係争権利の譲受

1 係争権利の譲受

弁護士法第28条は、「弁護士は係争権利を譲り受けることができない」とし、弁護士職務基本規程第17条は「弁護士は、係争の目的物を譲り受けてはならない」としています。

いずれの規定も、弁護士が事件に介入して利益を上げ、その職務の公正、品位が害されることを防止する目的の規定です。

2 係争権利

「係争権利」については、①係争の対象となった権利で、現に訴訟・調停等の紛争処理機関に係属中の事件に限定されるという考えと②それに限らず広く紛争中の権利一切であるという考えの2説があります。

裁判例の主流派①の考え方です。

ただ、最終的に「品位を失うべき非行」に該当した場合には懲戒の事由となりますから、仮に紛争処理機関に係属していない権利であったとしても、懲戒の対象になる可能性があります。

また、職務基本規程は「係争の目的物」と表現し、弁護士法と異なる表現をとっていますが、その解釈に当たっては弁護士法と同じように解釈される可能性が高いです。

3 譲り受け

「譲り受け」は、有償無償を問わず、また売買・贈与・交換などの法的形式を問いません。

あくまでも弁護士が、自身の計算で譲受をなすことを禁止するものですので、(双方代理の点等を別とすれば)弁護士が他人の代理人として他人の計算で係争権利を譲り受けることは問題となりません。

もっとも、それがこの条文を潜脱しようとした場合には、他人の計算でも許されません(家族名義で権利を譲り受けるが、実質は弁護士が譲り受けたような場合です)。

4 私法上の効果

この規定に違反した場合の私法上の効果については、直ちに無効になるものではないという考えが判例となっています。

ただ、弁護士の行為が公序良俗に反するような場合には、無効になると考えられています。

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