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【弁護士が解説】医師が診察中に不同意わいせつ事件を起こしたらどうなるか?

架空事例:診察中に起きた不同意わいせつ事件
地方都市のクリニックで勤務する内科医A医師(45歳)は、診察のために来院した20代女性患者Bさんに対し、医学的必要性がないにもかかわらず、身体を触る行為を行いました。
Bさんは恐怖で抵抗できず、後日、警察に被害届を提出。捜査の結果、A医師は不同意わいせつ罪で起訴されました。
1.刑事責任:不同意わいせつ罪の刑罰
不同意わいせつ罪とは
不同意わいせつ罪は、2023年の刑法改正により新設された犯罪類型で、相手の同意がない状態でわいせつな行為を行うことを処罰対象としています。従来の「強制わいせつ罪」を見直し、被害者の意思をより重視する形となりました。
法定刑
不同意わいせつ罪の法定刑は以下のとおりです。
6か月以上10年以下の拘禁刑
(※拘禁刑は、従来の懲役刑・禁錮刑を一本化した刑罰類型)
罰金刑は規定されておらず、有罪となれば必ず身体拘束を伴う刑が科される可能性があります。
医師という立場が量刑に与える影響
医師は患者との間に強い信頼関係・権力関係があります。
そのため、
・被害者が抵抗しにくい立場にあった
・医療行為を装って犯行に及んだ
・職業倫理に著しく反する
といった点が重く評価され、一般人よりも厳しい量刑(実刑判決)が言い渡される可能性が高いと考えられます。
2.医師免許への影響:行政処分の可能性
医師法による処分の根拠
医師免許については、医師法第7条に基づき、次のような場合に行政処分が行われます。
罰金以上の刑に処せられたとき
医師としての品位を損なう行為があったとき
不同意わいせつ罪は重い性犯罪であり、これに該当することはほぼ確実です。
想定される処分内容
行政処分には主に以下があります。
医師免許取消
一定期間の医業停止(数年程度)
不同意わいせつ事件、とりわけ診察中の犯行である場合は、
患者の信頼を根本から裏切る行為
医療の安全・倫理を著しく損なう
と評価され、免許取消処分となる可能性が極めて高いと考えられます。
※仮に医業停止にとどまった場合でも、処分歴は公表され、事実上医師としての社会的信用は大きく失われます。
3.刑事処分と行政処分は別に行われる
重要な点として、
刑事裁判:裁判所が判断
医師免許の処分:厚生労働大臣(医道審議会)が判断
というように、両者は別個に進行します。
たとえ刑事裁判で執行猶予が付いたとしても、
免許取消という重い行政処分が下されることは十分あり得ます。
4.まとめ:医師による不同意わいせつの重大性
架空事例から分かるとおり、医師が不同意わいせつ事件を起こした場合、
刑事罰:6か月以上10年以下の拘禁刑(実刑の可能性大)
行政処分:医師免許取消または長期の医業停止
社会的影響:職業生命の喪失、社会的信用の崩壊
という極めて深刻な結果を招きます。
医師には高度な専門性だけでなく、患者の尊厳を守る倫理観が強く求められており、それを踏みにじる行為は、法的にも社会的にも厳しく責任を問われるのです。
※本記事は架空の事例に基づく一般的な法解説であり、個別事案についての法的助言ではありません。
