【弁護士が解説】書面での表現はどこまでであれば許されるのか

【事例】

 Aさんから離婚調停の委任を受けたX弁護士は、Aさんの配偶者(B)側が提出してきた準備書面について、Aさんと対応を協議していました。

 Aさんとしては、準備書面の内容は事実無根であり、そのようなことを言っている配偶者は決して許すことができないと強く憤っています。

 そこで、AさんはX弁護士に対して強い反論を書いてほしいと思っています。

 X弁護士の立場で、以下のような表現をすることは許されるでしょうか。

①Bは平気でうそをつく性格を有することは明らかであり、嘘で固めた人生を送っている

②Bのごね得は許されるべきではなく、これらすべてが演技であったとすれば俳優顔負けである

③Bの主張する事実は全て虚偽のものであり、良心のかけらも見出されない

【解説】

 弁護士職務基本規程6条によれば、「弁護士は、名誉を重んじ、信用を維持するとともに、廉潔を保持し、常に品位を高めるように努める。」とされています。

 弁護士法56条の懲戒事由に「その他職務の内外を問わずその品位を失うべき非行があつたとき」という規程が設けられていることからしても、弁護士が品位を失うような行為をした場合には、何らかの懲戒処分を受ける可能性があります。

 弁護士が職務上作成する書面は、基本的には読者が外部に存在するケースがほとんどです。また、その読者は、たいていの場合対立する当事者や裁判所であったりします。そうすると、どうしても依頼者の意向などに流され、過激な表現となってしまうケースがあります。

 弁護士としての表現が過激であった場合、それが不必要なものであると判断されてしまうと、品位を失うようなものとして懲戒を受ける可能性があります。なお、たとえば当事者らの発言を引用する形で書面を作成し、その発言内容自体が過激なものであった場合は、弁護士が行った表現というわけではありませんから、それを理由として懲戒を受けるということは考えにくいと思われます。

 上記に記載した①~③の事例は、いずれも実際に懲戒を受けた事案で問題となった表現を参考に作成したものです。「こんなこと書くわけないだろう」と思われたかもしれませんが、実際にこれに近い表現の書面が出されたことがあります。

 このような書面とならないよう、冷静な目で書面を作成し、依頼者に対しては懲戒の可能性や、裁判官の心証(おそらく、過激な表現をしても心証は良くならないばかりか、かえって悪化すると思われます)の点について説明を尽くし、合理的な範囲に収めることが必要となります。

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