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証拠開示資料をブログ掲載・記者提供した弁護士の法的責任とは

弁護士Aは、強盗致傷事件の被告人Bの弁護人として、検察官から証拠開示を受けました。
記録には、被害者の供述調書が含まれ、その中には被害者の住所や連絡先がマスキングなしで記載されていたほか、防犯カメラ映像データなども含まれていました。
弁護士Aは、社会的に注目を集めた事件であることから、
記録の一部を自己のブログで「社会的関心が高い事件」として紹介しました。
そのなかでは、被害者の供述内容を匿名化が不十分な状態で掲載しています。
さらに、知人の記者に参考資料としてPDFデータを送付しました。
Aにはどのような責任があるでしょうか。
① 想定される刑事責任
弁護士が刑事事件記録を不適正に利用した場合、行為態様によっては以下の犯罪が成立し得ます。
1.秘密漏示罪(刑法134条)
弁護士は「業務上知り得た秘密」を守る義務を負います。
被害者の供述内容や住所
事件関係者の個人情報
捜査上の非公開情報
これらを正当な理由なく漏らした場合、6月以下の拘禁刑または20万円以下の罰金に処せられます。
本事例では、被害者の氏名や住所が記載された供述調書をブログにアップしたり、記者に教えたりしていますので、秘密漏示の罪になる可能性があります。
2. 証拠目的外使用(刑事訴訟法上の問題)
証拠開示資料は「防御目的」に限定して使用することが前提です。
目的外使用は、刑事訴訟法281条の5に定める罰則の対象となり、弁護人であっても処罰の可能性があります。
被告人が目的外使用をした場合(目的とは、281条の4第1項に定める目的です)には、それだけで処罰の対象となりますが、
弁護人は「対価として財産上の利益その他の利益を得る目的」に使用した場合に処罰の対象となります。
自己の名声を上げるための場合などは、利益を得る目的と認定される可能性が高いので注意が必要です。
② 懲戒処分(弁護士法上)
弁護士は 弁護士法 に基づき、所属弁護士会および 日本弁護士連合会 の監督を受けます。
懲戒の種類(弁護士法57条)
戒告
2年以内の業務停止
退会命令
除名(弁護士資格喪失)
本事例で想定される処分
本件のように、被害者が特定された場合、二次被害発生したり、記者へデータ送付という積極的漏洩をしたことが弁護活動と無関係な利用であるならば、重い処分となる可能性があり、業務停止となる可能性も否定できません。
③ 民事責任
被害者から、
不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求
慰謝料請求
を受ける可能性もあります。
刑事弁護における証拠開示資料は、
✔ 防御目的限定
✔ 厳格な保管義務
✔ 関係者以外への提供禁止
が原則です。
特にデジタルデータは漏洩リスクが高いため、注意が必要です。
