弁護士法第24条違反

1 委嘱事項を行う義務

 弁護士法第24条は弁護士に対して、正当な理由がない限り法令により官公署の委嘱した事項及び弁護士会・日弁連が指定した事項を行うことを辞することができないと定めています。

2 官公署が委嘱した事項

 官公署が委嘱した事項の例は、国選弁護人や、付審判請求がなされた場合の公訴維持を行う検察官役の弁護士のほか、司法試験委員や司法研修所教官などの職務も含みます。
 ただ、この規程においても、対象となる職務について「弁護士」を選任する旨が定められているものに限るか(たとえば、司法試験法第13条2項は「委員は、裁判官、検察官、弁護士及び学識経験を有する者のうちから、法務大臣が任命する」としており、弁護士であるから司法試験委員に任命されていると言えます)、それに限らないのか(破産管財人には弁護士が選任されていますが、破産法第74条1項で「破産管財人は、裁判所が選任する」と記載するだけで、弁護士でなければならないという制限は法律上はありません)という問題があります。この問題について決まった解釈は存在しないようですが、仮に後者の考え方であっても、「正当な理由」を広く解釈すれば足りると考えられています。

3 弁護士会・日弁連が指定した事項

 これについては、各種委員会の委員などが含まれると考えられています。

4 正当な理由

 正当な理由については、辞職することが認められる程度の重大な事由である必要があり、長期療養が必要な病気などが挙げられると考えられますが、職務上多忙であることが理由となるかどうかについては慎重に検討されるべきとされています。

5 国選弁護人の辞任

 この条文をめぐって最も問題となりうるのは、国選弁護人の辞任の問題です。
 刑事訴訟法第38条3項では「裁判所は、・・・裁判所若しくは裁判長又は裁判官が付した弁護人を解任することができる」とし、解任事由として利益相反、心身の故障などが挙げられています。国選弁護人が「官公署の委嘱した事項」であることに争いはないと思われますが、いかなる場合に国選弁護人を辞任することが許される「正当な理由」があるといえるのかが問題となります。
 このうち、刑事訴訟法第38条1項1~5号に記載している場合には正当な理由があるとされることになると思われますが、たとえば被告人と弁護人の間の信頼関係喪失が正当な理由となりうるかが問題となります。
 この点について、裁判所は、正当な理由の有無の判断は裁判所がすべきものであるとしているものの、最判昭和54年7月24日において「被告人らは国選弁護人を通じて権利擁護のため正当な防禦活動を行う意思がないことを自らの行動によつて表明したものと評価すべきであり、そのため裁判所は、国選弁護人を解任せざるを得なかつた」としており、信頼関係喪失の程度や、事案の状況においては信頼関係喪失により解任することもやむを得ないと考えている様子も見受けられます(ただし、この件では5号に当たるように思われる事由も存在していました)。

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