Archive for the ‘その他の手続き’ Category
【弁護士が解説】刑事事件の報道の仕組み
【事例】
医師であるAさんは、ある日痴漢をしたとのことで逮捕されました。
その日の夜のニュースで、Aさんが逮捕されたということが報道されていました。
どうして報道されるのでしょうか。
【解説】
逮捕には、通常逮捕・現行犯逮捕・緊急逮捕と3種類あります。
通常逮捕とは、逮捕状という令状を持って警察官が逮捕しに来る手続のことです。
現行犯逮捕とは、事件が起きた正にその場で逮捕することです。
緊急逮捕とは、一定の重い罪に限って、逮捕状がなく、現行犯でなくとも逮捕できる仕組みですが、緊急逮捕後に事後的に審査が行われます(現行犯逮捕の場合には勾留の手続きまで審査はありません)。
このうち、現行犯逮捕であれば、一般の面前で逮捕されることもありますから、場合によっては人に逮捕されたことが知られる可能性もあります。ただし、その場で氏名を読み上げたりというようなことはありませんので、見ている人からすれば、何処の誰であるかということは必ずしもわかりません。
これに対し、現行犯逮捕と緊急逮捕は警察官が行うもので、人目があるところでやるわけでもありませんから、隣の家の人に気付かれることはあったとしても、それほど多くの人に気付かれることはほとんどありません。
では、なぜ報道機関はどこの誰が逮捕されたというようなニュースを流すことができるのでしょうか。
それは、警察と各報道機関の間で、逮捕した事件等について情報を提供する仕組みになっているからです。よくニュースでは、どこの誰が、何の罪で逮捕され、どのような主張をしているのかが報道されています。特に認否などは、警察官しか知りようがない事実ですから、警察から情報が出ているということが分かるのではないかと思います。
しかし、警察が報道機関に情報を流したとしても、どの事件を報道するかは各報道機関にゆだねられています。
ただ、医師や弁護士、公務員といった職業や、芸能人等であれば、多くの場合報道されることになります。
報道されそうな職種である場合には、予め警察署などに対して報道しないよう申し入れを行うことがありますので、弁護士に相談をしてみてください。
税理士の処分について

1 税理士の登録
税理士は、日本税理士連合会が備える税理士名簿に登録されなければ、税理として活動することができません(税理士法18条以下)。
2 税理士登録の拒否
しかし税理士法24条に定める事由がある場合には、税理士登録をすることができないこととなっています。
一 懲戒処分により、弁護士、外国法事務弁護士、公認会計士、弁理士、司法書士、行政書士若しくは社会保険労務士の業務を停止された者又は不動産の鑑定評価に関する法律第五条に規定する鑑定評価等業務(第四十三条において「鑑定評価等業務」という。)を行うことを禁止された不動産鑑定士で、現にその処分を受けているもの
二 報酬のある公職(国会又は地方公共団体の議会の議員の職、非常勤の職その他財務省令で定める公職を除く。第四十三条において同じ。)に就いている者
三 不正に国税又は地方税の賦課又は徴収を免れ、若しくは免れようとし、又は免れさせ、若しくは免れさせようとした者で、その行為があつた日から二年を経過しないもの
四 不正に国税又は地方税の還付を受け、若しくは受けようとし、又は受けさせ、若しくは受けさせようとした者で、その行為があつた日から二年を経過しないもの
五 国税若しくは地方税又は会計に関する事務について刑罰法令に触れる行為をした者で、その行為があつた日から二年を経過しないもの
六 第四十八条第一項の規定により第四十四条第二号に掲げる処分を受けるべきであつたことについて決定を受けた者で、同項後段の規定により明らかにされた期間を経過しないもの
七 次のイ又はロのいずれかに該当し、税理士業務を行わせることがその適正を欠くおそれがある者
イ 心身に故障があるとき。
ロ 第四条第三号から第十一号までのいずれかに該当していた者が当該各号に規定する日から当該各号に規定する年数を経過して登録の申請をしたとき。
八 税理士の信用又は品位を害するおそれがある者その他税理士の職責に照らし税理士としての適格性を欠く者
3 税理士登録の取消し
そして、7号イに該当する場合を除いて、先ほどの1~8号の事由に該当する場合には、登録が取り消されることとなっています。これは、懲戒処分とは別で、この事由に該当すれば必ず税理士登録が取り消されるというものです。
4 懲戒処分
これに対し、税理士法45条、46条に該当する場合には懲戒処分がなされることになっています。
懲戒処分の内容は戒告、2年以内の税理士業務の停止、税理士業務の禁止の3種類が予定されています。
たとえば、故意に不正確な書類を作成した場合には、税理士業務の禁止又は2年以内の税理士業務の停止が予定されていますが、法文上は「処分をすることができる」となっているため、必ず処分をされるとは限らないこととなっています(実際の運用はこの通りとは限らず、故意の作成は重い処分がなされていると思われます)。この点が先ほどの登録取消しとの違いとなっています。
【弁護士が解説】ケアマネージャーが交通事故を起こすとその資格はどうなるか

【事例】
ケアマネージャーであるAさんは、ある日通勤途中、自動車で交通事故を起こしてしまいました。
幸い被害者の方は全治2週間程度のけがではあったものの、警察の方からは事件を検察庁に送ると言われました。
Aさんはどのような刑事罰を受け、それによってケアマネージャーの資格はどうなるのでしょうか。
【解説】
1 ケアマネージャー資格について
⑴欠格事由
国家資格が何らかの制限(剥奪されたり、効力が一時停止したり)を受けることになる事由のことを「欠格事由」と呼んでいます。欠格事由は、資格を取得するときに問題となっていますが、同様の事由が生じた場合には資格を取消すということになっています。
ケアマネージャーの資格は、介護保険法にその定めがあり、正式名称は「介護支援専門員」となっています。
介護保険法69条の39第1号で「第六十九条の二第一項第一号から第三号までのいずれかに該当するに至った場合」には、都道府県知事は介護支援専門員の登録を消除(削除のことです)しなければならないとしています。
そこで、69条の2第1号から3号を見ると、次のような記載があります。
一 心身の故障により介護支援専門員の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者
三 この法律その他国民の保健医療若しくは福祉に関する法律で政令で定めるものの規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者
これがいわゆる欠格事由です。なお、これ以外にも介護保険法では定めがあります。
⑵刑事罰と国家資格
さて、それは本題の刑事罰を受けた場合の資格について検討します。
2号で「禁錮以上の刑」と定められています。刑事罰の重さは死刑>懲役>禁錮>罰金>拘留>科料と定められていますので、禁錮以上の刑は死刑・懲役刑・禁錮刑を指します。反対から言えば、罰金刑であればこの規定に該当しないことになります。つまり、交通事故によって罰金刑を受けた場合や当然ですが不起訴処分になった場合には、資格を取消されたりすることはないということになります。
それでは禁錮刑を受け、その刑に執行猶予が付けられた場合はどうでしょうか。
執行猶予とは、裁判が確定した後すぐに刑務所等に収容されるのではなく、執行猶予期間中無事に過ごせば収容されないという判決です。反面、執行猶予中に再び裁判を受けるようなことがあれば、基本的には刑務所に行かなければならない(もう一度執行猶予になることはほとんどない)という判決です。たとえば「禁錮1年執行猶予3年」という判決の場合、「もし3年間何もせずに過ごすことができれば、刑務所にはいかなく構いません。ただし、3年以内に再び裁判を受けるようなことがあれば、新しく犯した罪の刑罰に、追加して1年刑務所に入ってもらいます」という意味になります。
話を戻すと、交通事故で人をけがさせた場合、余程重大な事情(前科があるとか、飲酒運転であるなど)がない限りは執行猶予がつくことがほとんどです。しかし、先ほどの欠格事由の条文には執行猶予を除外する規程はありませんから、仮に執行猶予がついたとしても資格は取り消されることになります。
交通事故は誰でも起こしてしまう可能性があるものですが、一つ間違えると運転免許以外の資格さえ剥奪されてしまうものになります。これを回避するためには初動の対応が重要です。資格のことでご不安な方は、いち早く弁護士にご相談ください。
【弁護士が解説】薬剤師に対する処分はどのようになされるのか

【事例】
薬剤師であるAさんは、勤務中処方箋を持ってきた患者の態度にイライラしてしまったことから、つい袋を投げてしまいました。
たまたまそのことを同僚に目撃されており、Aさんの行為は暴行罪として警察に被害届が提出されました。
最終的にAさんは罰金10万円を支払っています。
このとき、Aさんの薬剤師免許はどうなるのでしょうか。
【解説】
1 薬剤師に対する行政処分
薬剤師法8条によると「薬剤師が、第五条各号のいずれかに該当し、又は薬剤師としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生労働大臣は、次に掲げる処分をすることができる。」とされています。
そして、5条は「一 心身の障害により薬剤師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの 二 麻薬、大麻又はあへんの中毒者 三 罰金以上の刑に処せられた者 四 前号に該当する者を除くほか、薬事に関し犯罪又は不正の行為があつた者」として、4つの事由を定めています。
3号を見ると「罰金以上の刑に処せられた者」とあります。これは罪名を問いませんので、たとえ職務に関係のない私生活上の出来事で罰金を受けたとしても、薬剤師免許に影響が生じる可能性があります。
2 行政処分の実情
薬剤師に対する行政処分は、医道審議会(薬剤師分科会薬剤師倫理部会)で議論されています。
そして、その処分の内容は、公表されており、おおよそ1年に1回程度まとめて処分が出されていることが分かります。
たとえば、直近の令和7年1月29日の会議では、2名に対して行政処分が出されいます。
一つ一つ見ていくと、Aさんと同じ罪名の「暴行」では、戒告になっているものがあります。
3 Aさんの場合はどうか
Aさんの場合、罪名は暴行と、傷害より軽い罪です。しかし、患者に対する暴行であるため、私生活上の行為よりは重く判断される可能性が高いと思われます。これは行政処分だけではなく、刑事処分を考える上でも同様です。
そのため、免許に対する処分を回避するためには、まず被害者の方に謝罪をし、示談をした上で刑事罰を回避することが必要となります。
公認会計士の処分について

公認会計士となるためには、公認会計士名簿に登録を受けなければなりません(公認会計法17条)。
しかし、この登録が抹消される場合が、21条で定められています。
21条の定めは、大きく2つに分かれていて、1つ目は必ず抹消される場合です。具体的には廃業した場合、死亡したとき、欠格事由に該当するときが定められています。2つ目は、登録を抹消する場合があるとしているもので、多く問題となるものとして、研修を受講していない場合などがこれに当たります。
これらの登録抹消とは別に、公認会計士に対する懲戒も存在します(同29条)。
懲戒処分の種類は戒告、2年以内の業務停止、登録の抹消となっており、こちらでも登録の抹消が掲げられています。
懲戒を受ける理由は、虚偽又は不当の証明を行った場合と、一般の場合で区別されています。虚偽又は不当の証明は、簡単にいえば問題のある財務書類を通してしまった場合です。これに対し、一般の懲戒は、公認会計士法や内閣総理大臣(実際は金融庁)からの指示に従わない場合、著しく不当と認められる業務の運営を行った場合に、懲戒処分ができることになっています。「一般」とはいえ、私生活上のありとあらゆる行為が問題となるわけではありません。
このような公認会計士法上の懲戒処分は、最終的には金融庁によって判断され、処分がなされることになっています。
これに対し、公認会計士会自体でも、自主規制を行っています。個別の事案に対する監査だけではなく、一般的な職業倫理なども定めており、公認会計士会として何らかの処分がなされる事案(たとえば退会の勧告など)もあるようです。しかし、こちらは公認会計士法に明文の規定があるものではなく、一般的な会員に対する監督の一環として行われているものと思われます。
仮に公認会計士の方が処分を受けられた場合、いずれの処分であるのかによって争い方が大きく異なります。金融庁の処分であれば、これは行政処分となりますので、不服審査や行政事件訴訟などで争うことになります。これに対し公認会計士会の処分であれば、民事訴訟を提起することになると思われます。
様々な懲戒について
このサイトでは様々な「懲戒」を扱っていますが、その意味合いは文脈によって様々です。
そこで、ここでは「懲戒」という言葉について分類しておこうと思います。
①民間企業における「懲戒」
民間企業で仕事をしているうえで、「懲戒処分」と受けることがあります。
これは企業の労働者への監督権の一環として、懲戒権として認められているものになります。
停職、減給などの様々な処分がありますが、これは労働問題の一環としてなされるものであり、争う場合には労働審判、民事訴訟などで争うことになります。
②公務員の懲戒
公務員も労働者ですが、「懲戒処分」を受けることがあります。
これは地方公務員法、国家公務員法といった公務員に関係する法律により定められているものであり、行政処分の一環として行われるものです。これを争う場合には、人事院、公平委員会等の行政機関に不服申し立てを行った後、行政訴訟を提起することになります。
③医師・看護師の懲戒
医師や看護師に対しても懲戒処分がなされることがあります。
その前に、医師や看護師でも、民間病院や公立病院に勤務している場合があります。この場合、医師や看護師も労働者ですから、①②で見たいような懲戒処分が別途発生する可能性があります。
ここで問題にする医師や看護師に対する「懲戒」は、それらの資格に対する処分です。
罰金以上の刑を受けた場合などには、医師や看護師は何らかの懲戒処分を受けることがあります。これは、厚生労働大臣が個人に対して科すものであり、業務停止などの処分を行うことになっています。
これらの処分は、厚生労働省の医道審議会で検討されるのですが、一時的には都道府県の担当部局が聴き取り等を行います。そのため、都道府県⇒医道審議会と上がって、最終的に厚生労働大臣による処分が行われることになります。
そのため、これらの処分を争う場合にも行政訴訟を提起することになります。
④弁護士に対する懲戒
弁護士に対する懲戒処分は、これらの懲戒処分とは異なります。
まず、申立が認められています。何人でも弁護士に対して懲戒をするよう申し出ることができます。医師に対する懲戒をするように厚生労働大臣に申立てることはできませんので、これは大きな違いです。
次に、処分の第一次的な判断は各弁護士会及び日本弁護士連合会によってなされるというところにあります。たとえば、医師による処分は厚生労働大臣によってなされますが、これに対して不服の訴えを提起する場合には、地方裁判所に訴訟提起することになりますしかし、弁護士会の処分に不服がある場合には日本弁護士連合会に不服申立てをし、その処分にも不服がある場合には東京高等裁判所に訴えを提起することになっています。日弁連が第一審的な役割を果たすことになっています。
弁護士に対する懲戒処分は、いずれにしても資格に対するものになっています。また、官報に公告されることになっているので、必ず氏名などが公になります。公務員に対する処分も公表されていますが、氏名などまで公表されている例は多くなく、この点でも異なります。
「業務広告に関する指針」が改正されました
弁護士の広告に関しては、「弁護士等の業務広告に関する規程」という規制が存在しています(なお、外国法事務弁護士についても同様の規定がありますが省略します)。
ただ、この規定は一般的抽象的な規程でもあるので、具体的にどのような場合が規程に該当するのかを開設した「業務広告に関する指針」が公表されています。
この業務広告に関する指針が、令和7年2月20日付で改正されました、なお、大元の規程自体が改正されたというわけではありませんので、より具体的な場面について注意を促すような形となっています。
1 債務整理事件に関する注意
債務整理事件については「債務整理事件に関し、「国が認めた借金減額制度」、「国が認めた借金救済制度」等、あたかも破産や民事再生以外に、債務者にとって特別に有利な法的債務整理の制度が存在するとの期待を抱かせる表現を含むもの」(第3 4⑶)というように、明示的に注意がなされるようになりました。
2 国際ロマンス詐欺に関する注意
国際ロマンス詐欺に関する事件の被害者側事件として、「国際ロマンス詐欺、投資詐欺等の被害回復が容易でなく、被害回復ができないか、ごく少額の回収にとどまることが多いことが弁護士業務上の社会通念として明らかである事件に関し、殊更に高額回収ができた事例のみを紹介する等、依頼すれば高額の回収ができるとの期待を抱かせる表現を含むもの」(同⑸)として、過剰な広告に対する注意が行われています。
このような、近時問題となっている類型に対応し、弁護士の信用性を確保するためのものとなっています。見込みのないような事件について、あたかも見込みがあるように受任した場合や、見込みがあるかないかわからない依頼者の状態を利用して受任をすることを厳しく禁止するものとなっています。
弁護士が広告を出す際には、指針の改正に気を配り、十分注意をする必要があります。
【弁護士が解説】公務員が刑事罰を受けるとどうなるか

【事例】
X市の職員であるAさんは、ある日
①電車内で盗撮をし、逮捕されてしまいました。
②通勤途中に車で事故を起こし、被害者が亡くなってしまいました。
Aさんにはどのような処分がなされるのでしょうか。
【解説】
1 公務員の欠格事由
地方公務員であるAさんの身分関係については、地方公務員法が適用されることになります。また、自治体ごとに条例や基準がありますので、具体的な処分については自治体によって異なる形になるのですが、個々では法律の範囲内で解説をしたいと思います。
地方公務員法16条では、職員となることができない場合として「禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者」と定められています。「その執行を受けることがなくなるまで」というのは、いわゆる執行猶予中の期間を想定していただければよいと思います。そのため、仮に執行猶予付き判決であっても、公務員の場合には「職員となれない」=免職となってしまいます。
2 具体的な手続
①盗撮のケース
盗撮の場合、現行犯的な形であっても逮捕されることが多いと言えます。そして、逮捕されてしまうと、公務員の場合ほぼ確実に新聞等で報道されてしまいます。
刑事罰が出るよりも先に、報道等で問題となり、職場内での手続が開始されていきます。
とはいえ、公務員に対する処分は、行政手続の一種となりますので、法律上の規定にのっとって進められることになります。民間企業との異なり、どれほど悪質であってもいきなり免職になるというわけではないということです。
盗撮は、初犯であれば略式罰金となることが多いタイプの犯罪です。そのため、「禁錮以上」の刑ではないことから、刑事罰を理由に免職となることはありません。また、起訴と処分が同日であることも多い手続きですので、後から述べる起訴休職という必ずしもなるわけではありません。
多くの自治体を見ると、停職数か月となるケースが多いようです。
ところで、被害者の方と示談できた場合、刑事事件については不起訴処分(=罰を受けない)となることもあります。このとき、公務員としてはどのような処分になるのでしょうか。
既にみたように、報道等されることが多く、自治体の信用を失墜させていますから、仮に刑事罰が不起訴処分であっても、公務員としては何らかの処分(停職処分等)となる可能性は高いと思われます。ですので、刑事事件が解決したからといって、それで終わりというわけにはいきません。
②交通死亡事故のケース
死亡事故は、被害者が亡くなられているため大きな事件ではあるものの、故意に起こしているわけではない点で、①のケースよりも悪質性が低いとみられるかもしれません。
しかし、死亡事故の場合には、被害者に落ち度があるようなケースでもない限り、初犯であっても公判請求(正式な裁判。罰金より重い刑が求刑される)されることが高い事件です。公務員が起訴されると、地方公務員法28条2項2号により、休職となります(これを「起訴休職」と呼びます)。
そして、裁判を受けた結果、執行猶予付きの判決となってしまうと、これは「禁錮」刑となるため、欠格事由に該当し、免職となります。
このように、交通事故であっても、略式罰金を超える処分となってしまうと、失職することになります。
以上のように、公務員の身分は、刑事事件との関係で不安定な地位におかれてしまいます。何らかの事件を起こしてしまった場合には、職を守るためにもまずは弁護士にご相談ください。
【弁護士が解説】公認会計士に対する処分はどのようなものがあるか

1 公認会計士の登録
公認会計士を名乗るためには、日本公認会計士協会の名簿に登録される必要があります。
日本公認会計士協会は、公認会計士法43条1個に基づき設立される法人であり、形式的には民間団体ということになります。
そして、公認会計士の登録を行うかどうかは日本公認会計士協会の資格審査会が審査をするものとされています。
2 公認会計士の登録の抹消
また、登録した公認会計士の登録を抹消することも日本公認会計士協会の責務です。登録が取り消される事由として法律に記載されているもの(公認会計士法21条)のうち
1 その業務を廃止したとき
2 死亡したとき
3 欠格事由に該当するに至ったとき
の3つの場合は、公認会計士協会は必ず登録を抹消するものとされています。
次に
4 不正の手段により登録を受けたとき
5 心身の故障により公認会計士の業務を行わせることがその適性を欠くおそれがあるとき
6 内閣府令で定める期間以上の期間にわたり研修を受けていないとき
7 2年以上継続して所在が不明であるとき
は、公認会計士協会は登録を抹消することができると定められています。
3 公認会計士に対する懲戒処分
登録の抹消と異なり、公認会計士に対する懲戒処分も定められています(公認会計士法29条以下)。
まず、登録の抹消との最大の違いは、こちらは「内閣総理大臣」が処分を行うことになっている点です。
また、登録の取消しや業務停止以外に「戒告」の処分も定められています。
そして、これらの懲戒処分を受ける事由は、法30条が「虚偽又は不当の証明」をした場合を定め、法31条がそれ以外の公認会計士法違反等の一般の懲戒事由を定めています。
公認会計士が故意に、虚偽、錯誤又は脱漏のある財務処理を虚偽、錯誤及び脱漏が無いものと証明した場合などは、公認会計士の信用性の根幹にかかわるため、2年以内の業務停止か登録の抹消の処分が選択されることになっています。このように、公認会計士の職務そのものに関連する違反に対しては、身分の剥奪を伴うような非常に厳しい処分が予定されています。
4 対応方法
公認会計士に対する内閣総理大臣の処分は、聴聞を行う行政処分に該当します(公認会計士法32条4項)。そのため、処分の前に必ず自身の意見を述べる機会が与えられています。ここで不利にならないよう、法的に適切な意見を述べる必要性が極めて高いです。
そのためには、処分対応に経験がある弁護士を選任し、手続きに備える必要があります。
【弁護士が解説】刑事事件を起こすと介護福祉士の国家資格はどうなるのか

【事例】
介護福祉士であるAさんは、ある日通勤途中、自動車で交通事故を起こしてしまいました。
幸い被害者の方は全治2週間程度のけがではあったものの、警察の方からは事件を検察庁に送ると言われました。
Aさんはどのような刑事罰を受け、それによって介護福祉士の資格はどうなるのでしょうか。
【解説】
1 交通事故の刑事罰
⑴交通事故による処分の種類
Aさんは交通事故を起こしてしまいましたが、事故の場合、色々な処分がなされます。
1つ目は、運転免許の点数です。けがの程度や運転態様にもよるのですが、免許の点数が引かれる場合があります。そして、注意しなければならないのは、点数を引かれたからといって刑事罰を受けないというわけではないところです。よく似た制度に「反則金」というものがありますが、反則金で処理されるようなものの場合は、反則金を払えば刑事罰を受けなくて済むような仕組みになっています。しかし、点数と刑事罰は全く別のものですので、点数を引かれ、刑事罰を受ける場合があります。
2つ目は刑事処分です。警察が検察庁に事件を送り、検察官が起訴をして有罪となると、何らかの刑事罰を受けることになります。刑事罰とは、死刑、無期・有期の懲役・禁錮、罰金、拘留、科料のいずれかを指していて、いわゆる「前科」に該当するようなものを指します。繰り返しになりますが、点数と刑事処分は別物ですので、両方が来る場合も珍しくありません。
⑵交通事故の刑事罰
事故により、人にけがをさせた場合には、その事故の態様次第ではありますが、過失運転致傷罪が成立します。
過失運転致傷罪は、7年以下の懲役・禁錮又は100万円以下の罰金が定められている罪です。ただ、人が死亡した場合の「過失運転致死」と同じ条文・法定刑が定められていますので、現実的に7年の懲役・禁錮になるということはあまり想定されていません。
一般的に交通事故で人にけがをさせた場合、骨折以上(おおよそ全治1ヶ月程度)のけがをさせた場合には、何らかの処罰を受ける可能性が高いと言えます。反対に、極めて軽微なけが(全治3日など)であった場合には、起訴猶予処分となることも多いようです。ただ、同じ程度のけがであっても事故態様や、不注意の内容、被害者の行動によって処分は左右されますので、必ずしもけがの程度だけで処分が決まっているわけではありません。また、被害者の方と示談をすることによって不起訴処分となることもありますから、事故を起こしたからといってすべてが処罰をされているわけではありません。
次回ご説明しますが、国家資格の多くは、刑事罰を受けたことを理由として処分の事由を定めています。そのため、国家資格に影響を与えないようにするためには、まずは刑事罰を受けない=不起訴処分となることを優先して考える必要があります。交通事故を起こしてしまった場合には、被害者の方との示談等をいち早く検討する必要があります。
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