
昨今、弁護士による横領事件に関する報道が相次いでいます。
成年後見人等に選任された弁護士が、被後見人の財産を横領するといった事件ほか、損害賠償金等で預かり口に振り込まれた金銭を横領するという事案が典型的です。
このような行為は、弁護士が自らの職務として預かっているお金を横領するものですから、業務上横領罪(刑法第253条)該当し、刑事罰の対象となります。
それだけではなく、業務上の横領行為は、弁護士として懲戒処分を受ける対象でもあります。
しかし、弁護士法第17条1号の規定により、拘禁刑以上の刑に処せられた場合には、弁護士としての登録が取り消されることとなっています。
業務上横領罪には罰金刑の定めがありませんので、有罪判決を受けるということは拘禁刑以上の刑に処せられることを意味します。そのため、刑事事件が先行している事件では、対象弁護士に有罪判決が出ることで、自動的に弁護士としての登録が取り消され(ただし判決の確定が必要)、そのことによって弁護士会による弁護士としての処分がなされないという状況になります。実際、懲戒委員会は、同一の事由について刑事訴訟が継続する間は、懲戒の手続を中止できることとなっています(弁護士法第68条)。
そのため、各弁護士会が、弁護士の横領事件で処分を公表しているものは、①刑事事件より先に弁護士会の処分が出された場合か②刑事事件化しなかったor刑事事件化しても不起訴処分で終結した事件に限られるということになります。
近年、弁護士による横領被害を減らすため、様々な取り組みが行われています。例えば、弁護士が後見人になる際の保険などがあげられます。
また、従来は懲戒処分が出されてから事案を公表していたところ、複数人にまたがる財産上の被害があることにかんがみ、懲戒手続きを開始した段階で公表するような仕組みとなっています。
横領事案では、戒告処分は基本的に考えにくく、業務停止以上の厳しい処分が予想されます。そうすると、再び弁護士として活動することは困難です。
弁護士として、経済的に厳しい状態になった場合には、周囲に相談するなどの方法をとり、弁護士として懲戒処分を受けないように心がけましょう。
