利益相反④

1 利益相反

 弁護士法第25条は、弁護士が職務を行い得ない事件を定めています。
 同様に、弁護士職務基本規程第27条、28条も職務を行い得ない事件を定めています。
前回に引き続き、この職務を行い得ない事件を解説していきます。

2 弁護士法人の社員についての規定

 弁護士法第25条6~9号は、弁護士法人の社員に関する規定です(弁護士・外国法事務弁護士協同法人についても同様です)。

六 弁護士法人(第三十条の二第一項に規定する弁護士法人をいう。以下この条において同じ。)若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人(外国弁護士による法律事務の取扱い等に関する法律(昭和六十一年法律第六十六号)第二条第六号に規定する弁護士・外国法事務弁護士共同法人をいう。以下同じ。)の社員若しくは使用人である弁護士又は外国法事務弁護士法人(同条第五号に規定する外国法事務弁護士法人をいう。以下この条において同じ。)の使用人である弁護士としてその業務に従事していた期間内に、当該弁護士法人、当該弁護士・外国法事務弁護士共同法人又は当該外国法事務弁護士法人が相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件であつて、自らこれに関与したもの
七 弁護士法人若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人の社員若しくは使用人である弁護士又は外国法事務弁護士法人の使用人である弁護士としてその業務に従事していた期間内に、当該弁護士法人、当該弁護士・外国法事務弁護士共同法人又は当該外国法事務弁護士法人が相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるものであつて、自らこれに関与したもの
八 弁護士法人若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人の社員若しくは使用人又は外国法事務弁護士法人の使用人である場合に、当該弁護士法人、当該弁護士・外国法事務弁護士共同法人又は当該外国法事務弁護士法人が相手方から受任している事件
九 弁護士法人若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人の社員若しくは使用人又は外国法事務弁護士法人の使用人である場合に、当該弁護士法人、当該弁護士・外国法事務弁護士共同法人又は当該外国法事務弁護士法人が受任している事件(当該弁護士が自ら関与しているものに限る。)の相手方からの依頼による他の事件

 6号は、ある弁護士法人に属していた弁護士が、その期間中に事件の相手方から協議を受けて賛助等しており、かつそれに当該弁護士が関与していた場合です。これは実質的に25条1号と同じ状況であるため禁止されているのですが、反対に弁護士法人として賛助等していたとしても、当該弁護士が関与をしていなければ1号と同じ状況にありませんから、この場合は職務を行うことを禁止されません。
 7号も、25条2号と同じような場合を定めています。
 この6・7号は、現在その弁護士法人に属している場合だけなく、その弁護士法人を退職後も禁止されるものです。
 8号は、6・7号と異なり、自らがその事件に関与しているか否かを問わず、現に属している弁護士法人が相手方から受任している事件について職務を行うことを禁止しています。これは正に公平性に疑念を持たれる状況だからです。ただし、自らが関与していなければ、6・7号の規定に抵触するわけではないので、弁護士法人を退社後であれば受任等が可能になります。
 9号は、25条3号と同様の規定ですが、これについては8号と異なり、自らが関与している事件の相手方からの依頼だけ禁じられており、同じ弁護士法人で受任していても、自らが関与をしていない事件の相手方からの依頼であれば禁止をする規定ではありません。また、3号と同様、依頼者の同意があれば禁止の対象ではないと考えられます。

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