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1 弁護士法第20条
弁護士法第20条は、法律事務所の名称、法律事務所の設置場所、二重事務所の禁止を定めています。
2 名称について
まず、1項は「弁護士の事務所は、法律事務所と称する」としています。司法書士事務所などが「法務事務所」などの名称を付与している場合がありますが、弁護士法第74条により、弁護士又は弁護士法人以外の者が「法律事務所」の名称を用いることはできません。
反対に、弁護士であれば、その事務所に必ず「法律事務所」とつけなければならないかという問題については、消極的に理解されています。
実際、法律事務所等の名称等に関する規程第3条では「弁護士は、その法律事務所に名称を付するときは、事務所名称中に「法律事務所」の文字を用いなければならない」としており、「名称を付するとき」だけ「法律事務所」とつけなければならないこととされています。そのため、特に事務所名を付さない場合などは、「法律事務所」を標榜する必要はないということになります。
3 法律事務所の設置場所
2項は、「法律事務所は、その弁護士の所属弁護士会の地域内に設けなければならない」としています。
弁護士は、各単位会に所属することが義務付けられていますが、その単位会による監督等を実効的なものにするため、事務所が単位会の地域内に所属する必要がある旨が定められています。
もし他の地域に法律事務所を移転する場合には、併せて登録換えを行う必要があります。
そのため、所属弁護士会の地域の外に事務所を設ける場合は当然本項に違反します(大阪弁護士会所属の弁護士が、兵庫県内にのみ事務所を設けた場合)。
また、たとえば京都弁護士会に所属する弁護士が、事務所を設けずに滋賀県内の自宅で執務をするような場合であっても、本項に違反することとなります。このような場合であっても、所属弁護士会による監督が困難となることに変わりはないと考えられるからです。
このような場合以外にも、所属弁護士会内に事務所を設けているものの、主たる執務が地域外の別の場所で行われているような場合には、本条3項に違反するだけでなく、本項にも違反すると考えられています。
なお、仮に本項に違反する行為があったとしても、事件の受任や訴訟行為自体は有効であるとされています。