(事例)
A弁護士は犯罪被害に遭ったBさんから依頼を受け,加害者であるCさんの刑事裁判に被害者参加弁護士として関与していました。
ある期日でCさんの被告人質問が実施されましたが,Cさんは検察官からの質問に対しても,話題をそらして答えようとしませんでした。
これまでBさんからの被害相談に真摯に対応していたA弁護士は,Bさんの気持ちを考えるあまりにCさんの態度に腹を立て,「あんたの裁判だろう。ろくに話もしないで,全然反省してないじゃないか」と声を荒げてしまいました。
その場は裁判官からの注意で収まりましたが,後日,Cさんから弁護人を通じてA弁護士に対する懲戒請求が行われました。
(解説)
弁護士は法曹として法律業務に携わるため,依頼者の利益を考えて行動しなければなりません。
そのために法的な知識や手段,交渉等を尽くすわけですが,中にはそれが行き過ぎてトラブルを招いてしまうこともあります。
事例のように,事件関係者への発言が原因で懲戒請求がされてしまうことも少なくありません。
A弁護士のように,法廷での発言が問題になることもあれば,電話での会話のように法廷外での発言が問題になることもあります。
また,準備書面のように相手方へ送付する書面の文言や表現が原因でトラブルになることもあります。
事件関係者への発言が問題になる場合のうち,とりわけ弁護士が依頼者の利益を思って及んだ言動については,弁護士自身がそのようにすることが正しいと確信していることも多く,懲戒請求がされたことでさらに態度を硬化させてしまい,問題の解決から遠ざかってしまうことも少なくありません。
また,そのような状況では懲戒手続の過程で適切な主張をすることも困難です。いかに依頼者のことを考えての言動であっても,懲戒請求によって弁護士自身が紛争の当事者になってしまった場合は,懲戒救済弁護士による客観的な視点が不可欠です。
事件関係者への発言から懲戒請求がされてしまった場合は,懲戒救済弁護士に相談して助言を受けることで冷静さを確保しつつ,問題の解決を目指していくことが肝要です。