弁護士のSNS投稿は懲戒処分の対象になる?問題となる行為と具体例を解説

弁護士法56条1項は、弁護士について、法律・弁護士会等の会則に違反した場合だけでなく、「職務の内外を問わずその品位を失うべき非行」があった場合にも懲戒を受けると定めています。したがって、弁護士業務そのものではないSNS上の発言も、場合によっては懲戒対象になります。

懲戒処分には、軽いものから順に、

戒告
2年以内の業務停止
退会命令
除名

があります。

ただし、「不快な発言」=直ちに懲戒という単純な仕組みではありません。発言の具体的内容、誰に向けられたものか、実名・匿名の別、弁護士であることが分かるアカウントか、事件との関係、被害の程度、反復性などを総合的に判断することになります。

架空事例①――依頼者とのトラブルについて投稿した場合

弁護士Xは、交通事故事件を担当していた。しかし、依頼者Yと報酬をめぐってトラブルになり、Yから契約解除を申し入れられた。
Xは、実名と「○○法律事務所・弁護士」と表示したX(旧Twitter)アカウントで、
「約束した金も払わずに文句ばかり言う依頼者は、二度と法律事務所に来るな」
といった投稿を何度も行った。
ただし、投稿にはYの氏名や事件を特定できる情報は書かれていなかった。

この場合、懲戒の可能性はありますが、必ず戒告になるとはいえません。

特に重要なのは、単なる一般論としての不満なのか、それとも特定の依頼者に対する攻撃なのかという点です。

さらに、

Yを容易に特定できる情報が含まれている
Yとの紛争が背景にある
弁護士であることを明示している
同じような投稿を繰り返している

などの事情が加われば、弁護士としての品位を失う行為と評価される方向に傾きます。

架空事例②――第三者の名前をSNSに晒した場合

次は、より懲戒につながりやすいケースです。

弁護士Aは、SNS上である人物Bと激しく論争していた。
BはAについて弁護士会に懲戒請求を行った。
これに対してAは、自分のSNSに懲戒請求書の画像を掲載し、
「この人間が私を懲戒請求した張本人です」
と投稿した。
懲戒請求書にはBの氏名・住所などが記載されており、Aはそれらを隠さず公開した。
Aはさらに、「こんな人物から依頼を受ける弁護士は気をつけた方がいい」などと投稿した。

このケースでは、単に「Bの主張は間違っている」と批判する場合より、懲戒処分を受けるリスクがかなり高くなると考えられます。

問題になるのは、単なる意見表明ではなく、

懲戒請求者の個人情報を公開すること
相手方をSNS上で晒すこと
弁護士という立場を利用して相手方を攻撃すること
必要性のない情報まで公開すること

などです。

架空事例③――事件の秘密をSNSで漏らした場合

もう一つ重要なのが、守秘義務・秘密保持に関係する投稿です。

弁護士Bは、会社Cから訴訟を依頼されていた。
Cから、取引先との契約交渉に関する内部資料を受け取っていた。
Bは、友人の弁護士数名が参加する非公開のSNSグループで、
「うちの依頼者の会社、実はこの取引で年間約8億円売り上げている」
と投稿した。
Bは「非公開グループだから問題ない」と考えていた。

SNSの公開範囲が限定されていることと、守秘義務・秘密保持の問題がなくなることは別問題です。

特に、依頼者が秘密として提供した情報を、事件処理に必要のない場所で第三者に伝えれば、懲戒上の問題となる可能性があります。

架空事例④――社会問題について過激な意見を投稿しただけなら?

では、次のような場合はどうでしょう。

弁護士Cは、自分の実名アカウントで、
「私は現在の○○法改正に反対だ。この法律は弱者を救うどころか、かえって問題を大きくすると思う」
と投稿した。
その投稿に対して多数の批判が寄せられた。

これは、意見の内容が社会的に不人気であるというだけで、当然に懲戒されるわけではありません。

弁護士にも表現の自由があります。

実際、弁護士会自身もSNS上の誹謗中傷・侮辱的表現などを問題視する一方で、弁護士の社会的活動や意見表明そのものを禁止しているわけではありません

したがって、「弁護士として好ましくない意見」と「弁護士として懲戒されるべき非行」は区別する必要があります。

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