除斥期間の始期が問題となった事例

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1 事案の概要

 X弁護士は、事件当時A法律事務所に所属しており、同事務所の代表はB弁護士であった。
ある年、Xは、A法律事務所B弁護士名義で、Cらから多数の土地の明け渡し、売却等の手続の委任を受け、報酬は土地の売却価格の3~5%ほどと決定された。
 X弁護士は、問題となった土地を約4億円で売却し、その報酬として1300万円を受領した。
この金額が不当に高額ではないかということで懲戒請求がなされ(なお、本請求にはほかに書類のみ返却という問題も含まれている)、単位会では不当に高額であるとのことで懲戒事由に該当するとの判断を受けた。
 この結果、X弁護士には戒告の処分がなされたため、Xはこの取消訴訟を提起した。
 この報酬に関する問題として、X弁護士は除斥期間の主張を行った。実際、報酬を受領した日から、懲戒請求がなされた日まで5年ほどが経過していた。
(東京高判平成15年3月26日の事例 なお、旧報酬規程があった頃の事案である)

2 判旨

 弁護士法六四条は、「懲戒の事由があったときから三年を経過したときは、懲戒の手続を開始することができない。」と規定しているところ、Xは、処分理由〔1〕(注 弁護士報酬が不当に高額であるという主張)に係る同条の「懲戒の事由があったとき」とは、XがCから最終的に報酬を受け取った平成七年二月二八日であると主張し、他方、被告(日弁連)は、これを適正な報酬を超える金額を返還した時点か、委任契約が終了した時点のいずれかであるとした上、本件ではXないしCの受任事務が終了した平成九年一一月二七日であると主張するので、まず、この点について検討する。
 弁護士法六四条にいう「懲戒の事由」は、同法五六条に規定する同法あるいは弁護士会の会則違反行為、所属弁護士会の秩序又は信用を害する行為、品位を失うべき非行を意味するものである。処分理由〔1〕は、不当に高額の報酬を受け取ったことを懲戒の事由とするものであるから、その不当性が報酬を受け取った以後の事務処理をみなければ判断できないような事情、あるいは報酬契約が公序良俗に反するほどの暴利行為で、受領した報酬を返還しないこと自体も弁護士としての品位を失うべき非行であると評価される等の特段の事情のない限り、処分理由〔1〕に係る「懲戒の事由があったとき」とは、現に報酬を受け取ったときと解するのが相当である。

3 解説

 この判決は、継続的に見える非行事由に関し、不当に高額な報酬の受領という点については原則報酬受領時に非行が終了し、除斥期間の始期は報酬を受領したときが原則であると判断したものになります。
 この一般的な判旨の後、裁判所は「特段の事情」が存在しないことを認定し、この不当な報酬の点については懲戒手続が開始できなかったということを認めました。
 ただし、他の事由が懲戒に値することを理由に、Xの請求自体は棄却しています。

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