(事例)
A弁護士は勤務先の法律事務所を辞めて,独立して事務所を構えました。
しかし,独立後は思ったほど事件の依頼が伸びず,事務所の経営にも影響が見え始めました。何か手はないかと考えていたA弁護士でしたが,「法律相談を希望する者を紹介する」という,B社からの提案を受けて契約を結びました。
その後,B社からの紹介でA弁護士の事務所への依頼数は安定してきましたが,ほどなくしてB社がいわゆる非弁であることが発覚しました。
B社は同様の契約を複数の弁護士と締結しており,事態を重く見たA弁護士の所属弁護士会は,A弁護士に対する懲戒手続を開始しました。
(解説)
弁護士は国家資格に基づき法律業務を担う法曹です。
それゆえ,訴訟をはじめとした様々な法律業務を行うことができるのですが,裏を返せば弁護士でないことには,自由に法律業務を行うことはできません。
弁護士法72条は,弁護士でない者が報酬を得る目的で訴訟事件や法律事務を取り扱うことを原則として禁止しています。弁護士法によって弁護士にのみ認められている訴訟等を弁護士以外の者が行う場合,非弁と呼ばれます。
非弁関係での規定としては,他にも弁護士法74条が,弁護士でない者が弁護士を名乗ること,法律事務を取り扱うことを掲げること等を禁止しています。
このように,非弁は明確に弁護士法に違反した存在です。
非弁だけでなく,弁護士が非弁から事件の斡旋を受けること等も弁護士法は禁止しています。具体的には,弁護士法27条が非弁から「事件の周旋を受け,又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない」としています。
それゆえ,いわゆる非弁と提携した場合,弁護士法違反になるため懲戒事由に該当します。名義の利用をはじめ,弁護士と関係を持つことは非弁にとって利益になるため,非弁はあらゆる手段を使って弁護士に接触をしようとしてきます。
非弁提携にならないよう警戒を怠らないことが何よりですが,非弁提携を行って懲戒請求がされているケースもしばしば見られます。
非弁提携で懲戒請求や弁護士会が独自に懲戒手続を開始してしまった場合,非弁と思しき者から業務提携等を持ち掛けられている場合は,速やかに懲戒救済弁護士に相談を行い,適切な措置をとることが求められます。