弁護士法第20条違反⑵

1 二重事務所の例外?

 「弁護士は、いかなる名義をもつてしても、2箇以上の法律事務所を設けることができない」とされています。これが前回ご説明した二重事務所の禁止問題です。
 しかし、弁護士法第20条3項は但書で「但し、他の弁護士の法律事務所において執務することを妨げない」と記載しています。これだけ見ると、この但書き記載は二重事務所の禁止の例外にもあたるようにも見えます。

2 弁護士の執務場所

 弁護士の執務場所は、特に決まりがあるわけではありません。通常は事務所内で執務を行うことが多いと思われますが、裁判所で執務をすることもあるでしょうし、役所などで執務を行うこともあると思われます。
 その意味では、弁護士の執務場所は、弁護士がいるところということになります。

3 弁護士法第20条3項但書の意味

 そうすると、この但書きはどのように解釈するべきなのでしょうか。
 仮に弁護士が、他の弁護士の事務所に行って執務を行う場合(例えば、弁護団事件の打ち合わせなど)を想定した場合、その瞬間を見れば、弁護士(これは赴いた方の弁護士です)がほかの弁護士事務所を執務場所とし、それとは別に自身が開設している事務所が存在しているように見え、二重事務所のように見えなくもないという状況が生じています。
 しかし、二重事務所が禁止されているのは、弁護士が不在の事務所が生じることで非弁護士による非弁活動が跋扈することを防止するためですから、上記のような場合を禁止するものではありません。
 むしろ、弁護士がほかの弁護士の事務所に赴き、共同して作業を行うことは自然なことですから、このよう場合が禁止されるということの方が不自然であるといえます。
 そのため、弁護士法第20条3項は、あくまでも当たり前のことを規定しただけであって、二重事務所の禁止の例外を設けたようなものではないということになります。
 もっとも、赴く方の弁護士が、専ら他の弁護士の事務所で執務を行い、執務場所の本拠となっているような場合や、他の弁護士の事務所に自身の名前を掲げているような場合には、もはや本拠は他の弁護士の事務所であるとしか言えないでしょうから、二重事務所の禁止に該当するということになります。
 

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