懲戒事由(品位を失うべき非行)

1 品位を失うべき非行

 弁護士法第56条第1項に定める懲戒事由のうち、最後のものが「職務の内外を問わずその品位を失うべき非行」です。
 この「品位を失うべき非行」については、それより前に記載されている「この法律・会則違反、信用秩序侵害」も含み、懲戒に値するべき非行を取り出す概念であると考えられていますが、具体的にどのような行為が品位を失うべき非行に該当するかは、個別具体的事案に応じた判断をするほかないと考えられています。

2 職務の内外

 「職務の内外を問わず」とされているので、弁護士としての業務上の事由だけでなく、私生活上の事由を理由として懲戒を受ける場合があります。
 飲酒運転などの犯罪行為はもちろんですが、不貞行為等も問題となり得るところです。

3 品位を失うべき非行の例

 この「品位を失うべき非行」は、最初に記載した通り、「懲戒に値るする非行」を取り出す概念です。また、「法律・会則違反」などについても、全ての弁護士法違反、全ての会則違反が懲戒の対象となるのではなく、それらのうち懲戒に値するものだけが懲戒となるとされていますから、多くの懲戒事例で「会則・法律違反」などと並んで「品位を失うべき非行」が列挙されています。
 これまでに問題となった例では、国選弁護人が被告人から国選弁護人報酬以外の報酬等の支払いを受けたような場合や、訴訟委任状を無断で作成行使したような事例などがあります。
 ここで、品位を失う行為が問題となった裁判例の文面を見てみましょう(東京高判昭和47年10月23日 上記国選弁護人の事例)。
「国選弁護人は、被告人の請求または職権により弁護士の中から裁判所または裁判長が選任して被告人のために附するものであり(刑事訴訟法第三六条・第三七条・第三八条第一項)、右弁護人に対しては、旅費・日当・宿泊料及び報酬が国費をもって支給される(同法第三八条第二項)のであるから、国選弁護人が選任された被告事件の弁護活動につき国から支給される右報酬等以外に、被告人その他何人からでも報酬等の支払を受けることは弁護士が基本的人権を擁護し社会正義を実現することをその使命とし(弁護士法第一条)、弁護士となる資格は法律をもって定められていることに鑑み非難に値する行為というべきであり、弁護士法第五六条第一項にいう弁護士の品位を失うべき非行に該当するものと解すべきである。」
 この事案では、当事者の主張に寄れば当時は国選弁護人の報酬に含まれていなかったと思われる保釈請求に関する手続きの報酬とされるものを受け取った事案であり、原告の弁護士はその旨を主張していましたが、それを理由に職務の範囲外であると主張することはできないと述べています。
 

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