業務停止③

1 基準の存在

 前回記載した通り、業務停止中の弁護士が、いかなる活動をすることができるかということについてはそれほど定まった法令等があるわけではありません。
 そのため、日弁連は平成4年の理事会決議として「被懲戒弁護士の業務停止期間中における業務規制等について弁護士会及び日本弁護士連合会の採るべき措置に関する基準」を公表しています(弁護士法人、外国法事務弁護士についても同様の規定があります)。
 それでは、この規程にはどのようなことが定めてあるのでしょうか。

2 基準の内容

 まず今回は、事件の処理等に関する規律を確認します。
①受任事件の取扱い
 被懲戒弁護士は、受任している法律事件(裁判所、検察庁及び行政庁(以下「裁判所等」という。)に係属するものに限らない。以下「受任事件」という。)について、次のイからニまでに従った措置を採らなければならない。
イ 被懲戒弁護士は、直ちに依頼者との委任契約を解除するとともに、委任契約を解除した受任事件に   ついて、解除後直ちにその係属する裁判所等に対し、辞任の手続を執らなければならない。
ロ イの規定にかかわらず、業務停止の期間が一箇月以内であって、依頼者が委任契約の継続を求めてその旨を記載した確認書を作成し、その写しを弁護士会等に提出する場合は、被懲戒弁護士は、依頼者との委任契約を解除しないことができる。ただし、被懲戒弁護士が依頼者に対して委任契約の継続を求める働きかけをした場合は、この限りでない。

 このように、短期間で終了する事件以外は、受任事件は原則解除となります。

②顧問契約の取扱い
 被懲戒弁護士は、直ちに依頼者との顧問契約を解除しなければならない。

 顧問契約は、例外なく解除です。

③期日変更
 被懲戒弁護士は、期日の延期及び変更の申請をすることができない。

 これが意外と思われるかもしれませんが、たとえば業務停止期間が1カ月間であり、その停止期間中に存在する期日を、停止期間外に延期するよう求めるというようなことは許されていません。
 このようなことを許してしまうと、①の潜脱となりかねません。業務停止を受けた場合には、速やかに辞任をし、依頼者が新しい弁護士に依頼できる期間を作るようにしなければなりません。

④復代理人の選任
 被懲戒弁護士は、新たに復代理人を選任し、又は他の弁護士若しくは外国法事務弁護士を雇用する等してはならない。

 これも①の実効性を確保するために必要です。復代理人を選任し、その者に業務停止期間を乗り切ってもらうというようなことは許されません。

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