守秘義務②

1 守秘義務が解除される場合

弁護士法第23条、弁護士職務基本規程第23条が定める守秘義務は、弁護士の基本的な義務であり、違反すれば懲戒だけではなく、刑事罰の対象となるような行為です。

ただし、守秘義務が解除される場合がいくつかあります。

2 別段の法律の定め

弁護士法第23条但書には「但し、法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」と定められています。

この「法律の別段の定め」として挙げられるものは、民事訴訟法第197条第2項(第1項にある証言拒絶権に基づく黙秘義務が免除された場合)や、刑事訴訟法第105条但書(押収拒絶権について、本人の承諾がある場合など)です。

3 正当な理由

職務基本規程第23条は、「正当な理由」のない秘密漏示を問題としていますので、正当な理由があれば守秘義務違反とはならないことになります。

なお、弁護士法第23条にはこの「正当な理由」の定めはありませんが、法律の場合であっても、正当な理由があれば守秘義務違反にはならないと考えられています。

⑴依頼者の承諾がある場合

刑事訴訟法第105条但書にあるように、依頼者の承諾がある場合には、守秘義務は解除されると考えられます。

ただし、依頼者の承諾は真意に基づいて行われる必要がありますので、開示の必要性や方法については十分な説明をすることが必要となります。

⑵弁護士の自己防衛のため

事件について、弁護士自身が刑事上、民事上の紛争当事者となったり、懲戒手続に付されたりしたような場合には、弁護士自身の名誉を守り、重大な誤解を解くため必要な限度で秘密の開示が許されます。

なお、弁護士が依頼者に対して報酬請求訴訟を起こすような場合には、依頼者が不当に支払いを拒絶するような場合には秘密の開示が許される場合があると考えられるものの、弁護士が民事上・刑事上の紛争当事者に「立たされる」場合とは異なることから、厳密な判断が必要となると思われます。

⑶公益上必要がある場合

弁護士は、依頼者の権利擁護だけではなく、公共的役割もあることから、一定の場合には守秘義務を上回る公共的利益があると考えられています。

あまり争いがない例でいうと、依頼者がまさに人を殺そうと向かっているときに、警察に通報したり、被害者に警告をするような場合です。

ただ、このような第三者の生命・身体に重大な危害が加えられる危険が高度な場合については守秘義務が解除されることにあまり争いはないものの、財産的危険が生じる場合などにも同じように守秘義務が解除されるかどうかについては、それほど議論がなされておらず、定まった見解はないと思われます。

ですので、公益上必要がある場合に当たるかどうかは、第三者に相談するなど、慎重に検討したうえで決定する必要性が高いと思われます。

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