Archive for the ‘懲戒事由(各論)’ Category

守秘義務違反⑵

2023-02-16

1 守秘義務の例外

 弁護士法第23条は守秘義務を定めていますが、その但書において「但し、法律に
別段の定めがある場合は、この限りでない」とされています。
 ここにいう「別段の定め」というのは、刑事訴訟法105条但書(「医師、歯科医師、助産師、看護師、弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、弁理士、公証人、宗教の職に在る者又はこれらの職に在つた者は、業務上委託を受けたため、保管し、又は所持する物で他人の秘密に関するものについては、押収を拒むことができる。但し、本人が承諾した場合、押収の拒絶が被告人のためのみにする権利の濫用と認められる場合(被告人が本人である場合を除く。)その他裁判所の規則で定める事由がある場合は、この限りでない。)などを指すと考えられています。
 ただし、実際にはこのような法律の規定がある場合だけではなく、「正当な理由」がある場合には守秘義務違反にならないと考えられています。実際、弁護士職務基本規程第23条でも「弁護士は、正当な理由なく、依頼者について職務上知り得た秘密を他に漏らし、又は利用してはならない」としています。

2 正当な理由

 この守秘義務違反が許される正当な理由とは、法律に記載のあるような別段の定めがある場合だけではなく、以下のような場合も許されると考えられています。
①依頼者の承諾があるとき
 守秘義務は依頼者を保護するものですから、本人の承諾があれば解除されると考えられます。
 ただ、この承諾は真意に基づくものである必要があり、全体的には慎重に検討する必要があります。
②自己防衛の必要があるとき
 依頼された事件に関連し、弁護士自身が訴訟の当事者になったり(元依頼者から訴えられるようなケース)、紛議調停・懲戒の手続きに付されたような場合には、秘密の開示が許されると考えています。
ただし、注意を要する点があります。弁護士が依頼者に対して弁護士報酬の支払いを求めて訴訟を提起するような場合に、自己防衛であるかどうかが問題となります。
 もちろん報酬請求権は重要なものですから、全く守秘義務が解除されないとは言えないと思われますが、弁護士自身が訴えられたようなケースと同様とまでは考えられず、この点についても慎重に検討するべきであります。
③公共の利益のために必要があるとき
 弁護士には、依頼者の利益を守るという義務のほかに、公共の利益を守る義務も課されていると考えられます。
 たとえば、依頼者が第三者に対する殺人を相当具体的に企てていることを知った場合に、警察への通報や、第三者への注意喚起が許されるのかという問題が生じます。
 一般的には、生命や身体に対する重大な危害を防止するために必要がある場合には守秘義務が解除されると考えられます。
 ですので、上記の例のような場合には、捜査機関への通報などが守秘義務違反になると考えられません。
 次に、財産に対する危害を防止するために守秘義務が解除されるかですが、これについては、上記の生命・身体に対する危害よりは一層慎重に考える必要があります。現時点で決まった解釈があるわけではありませんが、安易に秘密を漏示することは許されないと考えらます。

守秘義務⑴

2023-01-19

1 守秘義務とは

 弁護士法第23条は、「弁護士又は弁護士であつた者は、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負う。」と定めています。これがいわゆる弁護士の「守秘義務」の根拠となっています。

2 守秘義務の趣旨

 弁護士が守秘義務を負うのは、弁護士が法律事務を行うにあたり、自由闊達な議論を行ったり、正確な見通しを伝えるためには、依頼者から秘密に当たるような事項についても話してもらう必要があるところ、依頼者にしてもこのような義務がなければ、秘密漏示の危険性を意識する必要があるようになってしまうことから、このような守秘義務が定められていると考えられます。
 弁護士の守秘義務は、弁護士法第23条に定められていますから、守秘義務違反は法律違反として懲戒の事由となりますが、それだけでなく刑法の秘密漏示罪にも該当することになりますから、罰則の対象にもなります。

3 守秘義務を負う者

 弁護士法上守秘義務を負うのは「弁護士又は弁護士であった者」です。そのため、仮に弁護士を辞めたとしても、守秘義務は継続して残ることになります。
 また、弁護士の使用人たる事務員が秘密漏示をした場合には、弁護士法上の守秘義務違反になるわけではありませんが、不法行為責任を負う可能性はあります。このような場合でも、弁護士職務基本規程第19条において、弁護士は事務職員、司法修習生等に対し、秘密漏示をしないよう監督指導する義務
を定められていますので、この義務を怠ったということであれば、会則違反として懲戒を受ける可能性があります。

4 守秘義務の対象

 守秘義務の対象となる事項は「職務上知り得た秘密」です。
 職務上知り得た秘密とは、弁護士が職務を行う過程で知った秘密を指しており、職務を離れて知った秘密についてはこの対象ではありません。
 ここで「秘密」とは、一般に知られていな事実であって、本人が知られたくない事実であるか、一般人から見て知られたくないような事実であると考えられます。
 問題は秘密が「依頼者の秘密」に限定されるのかどうかです。弁護士職務基本規程第23条は「依頼者について職務上知り得た秘密」の漏示等を禁止していますので、これとの関係性が問題となります。
 日弁連の綱紀委員会では、弁護士法第23条の秘密の対象を第三者の秘密まで広げて解釈しているようです。ただ、弁護士と第三者の間には信頼関係があるとは限らないですから、秘密を漏示する正当な理由があるかどうかという点では、第三者の秘密の方が漏示することが許される場合が広いと考えられると思われます。

弁護士法第20条違反⑵

2022-12-15

1 二重事務所の例外?

 「弁護士は、いかなる名義をもつてしても、2箇以上の法律事務所を設けることができない」とされています。これが前回ご説明した二重事務所の禁止問題です。
 しかし、弁護士法第20条3項は但書で「但し、他の弁護士の法律事務所において執務することを妨げない」と記載しています。これだけ見ると、この但書き記載は二重事務所の禁止の例外にもあたるようにも見えます。

2 弁護士の執務場所

 弁護士の執務場所は、特に決まりがあるわけではありません。通常は事務所内で執務を行うことが多いと思われますが、裁判所で執務をすることもあるでしょうし、役所などで執務を行うこともあると思われます。
 その意味では、弁護士の執務場所は、弁護士がいるところということになります。

3 弁護士法第20条3項但書の意味

 そうすると、この但書きはどのように解釈するべきなのでしょうか。
 仮に弁護士が、他の弁護士の事務所に行って執務を行う場合(例えば、弁護団事件の打ち合わせなど)を想定した場合、その瞬間を見れば、弁護士(これは赴いた方の弁護士です)がほかの弁護士事務所を執務場所とし、それとは別に自身が開設している事務所が存在しているように見え、二重事務所のように見えなくもないという状況が生じています。
 しかし、二重事務所が禁止されているのは、弁護士が不在の事務所が生じることで非弁護士による非弁活動が跋扈することを防止するためですから、上記のような場合を禁止するものではありません。
 むしろ、弁護士がほかの弁護士の事務所に赴き、共同して作業を行うことは自然なことですから、このよう場合が禁止されるということの方が不自然であるといえます。
 そのため、弁護士法第20条3項は、あくまでも当たり前のことを規定しただけであって、二重事務所の禁止の例外を設けたようなものではないということになります。
 もっとも、赴く方の弁護士が、専ら他の弁護士の事務所で執務を行い、執務場所の本拠となっているような場合や、他の弁護士の事務所に自身の名前を掲げているような場合には、もはや本拠は他の弁護士の事務所であるとしか言えないでしょうから、二重事務所の禁止に該当するということになります。
 

弁護士法第20条違反(1)

2022-11-17

1 弁護士法第20条

 弁護士法第20条は、法律事務所の名称、法律事務所の設置場所、二重事務所の禁止を定めています。

2 名称について

 まず、1項は「弁護士の事務所は、法律事務所と称する」としています。司法書士事務所などが「法務事務所」などの名称を付与している場合がありますが、弁護士法第74条により、弁護士又は弁護士法人以外の者が「法律事務所」の名称を用いることはできません。
 反対に、弁護士であれば、その事務所に必ず「法律事務所」とつけなければならないかという問題については、消極的に理解されています。
 実際、法律事務所等の名称等に関する規程第3条では「弁護士は、その法律事務所に名称を付するときは、事務所名称中に「法律事務所」の文字を用いなければならない」としており、「名称を付するとき」だけ「法律事務所」とつけなければならないこととされています。そのため、特に事務所名を付さない場合などは、「法律事務所」を標榜する必要はないということになります。

3 法律事務所の設置場所

 2項は、「法律事務所は、その弁護士の所属弁護士会の地域内に設けなければならない」としています。
 弁護士は、各単位会に所属することが義務付けられていますが、その単位会による監督等を実効的なものにするため、事務所が単位会の地域内に所属する必要がある旨が定められています。
 もし他の地域に法律事務所を移転する場合には、併せて登録換えを行う必要があります。
 そのため、所属弁護士会の地域の外に事務所を設ける場合は当然本項に違反します(大阪弁護士会所属の弁護士が、兵庫県内にのみ事務所を設けた場合)。
 また、たとえば京都弁護士会に所属する弁護士が、事務所を設けずに滋賀県内の自宅で執務をするような場合であっても、本項に違反することとなります。このような場合であっても、所属弁護士会による監督が困難となることに変わりはないと考えられるからです。
 このような場合以外にも、所属弁護士会内に事務所を設けているものの、主たる執務が地域外の別の場所で行われているような場合には、本条3項に違反するだけでなく、本項にも違反すると考えられています。
 なお、仮に本項に違反する行為があったとしても、事件の受任や訴訟行為自体は有効であるとされています。

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