このページの目次
1 懲戒委員会の審査手続
懲戒委員会は、弁護士会からの求めに応じて審査を開始します。そのため、独自に事件を立件することはできません。
また、弁護士会が懲戒委員会に審査を求めるのは、綱紀委員会が「懲戒委員会に付する」決定をした場合に限られますので、弁護士会の会長なり常議員会が、何らの決定もなくいきなり懲戒委員会に事案の審査を求めるということも許されません。
事案が適法に懲戒委員会に付されることになると、対象弁護士、懲戒請求者、日弁連(付されたのが弁護士法人で、他の所属会があればその会にも)に対し、懲戒委員会の審査に付された旨と事案の内容を通知することとなっています。
2 審査期日
懲戒委員会は、事案の審査を求められたときは、速やかに、審査の期日を定め、対象弁護士等にその旨を通知しなければならないこととされています(弁護士法第67条1項)。
そして、その審査期日には、対象弁護士は出頭し、陳述をすることができます(同条2項)。
3 審査方法
懲戒委員会は、審査に関し必要があるときは、対象弁護士等、懲戒請求者、関係人及び官公署その他に対して陳述、説明又は資料の提出を求めることができます(同条3項)。
懲戒委員会の求めに対しては、対象弁護士については会則により協力が義務付けられているものの、その他の者についてはこれを強制する手段などはなく、協力を求めるものということになります。また、対象弁護士がこの手続きに協力しなかったことについては、協力しなかったことを理由に懲戒事由の存在を推認するというような証明妨害の規定はありませんので、これを不利益に考慮することはできないものの、会則に定められた協力義務に違反するものであることとを理由に別途懲戒事由を構成する可能性があります。ただし、この場合でもいきなり懲戒委員会が懲戒事由に協力しなかったことを挙げることは許されないと考えるべきであり、懲戒委員会の委員長から弁護士会会長に対して請求の対象外の事実があった旨を報告し、別途会長等の機関が会立件を行うという手続きを経る必要があると考えられます。
4 刑事訴訟との関係
懲戒委員会は、同一の事由について刑事訴訟が係属する間は、懲戒の手続を中止することができるとされています(弁護士法第68条)。
刑事手続はあくまでも国家の刑罰権行使であり、懲戒手続は弁護士たる身分への処分ということになりますので、別々の手続きということにはなりますが、刑事裁判を経ることでより事案の真相が解明される可能性があるということでこのような規定が設けられたと考えられています。
ただ、法文から明らかなとおり、必ず中止しなければならないものではありませんので、懲戒委員会で事案ごとに判断して手続きを中止するかどうかを検討するということになります。