感を生じさせる危険性があります。
そのため、弁護士法及び弁護士職務基本規程では、「職務を行い得ない事件」を定めています。通常これを「利益相反」と呼んでおり、利益相反がある場合には受任をしてはならないことになっています。
まず、今回直接的に問題となりそうな弁護士法25条3号(職務基本規程27条3号も同じ)を見てみましょう。
弁護士法25条
弁護士は、次に掲げる事件については、その職務を行つてはならない。ただし、第三号及び第九号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。
三 受任している事件の相手方からの依頼による他の事件
弁護士法25条3号は、受任している事件の相手方からの依頼については、「他の事件」であっても原則職務を行うことを禁じています。ただ、他の利益相反規定と異なり、この3号については但書によって「受任している事件の依頼者が同意した場合」には受任が認められています。
A弁護士の例でいえば、①はまさにこの3号が問題になります。ですので、依頼者であるBの同意があれば受任できることとなります。
ただ②はより難しい状況です。BとCの間の事件は終了していますので、その意味ではCは「受任している事件の相手方」ではなくなっているとも言えます。しかし、Bとの委任契約は継続中ですから、Bは現在も依頼者であると言えます。仮にこの状況でA弁護士がCからの事件を受任した場合、Bは自己の事件(BC間の損害賠償事件)についてもCに有利に解決されたのではないかと相当の疑念を持つことが自然であると言えます。ですので、受任を差し控えるか、①と同様Bの了解を得ていた方が好ましいと考えられます。
③は、すでに委任契約が終了していますので、条文上はCは「受任している事件の相手方」には全く当たりません。そのため、自由に受任できるということになります。ただ、②で指摘した事情は当てはまりますので、Bとの委任契約終了から間がないのであれば、Bの同意を得ていた方が後のトラブル回避につながると考えられます。
【守秘義務】
しかし、このBの同意を得るためには、もう1つ考えなければならないことがあります。
Bから同意を得る以上、自身がCのどのような事件を受任するのかについて、Bに説明をする必要があります。これは、Cに対する守秘義務との関係で問題が生じます。
もちろん、Bに対しては、Cが同意をした範囲でしか話すことはできません。ただ、今回のような離婚事件の場合、Cの資力に影響が生じる可能性もあります。これは、B自身がCに対する債権者となる損害賠償請求事件を受けていた場合、BC間の交渉に影響を与えかねない事情となります。
Bからの同意はもちろん真意に基づく同意でなければなりませんので、錯誤等意思表示に瑕疵があるようなものであってはいけないと考えられます。そのため、Cから受任しようとする事件が、直接的にも間接的にもBC間の事件に影響を与えてしまうような場合で、その内容をBに説明できないような場合には、そもそも同意を取り付けることはできない(同意をしたとしても問題がある同意である)ということになりますから、最初から受任を差し控えるべきであると考えられます。
問題が生じてしまった後では、いかにこの事態を収拾するかがポイントとなります。(元)依頼者の方との間の話し合いが必要となった場合などには、第三者を介して話し合った方が冷静な話し合いが可能になります。
また、懲戒請求を受けてしまった場合には、これに対応する必要もあります。このような場合には、経験豊富なあいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。懲戒請求の流れや、弁護方針等についてお答えします。
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