【弁護士が解説】相手方代理人が就任している事案で、相手方本人と直接交渉することは許されるのか

【事案】

 X弁護士は、Aから自身が所有する賃貸マンションからの住人の退去交渉を依頼された。
 このマンションの204号室に住むBは、以前から周りの住人とトラブルを起こし、騒音問題などが生じていたことから、Aとしては退去して欲しいと考えていた。
 Aが直接Bのところに行って退去を求めると、Bはこれを拒絶し、その翌週にはY弁護士がBの代理人となった旨の通知がAのところに送られてきた。
 このようなわけでAはX弁護士のところに依頼しに来たのだが、AはX弁護士に対して「明日の午前中であればBさんはいつも家にいる時間だから、先生が直接Bさんのところに行って、話をつけてくださいよ」と依頼した。
 X弁護士はこれに応じてよいのだろうか?

【解説】

 現状、Bは代理人としてY弁護士を選任しているようです。通常の法律相談であればAがこれを持参してきており、余程の事情がない限り真実Yが選任されていると考えることになると思われます。
このように、事件の相手方に代理人いる場合には、弁護士は原則直接事件の相手方と交渉することは許されません。
 弁護士職務基本規程52条は「弁護士は、相手方に法令上資格を有する代理人が選任されたときは、正当な理由なく、その代理人の承諾を得ないで直接相手方と交渉してはならない。」としています。
Yは弁護士ですので、まさに法令上資格を有する代理人です。このような状況でY弁護士の承諾なくXが交渉を行うようなことは、この規程に違反することになります。
 ですので、XはAからの依頼についてはこの規程を理由に断らなければなりません。

 今回のようなケースでは、当然依頼を断るべき事案となるのですが、事件によっては相手方に代理人が就任していることに気が付かなかったという場合もあり得ると思われます。通常の相手方であれば、自分で代理人を選任していることを告げると思われますが、仮に途中で発覚したような場合には、その時点で交渉を止め、相手方から聞いた代理人に対して連絡を行うべきであると思われます。
 反対に、代理人が選任されており、代理人に何度も連絡をしたにもかかわらず、代理人が一向に返答をしないような場合もあり得ると思われます。このような場合、代理人が返答をしないことは、相手方本人にとっても不利益となりかねないものですし、そもそも相手方代理人の行動自体が事件放置として懲戒の対象になりかねない行動となっています。このような場合には「正当な理由」があると評価され、直接の連絡、交渉が許される場合が生じると考えられています。
 弁護士が懲戒請求を申し立てられた場合、弁護士は代理人ではなく紛争の当事者となります。代理人として紛争にあたるのと、当事者として紛争にあたるのとでは気持ちもパフォーマンスも大きく変わってくると考えられます。代理人を入れることで、事実をしっかりと整理し、懲戒処分の回避や軽減につながる可能性が上がります。
 懲戒請求手続について詳しく、懲戒請求に対する弁護活動経験が豊富な弁護士への相談を検討している先生方は、是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にお問い合わせください。

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