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【弁護士が解説】外部へ郵便物を郵送する際、守秘義務違反とならないようにするためにはどのような点に注意すればよいか

2023-11-28

【共通設定】

 A弁護士は、窃盗罪で逮捕されたXの国選弁護人として選任され、留置先であるB警察署へ
接見に赴きました。
 面会したXから、自身の両親に連絡を取って欲しい旨を告げられましたが、Xは両親の連絡先を知らず、元々Xが暮らしていた住所しかわからない状況でした。
 そこで、A弁護士は、郵便を用いて両親へ連絡を取ることとしました。
 このとき

事例1

 A弁護士は、普通の官製はがきの通信面に「私は息子さんの国選弁護人となりました。息子さんの件でお話ししたいので、事務所までご連絡ください」と記載した。

事例2

 A弁護士は、茶封筒の中に、事例1と同じ内容を記載した手紙を同封した。そして、Xが指示する郵送先へ郵送したが、Xの実家は既に転居しており、実家には別の第三者が居住していた。そのため、郵便物は第三者によって開封された。

事例3

 A弁護士は、茶封筒の中に、事例1と同じ内容を記載した手紙を同封した。そして、Xが支持する郵送先に郵送し、そこは確かにXの実家であった。しかし、手紙はXの兄弟が受領し、郵便物は兄弟が開封した。


 これらの事例で、A弁護士の行動には問題がないか、検討していきたいと思います。

(事例は架空のものです)

【守秘義務】

 弁護士法第23条及び弁護士職務基本規程第23条では、秘密の保持が義務付けられています。
これは、信頼関係を基礎に置く弁護士の職務上、最も基本的な義務と考えられており、守秘義務違反は最も注意をしなければいけない点となります。
 ただ、弁護士の守秘義務には例外もあり、一番大きな例外が「本人の同意がある場合」と考えられます。なお、ここでの「本人」は、秘密の対象となる本人と考えられます。たとえば、依頼者の相手方の秘密については、依頼者及び相手方双方の同意があった場合のみ守秘義務が解除されると考えられます。
 今回の事例で、A弁護士はXから「両親に連絡を取って欲しい」と言われています。このようなやり取りがある以上はXが勾留されていることなどについては、両親に対しては守秘義務が解除されていると考えてよいように思われます。もっとも、事件内容をどこまで詳細に話してよいかなどについては、本人とよく相談の上考える必要があります。
 ただ、あくまでも両親に対して守秘義務が解除されているにすぎませんので、両親以外については守秘義務は解除されていないことになります。

【事例の検討】

⑴事例1

 事例1の問題点は官製はがきを用いた点です。はがきは封書よりも郵便料金が安くなる半面、はがきの通信面は誰からでも容易に閲覧が可能となってしまいます。実際に郵便配達を行う郵便職員から見えることはもちろんのこと、ポストなどに投函された後も場合によっては第三者から閲読可能な状況になる可能性が否定できません。
 郵便職員については、郵便法8条2項により秘密保持義務がありますのでここからさらに外部へ広がるという可能性は高いものではありませんが、それでも郵便職員に対して内容を知られること自体が問題であると言えます。
 今回、A弁護士は自身が「国選弁護人」に選任されたことを記載しています。この内容と、はがきに記載されている内容から考えれば、宛名の人物の子どもが何らかの刑事事件を起こしたことは容易に明らかになります。刑事事件を起こしたことは一般に知られたくないことでしょうから、守秘義務の対象となる秘密であるというべきです。
 そのため、このようは秘密に該当する事項をはがきに記載することは、守秘義務違反として何らかの処分を受ける可能性がある事項ということになります。

⑵事例2

 事例2の問題は、A弁護士が実家の住所の所在を確認せず郵送したところにあります。
 Xが両親の連絡先を知らないということは、実家と疎遠になっていることは予想できたようにも思われます。ただ、本人から言われた住所を逐一確認しなければ郵送できない(たとえば戸籍の附票や住民票を職務上請求しなければ郵送できないと考えること)とするのは、現実的ではないようにも思われます。
 ただ、A弁護士からすれば、正確性の担保がない住所である以上、郵送する際には慎重に行う方が望ましかったと考えられます。これに対し、Xから指示された住所が勾留状記載の住所であれば、捜査機関が特定した住所であるということになりますから、それに従って郵送することに合理性があると考えられます。
 A弁護士とすれば、たとえば簡易書留などの方法で送り、対面での受け取りが必要となる手段を講じるとか、最初の手紙の中身を「お伝えしたいことがありますのでご連絡ください」程度とし、事案の推測がなどができないようにしておくなどの対策が考えられたと思われます。

⑶事例3

 事例3の問題は、思った通りに郵送がなされたものの、郵送先で第三者が開封してしまったという点にあります。
 とはいえ、Xの兄弟が実家にいること自体は全く不自然ではないため、両親以外の親族が開封してしまう可能性は否定しきれません。また、上述のように簡易書留で郵送した場合であっても、兄弟であれば受けることができてしまいます。
 そのため、このような事態を回避するためには、郵便そのものを本人限定受取郵便という形で郵送することが考えられます。ただ、この方法で郵送した場合には、受け取りに手間がかかる場合があることもありますので、保管期限内容に郵便が受け取られない可能性があること、郵送費が高額となることが問題となります。
 ですので、1つの方法としては内容を具体的に書かず「ご連絡ください」とだけ記載して郵送することも考えられます。ただ、昨今弁護士の名をかたった特殊詐欺も横行していますので、このような手紙に不自然さを覚える方がおられる可能性も否定できません。

 このような事情もありますので、本人と十分協議を重ねたうえで、同居の親族への守秘義務解除について予め検討しておくことが必要であると思われます。そして、メリットデメリットを伝えたうえで、最終的には本人にどのような連絡先を取るか決定してもらうことが重要であろうと思われます。

利益相反が問題となった事例⑤

2023-08-24

1 事案の概要

 X弁護士は、A社と顧問契約を締結していた。
 A社の親会社であるB社が、C社及びその役員を相手方として損害賠償請求訴訟を
締結した。
 X弁護士はこのC社らの代理人として選任された。

 これに気が付いたA社が、Xに対して説明を要求したものの、Xが問題ないと回答したため、結局顧問契約は解除され、A社が懲戒請求を行った。
 懲戒請求自体は①単位会の綱紀委員会は審査不相当②日弁連綱紀委員会も棄却③日弁連綱紀審査会も懲戒審査相当の議決を行わなかったため、X弁護士は懲戒されなかった。

2 日弁連綱紀審査会の議決

(単位会、日弁連綱紀委員会の結論を是認したうえで)
 なお、Aの顧問弁護士であるXがB社を相手方とする事件を受任したことについては、B社によるA社の株式保有がほぼ100%であること、何よりもA社の社名にB社の略称が冠されていることからすると、両者は経済的社会的に一体とみなされる存在であり、問題があると言わざるを得ない。
 しかし、現行の基本規程28条2号が「相手方」とのみ規定され、「経済的社会的に一体の存在」をも含むものとされていない以上は、Xに懲戒処分を行うことは相当と認められない。日弁連綱紀委員会第2部会の議決書で指摘されている通り、今後同規定の改正が強く望まれるものである。

3 解説

 本件は、冒頭に記載した通り弁護士には懲戒話されませんでした。
 しかし、親会社のほとんど100%子会社である会社の顧問をしながら、親会社の相手方の訴訟を担当するということは、弁護士の公正性に疑念を生じさせるものと思われます。
 現時点で基本規程の改正等はなされていませんが、本来はこのような受任は回避するべきものと思われます。

利益相反が問題となった事例④

2023-07-27

1 事案の概要

 X弁護士は、生前Aと共に遺言の作成を行った。その遺言の内容は、Xが遺言執行者になることの他、Aの財産を全てBに相続させる旨が記載されていた。
 なお、BはXの息子の妻であり、息子はXより先に死亡していたため、AはBを養子としていた。
 また、Aにはほかの相続人のとして、Aの娘Cらの他、AとBの間の子ども(代襲相続人)が存在した。
 Aが死亡した後、その財産全てをBが相続することとなったが、これに対してCが遺留分減殺の請求を行った。
 Cが家庭裁判所に対し、Bを相手方として遺留分減殺請求調停を申し立てると、Bの代理人としてXが就任した。
 このXが訴訟行為を行うことについて、①遺言執行者という立場と②特定の相続人の代理人という立場が、利益相反とならないかが問題となった。
(東京高判平成15年4月24日の事例)

2 判旨

 遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の権利義務を有し(民法一〇一二条)、遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない(同一〇一三条)。すなわち、遺言執行者がある場合には、相続財産の管理処分権は遺言執行者にゆだねられ、遺言執行者は善良なる管理者の注意をもって、その事務を処理しなければならない。したがって、遺言執行者の上記のような地位・権限からすれば、遺言執行者は、特定の相続人ないし受遺者の立場に偏することなく、中立的立場でその任務を遂行することが期待されているのであり、遺言執行者が弁護士である場合に、当該相続財産を巡る相続人間の紛争について、特定の相続人の代理人となって訴訟活動をするようなことは、その任務の遂行の中立公正を疑わせるものであるから、厳に慎まなければならない。弁護士倫理二六条二号は、弁護士が職務を行い得ない事件として、「受任している事件と利害相反する事件」を掲げているが、弁護士である遺言執行者が、当該相続財産を巡る相続人間の紛争につき特定の相続人の代理人となることは、中立的立場であるべき遺言執行者の任務と相反するものであるから、受任している事件(遺言執行事務)と利害相反する事件を受任したものとして、上記規定に違反するといわなければならない。

3 解説

 遺言執行者をめぐる利益相反の問題については、多数の懲戒事例、裁判例があり、その判断については事例ごとの判断となります。
 上記のような判旨と異なり、遺言の内容によっては「遺言執行者と遺留分減殺請求調停事件の申立人である相続人との間に職務基本規程57条にいう利益相反の関係が存するかについては、具体的事案に即して実質的に判断すべきところ、本件公正証書遺言では、その内容からして遺言執行者に裁量の余地はなく、遺言執行者の職務に同規定57条が適用または類推適用されるとしても、本件では弁護士である遺言執行者と懲戒瀬給者を含む各相続人との間に実質的に見て利益相反の関係は認められない」とした例(日弁連懲戒委員会平成22年5月10日議決)もあり、遺言の実質的な内容についても判断が変わる旨が示唆されています。
 上記の東京高裁の事例では、平成22年議決のような視点なく、利益相反に該当する旨が認定されて今うので、このような危険性が存在することは常に意識をしておかなければなりません。

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