綱紀委員会③

1 綱紀委員会の調査事項

 綱紀委員会が調査をする事項は以下のようなものです。
①当事者
懲戒請求者が存在するか(何人でも請求可能なので、特に個人の資格等は必要ないが、架空人による請求は認められない)、対象弁護士が現に単位会に所属する弁護士であるかどうかなど、当事者性の判断を行います。
②懲戒事由の存否
最も大きな調査事項は、懲戒事由たる事実が存在するか、またその事実が存在したとしてそれが懲戒事由たる非行に値するかという点です。
ここで、懲戒請求書等に記載されていない事実であって、懲戒に値するような事実が存在した場合が問題となります。この点については、綱紀委員会による立件が認められていないことに鑑みると、仮にこのような事実を発見したからといて、これを調査し、議決することは許されないと考えられています(ただし、この事実を弁護士会に報告し、弁護士会が会立件することは許されると思われます)。反対に、懲戒請求書等に記載されている事実については、全てについて議決を要するとされています。
③情状
懲戒事由となるとは、単なる法令・会則違反等ではなく、「懲戒に値するほどの」法令・会則違反等です。
そのため、懲戒事由該当事実だけではなく、その情状等についても調査の対象となると考えられています。
また、この情状には、事実発生時の事情だけではなく、事後的な事実(たとえば、懲戒請求後に請求者との間で和解が成立したような場合など)も含めて考慮できると考えられています。
④除斥期間
弁護士法第63条には「懲戒の事由があつたときから三年を経過したときは、懲戒の手続を開始することができない。」と定められています。この「3年」の性質は除斥期間と考えられていますので、問題は「懲戒の事由があったとき」という、除斥期間の始期がいつの時点であるのかということになります。
単発の行為であれば、その行為が終了したときを基準に考えればよいので、それほど問題は生じません。
これに対し、高額な弁護士報酬を受領し、それを返還していないというような事案の場合、「報酬受領時」を始期とするのか、返還未了を理由に非行は継続していると考えるのかが問題となります。このような事例の場合に、過去の裁判例では基本的には報酬受領時を基準とすると考えられました。

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