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1 綱紀委員会とは
綱紀委員会とは、各弁護士会に設置される委員会で、弁護士、裁判官、検察官、学識経験者を員とするものです。
弁護士に対して懲戒請求がなされた場合や、単位会が会立件を行った場合には、最初から懲戒委員会が審理するのではなく、まずは綱紀委員会が審理することとされています。
ですので、単位会の綱紀委員会は、懲戒手続の第1歩目ということになります。
2 綱紀委員会の審理方法
⑴部会
綱紀委員会には部会が編成され、部会が調査した事件については、部会の議決をもって委員会の議決とすることができる(弁護士法第70条の6第5項)とされるなど、実際には部会で事件が調査される場合もあります。
⑵調査手続
まず、懲戒請求者、対象弁護士、懲戒事由などの形式的なものが確認されます。
これらの点に問題が無ければ、対象弁護士に対して答弁書・弁明書などの提出を求め、争点整理を行います。
争点整理がなされると、懲戒請求者、担当弁護士、参考人などを呼び出して供述を聴取したり、証拠の提出を求めます。
なお、この聴取手続等については、委員のうちから主査となる者(主査・副査の2名の場合も)を定め、その結果を綱紀委員会(部会)に報告することで議決を行う場合もありますので、必ずしも綱紀委員会・部会の全委員が出席する中行われるわけではありません。
⑶記録の閲覧等
綱紀委員会の議事・議決は非公開が原則です。
そのため、綱紀委員会の議事録については対象弁護士であったとしても閲覧・謄写することは許されないと思われます。
ただ、調査期日に作成した調書や、証拠書類については、対象弁護士に対しては、適正手続の観点から、閲覧・謄写ができる場合が多いと思われます。
3 綱紀委員会の出す結論
⑴懲戒事由について
綱紀委員会は、懲戒事由に該当する事実が存在するかどうか、仮に事実がある場合に懲戒事由となるほどの非行に該当するかどうかを判断します。
この際、調査すべき事実の範囲は、懲戒請求者の請求に基づき弁護士会から調査を求められた事実に限られます。仮に調査の過程などで、懲戒事由たる新たな非行を発見した場合であっても、これをさらに調査して議決することはできません。
⑵情状事実について
法律・会則違反も含め、懲戒事由に当たるかどうかは、当該事実が、懲戒をするに値するほどの非行であるかどうかという判断となるため、どうしても価値判断が必要となります。
そのため、綱紀委員会は、単に事実の存否だけではなく、「情状」の程度についても考慮することとなります(弁護士法第58条第4項にも、「綱紀委員会は、(中略)事案の軽重その他情状を考慮して懲戒すべきでないことが明らかである・・・・」としています)。
このうち、懲戒請求が取下げられたことや、懲戒請求の示談がどのような意味を持つかについてですが、懲戒請求者によって懲戒請求の取下げの意思が表明されたとしても、あくまでも懲戒手続は弁護士会と対象弁護士との関係ですので、懲戒手続は終了しません。
ただ、事後的な事情ではあるものの、懲戒をすべき非行に値するかどうかの判断に際しては、斟酌されるものとされています。
⑶議決の種類
綱紀委員会が行う議決は
- 懲戒委員会に事案の審査を求めることが相当である
- 懲戒委員会に事案の審査を求めないことが相当である
- 対象弁護士の死亡等により終了
のいずれかの議決となります。
この綱紀委員会による議決は、弁護士会を拘束します。ですので、常議委員会や総会でもこの結論は変更できません。
①の議決の場合には懲戒委員会の手続へ、②の議決の場合には懲戒請求者が不服申し立てを行った場合には、日弁連に異議申出を行うことになります。なお、①の議決に対しては、対象弁護士は不服申立てをすることはできません。