【弁護士が解説】職務上請求書の使用に関する問題

戸籍法住民基本台帳法の定めにより、弁護士には戸籍謄本、住民票の写しを取得する権利が付与されています。

実務上は、統一書式を利用して請求することになっていますが、その使用には大きな制約があります。

それでは、以下のようなことは許されるでしょうか。

【事例】

X弁護士は、依頼者Aからの依頼で、債務者の住所を特定するため、職務上請求を行った。この債務者は居所を転々としており、債権者Aは居所をつかめないで困っている状態であった。

最新の住民票写しを取得できたXは、その写しをAに交付した。

【解説】

そもそも、戸籍や住民票の記載内容は、みだりに第三者に知られることのない情報であり、プライバシーに関する事項であるといえます。

そのため、たとえ第三者(依頼者以外)の情報であっても、弁護士は弁護士法により守秘義務を負っているものと考えられます。このようなプライバシー事項が記載されている住民票の写しを交付することは、守秘義務違反となる可能性があります。

X弁護士が、Aの代理人となって債権回収を行う場合、必ずしもAに債務者の住所を知らせる必要性があるわけではないのですが、Aの場合、債権回収という目的があるため、A自身でも住民票の写しを取得できる可能性がないわけではありません。このように、A自身が取得できるような場合には、たとえ交付したとしても守秘義務違反の問題は生じません。

しかし、Xが弁護士として職務上請求書で取得することと、Aが自分で窓口に行って請求することでは、取得のしやすさに差があるものと思われます。この差を解消するため、ただ取得することのみ目的に(X自身が債権回収を行わない)Xが職務上請求書を使用することは、目的外使用となる可能性があるので注意が必要です。

このような守秘義務違反の問題以外にも、DV防止法の支援措置がある場合や、依頼者が外部にさらに拡散するリスクがあるような場合には一層の注意が必要です。このような危険な場合には、そもそも弁護士として依頼者に写しを交付しないことが求められると思われます。

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