対象弁護士の地位

1 対象弁護士の地位

 懲戒請求を受けた弁護士は、綱紀・懲戒委員会などから、事案についての陳述、説明、資料の提出をと求められることになります。
 このような手続きについて、弁護士法は70条の7で、日弁連綱紀委員会の手続きの内容として定めているところであり、単位会の手続きについては法律で定められているところではないのですが、おそらく多くの単位会で同じような規定が置かれているものと思われます。
 なお、弁護士法第70条の7では「綱紀委員会〔注:日弁連綱紀委員会を指す〕は、調査又は審査に関し必要があるときは、対象弁護士等・・・・・に対して陳述、説明又は資料の提出を求めることができる」と定められていますが、仮に説明を求められた弁護士が説明を拒否した場合にはどのように考えられるのでしょうか。
 この点について、日本弁護士連合会会則第72条は「弁護士及び弁護士法人は、会期で定めるところにより懲戒の手続きへの協力を求められたときは、正当な理由がない限り、これに応じなければならない」としており、弁護士及び弁護士法人に対して協力義務を課しています。ですので、仮に綱紀委員会等から説明を求められた際、正当な理由なく弁護士が説明を拒否するような場合には、この会則第72条違反となり、懲戒請求されている事由とは別に、会則違反として懲戒を受ける場合があります。

2 登録換えの制限

 弁護士法第62条第1項は、「懲戒の手続に付された弁護士は、その手続が結了するまで登録換又は登録取消の請求をすることができない」とされています。
 ここで問題となるのは「懲戒の手続に付された」と言えるのはどの手続きが開始した段階かという点と、「手続が結了」したといえるのはどのような状態になった場合かという点です。
 まず「懲戒の手続に付された」という言葉の解釈ですが、かつては①綱紀委員会の調査手続きに付された場合も含むという解釈と②懲戒委員会の審査手続に付された場合に限定するという解釈の2つの解釈が存在しました。しかし、現在は弁護士法第58条2項で「弁護士会は・・・・懲戒の手続に付し、綱紀委員会に事案の調査をさせなければならない」と定めているため、「懲戒の手続に付し」=「綱紀委員会に事案の調査をさせ」ることと考えられています。
 次に「手続が結了」したと言える時点ですが、こちらは懲戒処分の効力発生の時と考えられており、懲戒をする場合には対象弁護士に対して処分の通知があったとき、懲戒をしない場合にはその旨の通知が対象弁護士にあったときであると考えられています。ただし、懲戒をしない場合に、懲戒請求者から異議の申出があって事案が日弁連綱紀委員会に移送された場合には、この登録換え禁止の制限は継続することになります。

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