懲戒請求の対象者

1 懲戒請求の対象者

 弁護士法第56条第1項によると、懲戒を受ける対象と定められているのは①弁護士及び②弁護士法人とされています。弁護士と弁護士法人が別に規定されていますので、法人に所属する個々の弁護士への懲戒と、弁護士法人そのものに対する懲戒は別物となります。
 なお、「弁護士」の中には、弁護士法に規定される弁護士以外に「外国法事務弁護士」というものがあり、特定の外国で弁護士となる資格を有しているものが、日本国内で、その外国の法律事務を行うために承認を受けて弁護活動を行うものを指しており、この外国法事務弁護士についても同じような懲戒制度がありますが、ここでは省略します。また、弁護士法人についても割愛します。

2 弁護士であること

 懲戒請求の対象者であるためには、現に弁護士であることが求められます。
 通常はこの要件は問題とならないのですが、1つ問題が生じうる場合があります。
 まず、懲戒請求をされた弁護士が、登録の取消の請求を行うことは、弁護士法第62条第1項により禁止されています。そのため、懲戒を免れるために弁護士でなくなるというようなことはできません。
 しかし、①事態の深刻さを察知して予め登録取消の請求がなされ②その後に懲戒請求がされたような場合に、どのような処理が行われるのかということについては定まった見解がありません。
 もちろん、①と②の間に大きな時間的隔たりがあれば、既に弁護士でなくなったということで処理がされると思いますが、たとえば、弁護士が登録取消の届出を単位会に行い、その書類が未だ日弁連に届くまでの間に(弁護士法第11条により、登録取消は単位会を経由して日弁連に届け出ることになっています)懲戒請求がされたような場合に、登録取消が効力を有するようになるのはどの時点からなのか(=弁護士の身分を喪失するのはいつからか)という問題が発生します。これについては、単位会に届け出た時点で効力が発生する(①の時点で弁護士の身分を喪失し、ここから先は懲戒できない)という考え方もある一方、日弁連の方で処理されるまで身分は喪失しない(=この例では懲戒可能)という考え方もあり得るところです。

3 弁護士会への所属

 弁護士又は弁護士法人に対する懲戒の請求は、日本弁護士会連合会(日弁連)に対して行うのではなく、個々の弁護士会(単位会)に対して行う必要があります。
 そのため、懲戒請求の対象者が、請求をする先の弁護士会に所属している必要があります。
 たとえば、大阪弁護士会に所属する弁護士について、兵庫県弁護士会に懲戒請求をすることはできません。
 なお、懲戒請求をされた弁護士が、他の弁護士会に登録換えの請求を行うことは、弁護士法第62条1項により禁止されています。
 また、2と異なり、弁護士の身分自体が喪失するわけではありませんから仮に2と同じような事態が生じたとしても、新所属会の方に懲戒請求を行えば足りるということになります。

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