1 基準の存在
以前記載した通り、業務停止中の弁護士が、いかなる活動をすることができるかということについてはそれほど定まった法令等があるわけではありません。
そのため、日弁連は平成4年の理事会決議として「被懲戒弁護士の業務停止期間中における業務規制等について弁護士会及び日本弁護士連合会の採るべき措置に関する基準」を公表しています(弁護士法人、外国法事務弁護士についても同様の規定があります)。
それでは、この規程にはどのようなことが定めてあるのでしょうか。
2 基準の内容
今回は、受任事件以外の規定をいくつか確認します。
①法律事務所の管理行為
「被懲戒弁護士は、法律事務所の管理行為及び賃貸借契約並びに補助弁護士等及び従業者との雇用契約等を継続することができる。」
代表弁護士が懲戒を受けたような場合でも、雇用している弁護士との契約や、事務員との雇用契約を解除することまでは求められません。これは、業務停止期間が経過した後は再び弁護士として活動することが予定されているからです。
②法律事務所の使用
「被懲戒弁護士は、その法律事務所を自らの弁護士業務を行う目的で使用してはならない。ただし、受任事件の引継ぎその他この基準によって業務停止の期間中も認められている事務等のため必要があるときは、その法律事務所の使用目的その他必要な事項の届出を行った上で、弁護士会等の承認を得てその法律事務所を使用することができる。(後略)」
業務停止を受けた弁護士は弁護士としての活動を行うことができませんので、その目的で法律事務所を使用することはできません。ただし、引継ぎ等は必要であり、求められるところですので、例外的に使用が許容されています。
③外観的な規定
「被懲戒弁護士は、直ちに弁護士及び法律事務所であることを表示する表札、看板等一切の表示を除去(表示としての機能を失わせる措置一般をいう。以下同じ。)しなければならない。(後略)」
「懲戒弁護士は、弁護士の肩書又は法律事務所名を表示した名刺、事務用箋及び封筒を自ら使用し、又は他に使用させてはならない。(後略)」
「被懲戒弁護士は、弁護士記章規則(規則第三十五号)第五条第二項及び弁護士等の身分証明書の発行に関する規則(規則第六十号)第十三条第一項第二号の規定により、直ちに弁護士記章及び身分証明書を日本弁護士連合会に返還しなければならない。」
業務停止中は弁護士としての活動を行うことができませんから、外部から見て弁護士のように見えるものは除去を求められます。それが看板・広告の除去、名刺等の使用禁止、身分証・徽章の返還に表れています。
④受任事件以外の事件
「被懲戒弁護士は、弁護士会及び日本弁護士連合会並びに法第四十四条の弁護士会連合会の会務に関する活動をすることができない。」
「被懲戒弁護士は、弁護士会等の推薦により官公署等の委員等に就任している場合は、直ちに当該官公署等に対し、辞任の手続を執らなければならない。弁護士であることに基づき委嘱された人権擁護委員、選挙管理委員、労働委員会委員、調停委員、鑑定委員、破産管財人、後見人、後見監督人等についても、同様とする。」
受任事件以外であっても、会務活動や、弁護士であることを理由に推薦されている官公署の委員等についても辞任をする必要があります。