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1 業務停止期間中にできないこと(前回の続き)
(1)税理士等の業務
弁護士が、弁護士業務の一環として税務活動を行うような場合には、これは当然停止されます。
問題は、弁護士が、弁護士という資格を利用して、同時に税理士登録をしている場合(税理士法第3条第1項3号)、この税理士資格に基づく業務がどのようになるかです。
この点について税理士法には第43条で、原資格が停止されたときには税理士業務を行ってはならない旨の規定があります。
しかし、同じように弁護士がその資格を以て登録可能な資格の中でも、弁理士にはそのような規定はありません(社会保険労務士なども同様)。このような場合にどのように考えるかが問題となりますが、それらの資格にはその資格特有の懲戒手続が存在し、そのような懲戒手続きを経ず、法の規定もない中で、資格の効力を制限することはできないと考えられています。
ただ、弁理士については、次回説明をする通知により特別の定めがありますので、その点に注意をする必要があります。
(2)会務活動
業務停止によって停止される「業務」については、弁護士法第3条で定める業務、つまり「弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。」に記載されていることに限られるという考え方と、それに限らず広く考える考え方と2通りあり得るところです。
そのため、業務を限定的に解釈した場合には、弁護士会の会務活動はこれに当たらず、業務停止期間中であっても会務は可能であると考えることになります。対して、業務を広く考えれば、会務活動を禁止することに繋がります。
この点についても、通知に特別の定めがありますので、そちらに従うことになりますが、会則上は会務活動は行えないことになっています。
ただ、法解釈としては、文言上は法律に定められた職務を基準に考えるべきであるとも考えられます。
(3)業務停止に関する基準
これまでの通り、業務停止期間中にどのような業務を行うことが禁じられるのかについては、解釈上明確でない点があります。
そのため、この点を明らかにするため、日弁連では業務停止中の禁止事項を定める通知が必要となるところです。
現行の通知は、平成4年に発出された「被懲戒弁護士の業務停止期間中における業務規制等について弁護士会及び日本弁護士連合会の取るべき措置に関する基準」であり、実際にはこの基準に基づいて、各弁護士への指導が行われることになっています。