弁護士報酬について、不当に高額と評価されるのはどのような場合であるのか

【事例】

 X弁護士は、Aから貸付金の返還を求める訴訟の依頼を受け、委任契約書を作成した。
 Aが返還を求めたい金額が100万円だったとして
①着手金10万円、成功報酬は回収金額の16%
②着手金20万円、成功報酬は回収金額の32%
③着手金30万円、成功報酬は回収金額の48%
④着手金10万円、成功報酬は回収金額の3%+69万円
という報酬での契約をした場合(実費、日当等は考慮しない)、何か問題が生じるでしょうか。

【弁護士報酬の規律】

 2003年に弁護士法が改正されるまでは、弁護士法上、弁護士会の会則として弁護士報酬等を定めなければならないとされていました。このとき定められていた会則がいわゆる「旧報酬規程」と呼ばれているものです。
 ①のケースで記載している金額は、この旧報酬規程に従った金額となります。経済的利益が300万円以下の事件の場合には、着手金はその8%とされているのですが、最低金額は10万円ということになっていたので、このケースでは着手金は10万円となります。
 そして、成功報酬は経済的利益の16%とされていましたので、この点もそのままです。
 旧報酬規程自体は撤廃され、現在の弁護士報酬は自由化されています。しかし、現状でも旧報酬規程のままの金額を用いている弁護士は相当数おられるのではないかと思われます。
 現在、弁護士報酬に関する規律を定めているのは、弁護士職務基本規程24条となります。そこでは、「弁護士は、経済的利益、事案の難易、時間及び労力その他の事情に照らし、適正かつ妥当な弁護士報酬を提示しなければならない」と定めているのみで、具体的な金額は記載していません。
しかし、だからと言っていくらでも問題にならないというわけではなく、不当に高額な弁護士報酬を請求したような場合には、懲戒の対象となる可能性があります。
 ひとまず、①は旧報酬規程に従った金額となります。基本的にはこの金額で問題になることは多くないようです。
 しかし、示談交渉事件などで、あまりにも短期間にかつ非常に高額な金額での示談交渉がまとまった場合、かけた時間に対して弁護士報酬が非常に高額となってしまいます。このような場合、仮に旧報酬規程に従った金額であったとしても、不当に高額であるとの評価を受ける可能性があります。
 ②の金額は旧報酬規程の2倍の金額、③の金額は旧報酬規程の3倍の金額、④の規定は旧報酬規程の中で経済的利益が旧報酬規程の中で経済的利益が3000万円を超え3億円以下のときを参考にしたものです。
 仮にX弁護士が完全に勝訴し、かつ金銭も回収できたと考えた場合、②の件は着手金20万円、成功報酬32万円で合計52万円となります。つまりAは勝利したとしてもほぼ半分が消えていくということになります。
 同じように計算すると、③のケースでは78万円、④のケースでは82万円が弁護士費用(実費日当は除く)となります。
 ③④のケースが不当に高額と評価されることについてはおそらく争いがないと思われます。
 ②のケースについては、必ず不当の評価を受けるとまでは言えない可能性があります。事案の難易度や、事件処理の程度によってはやむを得ない場合も存在すると思われます。
 ただ、②③④のケースに共通する問題として、果たして依頼者であるAに対して、契約締結時に正しい説明がなされたのかどうかという点です。③④のような場合には、仮に勝訴したとしても自分の手元にはほとんど残りません。今回は考慮しませんでしたが、実費日当を考慮するとマイナスになる危険性すら生じてきます。このような契約を締結するとは通常考え難い面がありますから、このような契約があること自体、弁護士が契約締結時に十分な説明をしなかった可能性を推認させてしまいます。
 ですので、契約締結時には、最終的に終了したときにどれくらい手元に残るのかということについても、十分に説明をした上で依頼者には検討してもらう必要があります。

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