柔道整復師法

1 処分事由

柔道整復師法

柔道整復師の国家資格について、処分の理由となる規程は柔道整復師法8条第1項に定めがあります。

そして同条は「柔道整復師が、第四条各号のいずれかに該当するに至つたときは、厚生労働大臣は、その免許を取り消し、又は期間を定めてその業務の停止を命ずることができる。」としていますので、具体的な定めは同法4条に規定されています。

同法4条の定めは

第四条 次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。

 心身の障害により柔道整復師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの

 麻薬、大麻又はあへんの中毒者

 罰金以上の刑に処せられた者

 前号に該当する者を除くほか、柔道整復の業務に関し犯罪又は不正の行為があつた者

① 心身の障害により柔道整復師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの

これについての厚生労働省令である柔道整復師法施行規則第1条によれば、「精神の機能の障害により柔道整復師の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者とする。」と定めてあります。

具体的にどのような障害であるかどうかは定めがありませんが、同規則1条の2に「厚生労働大臣は、柔道整復師の免許の申請を行った者が前条に規定する者に該当すると認める場合において、当該者に免許を与えるかどうかを決定するときは、当該者が現に受けている治療等により障害の程度が軽減している状況を考慮しなければならない。」とも定めています。

ですので、「必要な認知、判断および意思疎通を適切に行うことができない」からといって、一律に免許を交付しない(処分の対象とする)というものではないと定められています。

② 麻薬、大麻又はあへんの中毒者

このような規定は多数あり、麻薬中毒者については措置ができることになっていますが(麻薬及び向精神薬取締法第58条の2以下)、実例はほとんどないと思われます。

③ 罰金以上の刑に処せられた者

ここでいう「罰金」とは、刑事罰としての罰金を指しています。

たとえば、交通違反を犯し、青色や白色の切符を切られた際に支払う「交通反則金」は罰金ではありません。これに対して赤色の切符(通称赤切符)を切られ、裁判所に出頭して支払うものは「罰金」となります。

また、「罰金以上」と定めがあるだけですので、どのような罪で罰金以上の刑になったかは問われていません。たとえば、交通事故で罰金を支払った場合も、盗撮や痴漢で罰金を支払った場合も、法文上は同じ扱いとなります(但し、後述の基準が異なります)。

④ 前号に該当する者を除くほか、柔道整復師の業務に関し犯罪又は不正の行為があつた者

柔道整復師の業務に関し犯罪又は不正の行為があった者ですが、

まず「犯罪」と「不正の行為」が分けられている通り、必ずしも犯罪だけが対象とされているわけではありません。ですので、犯罪には該当しないけれども不正であるような場合にも処分の対象となり得ます。

また1号と異なり「罰金」のような刑事罰を科せられたことは要件となっていません。そのため、犯罪が成立したけれども情状によって起訴されなかった、いわゆる起訴猶予(不起訴の一種)の場合であっても、処分の対象となる可能性があります。

2 手続

柔道整復師に対する処分は厚生労働大臣が行うことになっていますが、具体的な手続に対する規程などは於かれていません。ただ、柔道整復師の資格に対して何らかの処分を行うことは、その者に対して不利益な処分となります。不利益処分の場合行政手続法が適用されますから、必ず聴聞の手続きが行われます。

ここで、自らの言い分等を述べることができるような仕組みがありますので、不意打ち的にいきなり処分が出るのではなく、処分を行うためになされる手続きが開始されたことについては必ず連絡が来ます。

3 処分の内容

⑴ 行政指導

未だ処分を行うほどではないような場合には「行政指導(厳重注意)」がなされます。

これはあくまでも注意ですので、資格そのものには影響しません。単なる注意ですが、再び同じようなことをしてしまったような場合には、過去に厳重注意を受けていることは処分を重くする方向で働きます。

⑵ 業務停止

柔道整復師は、業務独占資格です。ですので、業務停止期間中は一切の柔道整復師業務ができなくなります。

⑶ 免許の取消し

これは、柔道整復師としての資格を取り消す処分です。

ですので、柔道整復師としての資格を失ってしまいますので、再度受験をしなければ免許を得ることができません。

免許取消処分は最も重い処分となりますので、相当悪質な場合に限定されていると思われます。

4 考え得る弁護活動

⑴ 刑事処分回避

処分の事由が「罰金以上の刑」となっている以上、まずは不起訴処分となることを目指す必要があります。

被害者のいる犯罪で、事実関係を認めているような場合であれば、被害者との間で示談交渉を行い、お許しいただくことで刑事処罰を回避できる可能性があります。

また、事実無根のような場合には、取調べの対応を行い、刑事処罰を受けないように受け答えを行う必要があります。

示談交渉の場合、日数が必要となることが多いですから、いち早く弁護士に依頼し、速やかに示談交渉に着手することが肝要です。

また、取調べ対応を行う場合でも、1通でも供述調書が作成されてしまえば問題となってしまう可能性が高いので、取調べを受ける前から備えておく必要があります。

⑵ 行政手続対応

先ほども述べたように、いきなり処分を受けるのではなく、まずは都道府県の担当部局から話を聞かれる機会(聴聞)が存在します。

その中で自身に有利な事情等を挙げていき、処分を回避する必要性があります。

たとえば、仮に刑事事件の最中に被害者との間で示談が成立せず、処分を受けたとしても、その後に被害回復をしているといった事情は、行政手続の中でも有利に働きます。

また、やむを得ずに犯罪に至った事情や、再犯防止に対する対応などについても、証拠化し、提出することが大切です。

このような作業は、行政手続きの処分に対する判断要素に対応して行う必要がありますから、専門的な弁護士に依頼して行う方が効果的な書類作成が期待できます。

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