懲戒請求権を有する者⑴

1 懲戒手続きの開始

 弁護士法58条には、懲戒の手続きが開始する場合として
① ②の場合以外で、懲戒の請求があった場合
② 弁護士会が懲戒の事由があるとして手続きに付した場合
を定めています。
 一般的に②の場合を「会立件」などと呼んでいます。
 なお、これ以外に弁護士法60条により、日弁連も懲戒請求可能です。

2 懲戒請求権者

 弁護士法58条1項で、懲戒請求をすることができるものは「何人も」と定められています。
 前回ご説明した紛議調停員会への調停申し立てが「弁護士、弁護士法人又は当事者その他関係人」と限定されていたのとは異なります。

 「何人も」懲戒請求可能ですから、自然人、法人問わず懲戒請求をすることができます。
 そのため、依頼者や事件の相手方、関係人といった弁護士と直接・間接に関わり合いがあったものだけではなく、全くの見ず知らずの第三者でも懲戒請求が可能であるということになっています。
 このような理由から、近年大量懲戒請求の問題が生じています。

3 懲戒請求の方式

 懲戒請求をどのような形でするのかについては、法律は「その事由の説明を添えて」と記載するだけで、書面による申請でなければならないのか、口頭でなければならないのかなどについて方式の定めがありません。
 そのため、実際にはほとんど書面によって請求がなされていると思われますが、法律上は口頭で請求してもよいということになります。
 ただし、誰に対する懲戒請求であるかや、何を理由に請求するか(その事由の説明)は必要となりますので、いずれの方法を採るにしても、明らかにする必要があります。

4 懲戒請求の理由

 懲戒請求ができるのは、「懲戒の事由があると思料するとき」とされています。
 しかし、弁護士会は懲戒請求がなされた以上、原則的にすべての懲戒請求を綱紀委員会に付す必要があり、懲戒請求の適法性の判断を綱紀委員会によって判断するということになっていますから、理由の有無についても綱紀委員会で判断されることになります。
 ですので、弁護士会の受付で懲戒請求を拒まれるということはありません。
 ただし、意図して虚偽の事実を申告し、弁護士等に対する懲戒請求をした場合には、刑法の虚偽告訴罪に当たるとされていますし、濫用的な懲戒請求は不法行為を構成するとされていますから、どのような懲戒請求をしても問題がないというわけではありません。

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