【弁護士が解説】報酬説明なしで280万円請求…弁護士が懲戒請求された遺産分割事件の問題点とは

【弁護士が解説】報酬説明なしで280万円請求…弁護士が懲戒請求された遺産分割事件の問題点とは

弁護士 困った

1.事案の概要

弁護士M(登録8年目・都市部の法律事務所勤務)は、個人依頼者Nから、次の事件を受任した。

相続人間の遺産分割協議
遺産総額:約2,000万円
紛争性は比較的低く、調停前の協議段階

Mは、初回相談時に「うちの事務所の一般的な基準でやります」と述べたのみで、具体的な報酬額・算定方法を明示しなかった。
また、その際書面による委任契約書は作成されなかった。
(事案はフィクションです。)

2.事件処理の経過

Mは、相続人との電話連絡、協議書案の作成などを行い、約2か月で事件は円満に解決した。
裁判所での手続は利用されず、依頼者Nは結果に概ね満足していた。

3.問題行為の発覚

事件終了後、MはNに対し、以下の請求書を送付した。

着手金:50万円
成功報酬:遺産総額の10%(200万円)
事務手数料等:30万円
合計:280万円

Nは、事前説明を受けていない、成功報酬の意味が分からない、紛争がほぼなかったとして強く抗議した。

これに対しMは、「成果が出たのだから当然の報酬だ」「払えないなら法的措置も検討する」と述べ、請求を撤回しなかった。

4.懲戒請求の申立て

Nは、報酬説明義務違反、高額な報酬請求、契約書不作成を理由に、所属弁護士会へ懲戒請求を行った。

5.弁護士Mの弁明

Mは調査に対し、次のように主張した。

事務所の内部基準に基づく請求である
相続額に比例する成功報酬は合理的
依頼者も弁護士費用が発生することは理解していた

6.判断

以下の点を問題視した。

① 報酬説明義務違反

金額・算定方法・成功報酬の定義について事前に具体的説明がなかった、書面化もされていない

→ 依頼者の合理的理解を欠くほか、契約書作成義務という弁護士の基本的な義務に違反している

② 不当な高額性

紛争性が低く、処理期間も短期間、裁判手続なし

にもかかわらず、
遺産総額の10%を成功報酬とするのは、契約書が作成されていない本件では不相当に高額の可能性がある。

③ 事後的・一方的請求

結果確定後に初めて高額な報酬を提示

→ 依頼者の自己決定権を侵害

④ 威圧的言動

法的措置を示唆し、支払を迫った点も不相当との評価を受けざるを得ない。

まとめ

契約書なく受任をすることは、書面作成のみといった簡単な事件ではない限り禁止されています。
また、事務所に報酬の一覧を備えつける必要があるため、依頼者からしても全く金額の予想がつかないわけではありませんが、別の合意をすることなども可能なので、事件ごとに都度金額の説明を行う必要性があります。
報酬の回収ということ自体は問題にならないものの、安易に法的措置を持ち出すなどした場合には、それ自体品位を失う行為として懲戒になる可能性があるので注意が必要です。

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