利益相反が問題となった事例②

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1 事例

 X弁護士は、Aの依頼を受け、昭和31年3月23日にBを相手として土地の所有権確認訴訟を提起した。
 この訴訟は昭和35年5月12日に終了するが、その終了前にX弁護士はBの訴訟代理人としてCを相手とする建物収去土地明渡請求訴訟を提起した。
 問題は、X弁護士の行為が利益相反行為に該当するとして、そのBC間の訴訟での訴訟行為が無効となるかという点である。
(最判昭和41年9月8日の事例)

2 判旨

「右事実関係のもとにおいては、Bの訴訟代理人であるX弁護士らの訴訟行為は、弁護士法二五条一、二号に違反するものではなく、同条三号に違反するものというべきである。ところで、本件のように、受任している事件の相手方からの依頼による他の事件の相手方が、受任している事件の依頼者と異なる場合には、当該弁護士らの「他の事件」における訴訟行為は、「受任している事件」の依頼者の同意の有無にかかわりなく、これを有効と解するのが相当である。けだし、当該弁護士らの同条三号違反の職務行為により不利益を蒙むる虞れのある者は「受任している事件」の依頼者であつて「他の事件」の相手方ではなく、同条三号は、もつぱら、「受任している事件」の依頼者の利益の保護を目的とするものと解すべきだからである。
 したがつてBの訴訟代理人であるX弁護士らの訴訟行為は、別件の依頼者であるA、またはその相続人の同意の有無を問わず、これを有効と解すべきであり、その他、右訴訟行為を無効とすべき根拠はないから、これを有効とした原審の判断は、結論において正当である。

3 解説


 本判決は、結論としてBC間の訴訟におけるX弁護士の訴訟行為を有効と判断しました。
理由は本文中に記載のある通りで、あくまでも弁護士法第25条第3号の規定は元の依頼者であるAを保護する規定であるので、BCとの関係では訴訟行為を無効とする理由がないからです。
 ですのでX弁護士の訴訟行為自体の効力に影響は出ないところですが、判決が認定する通り弁護士法25条第3号の規定に当てはまっていますから、きっちりと同意を取るか、もしくは受任をしないという判断を行わない限りは弁護士法上の懲戒処分を受ける可能性が十分にあります。

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