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1 保険医療機関の指定、保険医登録
健康保険を用い、患者の負担を抑えた形での診療を行うためには、保険医療機関の指定及び保険医の登録が必要です。
そのため、自由診療ではない診療を行う通常の病院、診療所、歯科医院、薬局などの場合には、必ずこの指定・登録を受ける必要があります。
しかし、この指定、登録を受けるということは、健康保険法に基づく様々な義務を受け入れるということを意味しており、反対に法律に違反したり法律に基づく措置を拒否したりしたような場合には、指定や登録を取り消されることを意味します。
2 指導、監査の根拠規定
まず、健康保険法73条により「保険医療機関及び保険薬局は療養の給付に関し、保険医及び保険薬剤師は健康保険の診療又は調剤に関し、厚生労働大臣の指導を受けなければならない。」とされています。
ですので、保険医療機関、保険薬局、保険医等は、厚生労働大臣(実際には厚生局など)による指導を受けることとなります。
また同法77条により「厚生労働大臣は、前条第二項の定めのうち薬剤に関する定めその他厚生労働大臣の定めを適正なものとするため、必要な調査を行うことができる。」「2 厚生労働大臣は、保険医療機関のうち病院であって厚生労働省令で定めるものに関する前条第二項の定めを適正なものとするため、必要な調査を行うものとする。」という風に、調査を行うことも定められています。
そして、このような調査を十分なものにするため、同法78条により「厚生労働大臣は、療養の給付に関して必要があると認めるときは、保険医療機関若しくは保険薬局若しくは保険医療機関若しくは保険薬局の開設者若しくは管理者、保険医、保険薬剤師その他の従業者であった者(以下この項において「開設者であった者等」という。)に対し報告若しくは診療録その他の帳簿書類の提出若しくは提示を命じ、保険医療機関若しくは保険薬局の開設者若しくは管理者、保険医、保険薬剤師その他の従業者(開設者であった者等を含む。)に対し出頭を求め、又は当該職員に関係者に対して質問させ、若しくは保険医療機関若しくは保険薬局について設備若しくは診療録、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。」というような報告、検査に関する規程が置かれています。
このように、厚生労働大臣による指導や監査は、健康保険法に基づいて行われていることになります。
ただ、健康保険法以外にも、医療機関は様々な法律の制約の下に設立されていますので、他の機関や理由からも調査が行われることもあります。
たとえば、医療法25条には「都道府県知事、保健所を設置する市の市長又は特別区の区長は、必要があると認めるときは、病院、診療所若しくは助産所の開設者若しくは管理者に対し、必要な報告を命じ、又は当該職員に、病院、診療所若しくは助産所に立ち入り、その有する人員若しくは清潔保持の状況、構造設備若しくは診療録、助産録、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。」と定められており、都道府県部局による検査が認められています。
ですので、調査等が行われる場合には、まずどこの部局が、何の規定に基づいて行っているのかを把握する必要があります。
3 対応方法
⑴ 指導、監査の理由を確認する
先ほど記載の通り、まずはどの機関が、何に基づいて行おうとしているのかを確認する必要があります。
指導、監査は何の根拠もなくかつ何の疑いもなく行うものではありませんから、何らかの疑義を出発点に、法律に基づいて行われているはずです。
ですので、根拠が分かれば自身が今疑われている内容をある程度把握することが可能になります。
⑵ 指導、監査への対応
予定日当日には、担当職員が直接医療機関等に臨場し、監査等が行われます。
その際に受け答えした内容は、記録化され、後の処分を決定する際の考慮事項となります。
先ほども述べた通り、指導や監査は何らかの疑義を出発点としていますから、後に何らかの処分が行われる可能性があるほか、仮に今回処分を免れたとしても、次回以降の監査に影響を及ぼす可能性があります。
ですので、職員からの質問に回答する際には、慎重に回答を検討する必要があります。
指導、監査が行われる場合、後に行政処分が控えている可能性があります。
処分が出されると、厚生局のホームページに氏名等が掲載されるなど、不利益を被ります。
ですので、指導、監査がなされるという予告を受けた際には、後の手続き備えいち早く弁護士に相談をし、処分への対応策を検討する必要があります。