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1 守秘義務とは
弁護士法第23条は、「弁護士又は弁護士であつた者は、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負う。」と定めています。これがいわゆる弁護士の「守秘義務」の根拠となっています。
2 守秘義務の趣旨
弁護士が守秘義務を負うのは、弁護士が法律事務を行うにあたり、自由闊達な議論を行ったり、正確な見通しを伝えるためには、依頼者から秘密に当たるような事項についても話してもらう必要があるところ、依頼者にしてもこのような義務がなければ、秘密漏示の危険性を意識する必要があるようになってしまうことから、このような守秘義務が定められていると考えられます。
弁護士の守秘義務は、弁護士法第23条に定められていますから、守秘義務違反は法律違反として懲戒の事由となりますが、それだけでなく刑法の秘密漏示罪にも該当することになりますから、罰則の対象にもなります。
3 守秘義務を負う者
弁護士法上守秘義務を負うのは「弁護士又は弁護士であった者」です。そのため、仮に弁護士を辞めたとしても、守秘義務は継続して残ることになります。
また、弁護士の使用人たる事務員が秘密漏示をした場合には、弁護士法上の守秘義務違反になるわけではありませんが、不法行為責任を負う可能性はあります。このような場合でも、弁護士職務基本規程第19条において、弁護士は事務職員、司法修習生等に対し、秘密漏示をしないよう監督指導する義務
を定められていますので、この義務を怠ったということであれば、会則違反として懲戒を受ける可能性があります。
4 守秘義務の対象
守秘義務の対象となる事項は「職務上知り得た秘密」です。
職務上知り得た秘密とは、弁護士が職務を行う過程で知った秘密を指しており、職務を離れて知った秘密についてはこの対象ではありません。
ここで「秘密」とは、一般に知られていな事実であって、本人が知られたくない事実であるか、一般人から見て知られたくないような事実であると考えられます。
問題は秘密が「依頼者の秘密」に限定されるのかどうかです。弁護士職務基本規程第23条は「依頼者について職務上知り得た秘密」の漏示等を禁止していますので、これとの関係性が問題となります。
日弁連の綱紀委員会では、弁護士法第23条の秘密の対象を第三者の秘密まで広げて解釈しているようです。ただ、弁護士と第三者の間には信頼関係があるとは限らないですから、秘密を漏示する正当な理由があるかどうかという点では、第三者の秘密の方が漏示することが許される場合が広いと考えられると思われます。