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事例
①
Ⅹ弁護士はY県において「P法律事務所」を開設していたが、別の特許事務所に勤務していた友人のZ(弁護士、弁理士資格を持たない)がその職を辞めざるを得なくなったことから、自身で特許業務を行うことを考え、Zを事務として雇用することを考えた。
そこで、既存のP法律事務所とは別の場所(同じY県内)に事務所を借り、事務所名を「P法律特許事務所」と変更する届出を弁護士会に出したうえで、新しく借りた事務所を「P法律特許事務所特許部」と案内した。
Y県弁護士会会長がXに対して複数事務所の禁止に抵触する可能性を告げたところ、Xは新しい事務所をZの調査事務所と変更することにしたが、実際は約5か月間事務所を閉鎖しなかった。
②
A弁護士は本来B県に法律事務所を開設していたが、C県にいるDから依頼をされ、C県のビル1室を借り、そこに「A法律事務所C連絡所」の名称を付したうえ、そこで1か月に3回程度法律相談を受けるなどした。
また、その際Dに対し、「A法律事務所事務員」の名刺を使用させた。
(いずれも自由と正義掲載の事案を改変したものである)。
判断
①については戒告、②については業務停止2か月の処分がなされた。
解説
いずれの事案も、複数事務所を開設することを禁ずる弁護士法第20条3項に抵触します。
複数事務所の禁止は、所属する単位会の管轄外の場所に事務所を開設することが許されないだけではなく、仮に同一単位会管轄内であっても禁止されます。
複数事務所の開設が禁止されている趣旨は、1つには弁護士が所属する単位会の監督権を十分に発揮させるためですが、それだけに尽きるものではなく、弁護士のいない事務所が開設され、非弁行為が横行することのないようにするためというものも含まれます。
そのような意味で、①の事案が戒告であるにもかかわらず、②の事案が業務停止となったのは、②の事案ではDがC県で弁護士の代理のような活動をして、非弁行為と思われるようなものが含まれていたことがされた重視されたものと思われます。