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1 職務を行い得ない事件(弁護士法人)
弁護士法第25条、弁護士職務基本規程第27,28条は、個人である弁護士が、取り扱いを禁止される事件を定めています。
これに対し、弁護士法第30条の18、弁護士職務基本規程第65条以下は、弁護士法人が取り扱うことのできない事件を定めています。
2 弁護士法第30条の18の規定
⑴基本的なもの
弁護士法人が取り扱うことのできない業務の大半は、弁護士法第25条の規定と同じです。
すなわち
- 相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件
- 相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの
- 受任している事件の相手方からの依頼による他の事件(ただし、依頼者の同意がある場合除く)
です。
これは、弁護士法第25条第1,2,3号と同じです。
⑵社員との関係で問題となるもの
次に、「社員若しくは使用人である弁護士(中略)が相手方から受任している事件」も取り扱うことができません。弁護士法人の場合、法人自体が受任者となる場合(これを念頭においているのが⑴です)だけではなく、個々の弁護士が個人として受任をしている場合もあり得ます。
このような場合、弁護士法人と、その社員・使用人弁護士が対立当事者にそれぞれ選任されるような事態は、法人と社員・使用人の指揮命令関係を利用する疑いをかけられる可能性があり、あらかじめ受任が禁止されています。
最後に、「(弁護士法)第25条第1号から第7号までに掲げる事件として社員の半数以上の者が職務を行ってはならないこととされている事件」も、弁護士法人は取り扱うことはできません。
法人自体が「相手方の協議を受けて賛助」しているような場合には、第30条の18の問題ですが、法人とは関係のないところで、社員である弁護士が「相手方の協議を受けて賛助」しているような場合、その人数が半数以上に達した場合(但し、個々の社員が業務を取り扱えない理由は同じである必要はないと考えられます)には、弁護士の職務執行の公正を疑わせるものですので、取り扱いが禁止されます。
3 弁護士職務基本規程の規定
弁護士職務基本規程では、第65条で、弁護士法第30条の18と同内容の規定を置いています。
次に、第66条で、職務基本規程第28条第2、3、4号と同内容の規定を置いています。
すなわち
- 受任している他の事件の依頼者又は継続的な法律事務の提供を約している者を相手方とする事件
- 依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件
- 依頼者の利益とその弁護士法人の経済的利益が相反する事件
です。
最後に、第67条規定があります。
これは、弁護士法人が受任をした後、利益相反に該当する事由が発覚した場合の規定です。個々の弁護士であれば、自分自身に利益相反に該当する事由があるかどうかは明らかですが、弁護士法人の場合、複数の弁護士間で利益相反が生じているようなときには、直ちにそのことが明らかにならない場合があります。
そのため、受任後に利益相反に該当する事由が発覚した場合には、速やかに依頼者に事情を告げ、辞任等の適切な措置をとる必要があります。